12月某日。雪。@ストラスブール
早起きして、家族でストラスブールのマルシェ・ド・ノエルに行ってきた。雪の舞う中、とにかく寒かったけれど、マルシェのシンボルであるクレベール広場の巨大なサパン(クリスマスツリー)のライトアップを見た瞬間、思わず家族全員から歓声が上がった。ノエルグッズの店がずらりと軒を並べる賑やかなマルシェでは、目移りしつつも、自宅のサパンに飾るオーナメントを買い込んだ。
12月某日。曇り。
いつも行くマルシェで、花屋の店主から物凄い勢いで薦められたサパンを、夫とちょっと訝しがりながらも購入。本当は、うちにはもうひと回り小さいサイズで良かったのだけれど。サパンはそのままでは持って帰れないので、底の空いた巨大バケツのようなものに通して、ネットを被せる。そうすると、驚くほどコンパクトになるのだ。ネットのかかったサパンを担いで帰宅する人を、この時期は毎日のように見かける。
自宅でネットを外してみると、やはり我が家のリビングにはやや大きい。そして、かなり、傾いている。しかしながら、店主の言っていた通り、枝のボリュームといい、緑色の乗り具合といい、なるほど美しいサパンだと納得。コツコツ買い集めたオーナメントたちを早速飾り付ける。初めてサパンが家に来た息子は、「ホー、ホー」とふくろうのような声を発しながら、目を丸くして興味津々。わかっていたことではあるけれども、すぐにオーナメントに手を伸ばしてツリーから取ってしまうので、外されてはつけ、外されてはつけ、永遠に終わらないいたちごっこの始まり。
12月某日。曇り。
クロンヌ(クリスマスリース)を作って、壁に掛ける。毎年作るクロンヌは、冬のパリの街並みのようにグレイッシュなもの。ごくシンプルなものが好きで、花材はブルーアイスとユーカリポポラス、ほんの少しのシルバーブルニア、そして苔木をあしらった。先日訪れたストラスブールで購入した、ガラスでできた氷柱のようなオーナメントがポイント。ただ黙々と植物に向き合うクロンヌ作りは、毎年とても大切にしている時間。大切な人たちの健康や幸せがずっと続くようにと願いながら作るうちに、忙しない心もまるくなってゆくのを感じる。
12月某日。晴れ。
料理家の友人に教えてもらったレシピで、豚肉とひよこ豆のトマト煮を作る。パリのスーパーには、茹でたひよこ豆の瓶詰めが売られているので、簡単に作ることができて、美味しい。家族にも好評なのを良いことに、調子に乗って、週一ペースで作っている。
一方、夫が息子のために毎週大量に仕込むスープの具材は、冬の野菜が中心に。トピナンブール(菊芋)やパネ(白いニンジンのような根菜。ニンジンよりも味が濃い)といった、日本ではなかなか口にする機会のなかった野菜が入っていて面白い。キッチンに立つ夫の背後からどれどれと覗き込み、美味しそうな匂いにたまらずつい私も、息子と一緒になってたいらげてしまう。
12月某日。晴れ。
フランスでノエルを祝うケーキといえば、薪の形をしたビュッシュ・ド・ノエル。夫は繁忙期で、ノエル当日は世間のようなディナーもバカンスもないけれど、彼の作るビュッシュを食べられる日はその度に、我が家にとってのノエル。
彼の働く店のビュッシュは全部で6種類あるのだけれど、今年初のビュッシュは、一番口当たりの軽やかなポム・ユズ(りんごと柚子)から。甘すぎず爽やかで、あっという間にテーブルの上から消えてしまった。今年中にマロンやバニーユ・フランボワーズ(バニラとフランボワーズ)も食べたいけれど、間に合うだろうかと指折り計算をする。
12月某日。曇り。
息子の保育園で、フェット・ド・ノエル(クリスマス会)が催された。園内はデコレーションが施され、大きなサパンもある。先生方が人形劇をしてくれたらしい。
最近、息子が自分から一人で保育園に入っていくようになった。今までは、朝のお別れのときには大泣きして、先生に抱っこしてもらわないと園内に決して入らなかったのに。昨日も今日も、ベビーカーから降ろすと、ドゥドゥ(ぬいぐるみ)を抱きしめながら、ひょこひょこと歩いていくので驚いた。息子は先生方から「ブラボー!」と褒められ嬉しそう。呆気にとられているのは親の私だけ。成長がうれしい反面少し寂しくもなるけれど、迎えに行ったときに両手を前に出して駆け寄ってくる姿が愛おしい。
12月某日。小雨のち曇り。
息子へのノエルの贈り物の包みを、サパンの足元に置いた。悩みながら選んだ今年の贈り物は、何冊かの絵本、積み木、おもちゃの工具セットなど。包みを開けたとき、息子はどんな顔をするだろうか。子どもの頃は、ノエルの朝、贈り物を貰えるのが楽しみだったけれど、親になってみて、私たちにも「我が子の喜ぶ顔」という贈り物があるのだということを知った。
[今月の花]
窓辺に大好きなローズ・ド・ノエルの鉢を並べて、ノエル仕様に。可憐で儚げな白い花が並ぶ景色は、雪が積もっているよう。ここにも苔木を少し加えた。鉢物に苔木や枝ものを足すのは、こちらのフローリストで研修していた頃に教えてもらったテクニック。ちょっとした一手間でぐっと洗練されることに感動して以来、私もよく使っている。
守屋百合香
パリのフローリストでの研修、インテリアショップ勤務を経て、独立。東京とパリを行き来しながら活動する。パリコレ装花をはじめとした空間装飾、撮影やショーピースのスタイリング、オンラインショップ、レッスンなどを行いながら、雑誌などでコラム執筆も。様々な活動を通して、花やヴィンテージを取り入れた詩情豊かなライフスタイルを提案している。
Instagram:@maisonlouparis
MAISON LOU paris