家族の絆を取り戻す三世代のお化け退治『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021年)
80年代、ニューヨークの街を跋扈するゴーストたちを相手に大活躍を繰り広げて、観客を楽しませてくれた「ゴーストバスターズ」シリーズ。2016年には女性のゴーストバスターズが主人公のリブート版が公開されて、これもとても面白い作品でしたが、今回の『ゴーストバスターズ/アフターライフ』は、オリジナルの「ゴーストバスターズ」の世界観を踏襲して、更にそれをファミリー映画として作り直したことに意味があります。
主人公となるのは、オリジナル版でハロルド・ライミスが演じたイゴン・スペンクラー博士の娘とその孫たち。仲間と共にゴーストバスターズの活動に打ち込み、その後もどうやらゴーストたちと戦っていたスペンクラー博士は家族と疎遠でした。シングルマザーとなったスペンクラー博士の娘キャリーは人生が上手くいかず、アパートを追い立てられて、父親から相続したオクラホマ州の小さな町の家に越してきますが、そこは荒れ果てた農園。奇妙な装置が色々とあるその家で暮らしていた博士は生前、町の人から疎まれていたようです。彼の娘キャリーにとって家の中にあるガジェットは、自分を捨てた父親の苦い思い出にまつわる品に過ぎません。しかし、彼女の娘フィービーは違います。科学オタクでちょっと変わり者の少女である彼女は、自分の祖父が“ゴーストバスターズ”の一員だと知って興味津々。しかも彼は、この町に頻発する地震の謎について何かを知っていた様子です。
フィービーを演じるマッケンナ・グレイスはまつ毛の長い美少女ですが、メガネをかけてゴーストバスターズの装置を操る姿が、時に往年のハロルド・ライミスそっくりで驚きます。自分の居場所がなかった少女が、断絶していた家族の歴史を知って亡き祖父とつながり、ゴーストバスターとしての自分を見出していく過程が泣けます。ゴーストとの戦いによって、失われた家族の絆がまた結ばれていくのです。この映画を作ったのは、オリジナルの「ゴーストバスターズ」シリーズの監督、アイヴァン・ライトマンの息子であるジェイソン・ライトマン。共に映画監督になった二人の強い結びつきを感じる作品です。父ライトマンはこの映画の撮影中、ずっと息子の隣にいて撮影現場を見守り、映画の公開を待って天国に旅立ちました。
山崎まどか
15歳の時に帰国子女としての経験を綴った『ビバ! 私はメキシコの転校生』で文筆家としてデビュー。女子文化全般/アメリカのユース・カルチャーをテーマに様々な分野についてのコラムを執筆。著書に『ランジェリー・イン・シネマ』(blueprint)『映画の感傷』(DU BOOKS)『真似のできない女たち ——21人の最低で最高の人生』(筑摩書房)、翻訳書に『ありがちな女じゃない』(レナ・ダナム著、河出書房新社)『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』(サリー・ルーニー、早川書房)等。
Text: Madoka Yamasaki
Illustration: Naoki Ando