エルネスト・ネト、生命感あふれる個展「Dreaming Beings」が開催中
「小山登美夫ギャラリー六本木」にて、ブラジルを代表する現代アーティスト、エルネスト・ネトによる個展「Dreaming Beings(夢見る存在たち)」が、2026年6月13日まで開催されている。ギャラリーでは約20年ぶりとなる待望の個展だ。

1964年、リオ・デ・ジャネイロ生まれのネトは、視覚だけでなく、嗅覚や触覚などのさまざまな感覚を総合して作品作りに向き合い、空間そのものを用いながら“身体で体感するアート”を生み出してきた作家。ポンピドゥー・センターやニューヨーク近代美術館、テート・ギャラリーなど、世界的な美術館にも作品が収蔵されている。

1980年代後半から発表してきたソフト・スカルプチュアは、やがて大型インスタレーションへと発展。薄い布や編まれた糸によって構成される有機的な空間作品は、皮膚や臓器、生きものの内部を思わせる独特の感覚を宿し、鑑賞者を“作品の中”へと導いてきた。

本展で発表される新シリーズ「SymbioZooEthicalBeings – SZEBs」もまた、ネトが幼い頃に祖母から学んだという、綿糸によるクロシェ(かぎ針編み)で構成されている。糸と竹、そして石など、シンプルな素材から生まれた繊細な作品は、壁や天井へと張り巡らされ、まるで空間に描かれたドローイングのように軽やかで儚い。作品の内部には空気が通り抜け、わずかに揺れながら呼吸をしているようにも見える。重力や張力の均衡のなかで、絶えず変化し循環し続けるその姿は、生命そのもののようだ。

タイトルにある「SymbioZooEthicalBeings」は、共生を意味する“Symbio”、動物を意味する“Zoo”、倫理を意味する“Ethical”を組み合わせたネトによる造語。人間も動植物も、あらゆる生命は共生によって存在しているという考えが、その根底に流れている。

また会場では、土を用いて制作されたドローイングシリーズ「In Search of a Happy Path(幸福への道を求めて)」も展示。呼吸をするような筆致で描かれた曲線は、踊る身体の軌跡のようでもあり、紙の上に現れた新たな生命体のようにも映る。

ホワイトキューブの静かな空間のなかで、糸も線も、まるで音楽やダンスのように自由に動き出す本展。ネト自身も、この空間の中である種即興のように作品を作り上げて行ったのだという。それは視覚だけでなく、身体感覚や感情までも優しく揺さぶるような体験を与えてくれる。

「Dreaming Beings(夢見る存在たち)」というタイトルには、分断された世界のなかで、再び互いを結びつけ、夢を見る自由を取り戻したいというネトの願いが込められている。五感を通して“生きること”そのものを見つめ直す、貴重な機会となりそうだ。



エルネスト・ネト「Dreaming Beings」展
会場:小山登美夫ギャラリー六本木(東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F)
期間:2026年5月2日(土)〜6月13日(土)
開廊時間:11:00〜19:00
休廊日:日、月、祝日
Text & Photo: Miki Suka
©︎ Ernesto Neto Courtesy of Tomio Koyama Gallery