おこさま人生相談室 第57回-小林エリカ
おとなのお悩み
仕事がら人からの誘いを断れません。
今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、ゆうさん8歳。
なわとびが得意で、全学年でのなわとびとび競争のときにもがんばりました。
幼稚園の同級生だったいずみんさんが来月からアメリカへ行ってしまうので、東京ドームシティラクーアにあるムーミンカフェで待ち合わせをしてお泊りのお別れ会をしました。
(いずみんさんは前回のおこさま人生相談室に登場です。)
おこさま紹介
お名前:ゆう
年齢:8歳
生まれた場所:東京
住んでいる場所:本郷
好きな食べ物:桃
嫌いな食べ物:ピーマン
これまでの人生で楽しかったこと:ねるとき
これまでの人生で哀しかったこと:犬のぬいぐるみをなくしたとき
得意なこと:二重とび
苦手なこと:後ろとび
好きなこと:ゲーム(マイクラ)
未来の夢:動物のお医者さん
おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
(いずみんより)
*注:学校名だけ消してあります
(ゆうさん、以下Y)
さて、今回のおとなのお悩みは?
Q嫌なことを大人は嫌といえません。
仕事がらパーティーなど人からの誘いを断れません。どうしたらいいですか?
(ストレンジ子さん 41歳 東京在住)
Y…………。
──ゆうさんは嫌なことを嫌といえますか?
Y いえるときと、いえないときがある。
──どういうときいえて、どういうときいえないですか?
Y これ持っててっていわれて、そのときに虫とかだったらいえるけど、遊ぼっていわれて、嫌なときにはいえない。
──どうして遊ぼうといわれたときには、嫌だといえないのでしょうか?
Y かわいそうだから。
──そういうときには、ゆうさんはどうしていますか?
Y 遊びたいときにさそうね、っていう。
──なるほど、嫌だといわなくても、そういえば相手に伝わりそうですね。
ストレンジ子さんが、パーティーなどにさそわれたときには、どんなお返事をすればよいでしょうか?
Y 用事があるからって嘘つく(笑)
またパーティーがあるときよんでねっていう。
──ストレンジ子さんは、大人は嫌なことを嫌といえないといっていますね。
Y わかる。
嫌っていうと、誘ってあげたのにとか(人が)かなしんじゃうから。
──もしかするとストレンジ子さんは、断れないことそのものを悩んでいるのかもしれません。嫌だなと思っても、用事があるからとか、またパーティーがあるときよんでねなどといえずに、嫌々パーティーに行ってしまうのかもしれません。
どうしたら、大人も、きちんと人の誘いを断れるようになるでしょう?
Y お薬をつくってのむ。
──お薬。ちなみに、それはどんなお薬でしょうか?
Y 嫌なことでも、楽しくするお薬。
──どうしたらそのお薬をつくることができるのですか?
Y 楽しいときのことを写真にとっておいて、写真をぶんかいして、嫌なときにそれを写真にとっておいて、その写真もぶんかいして、食べれるようにする。
──楽しいときの写真と、嫌なときの写真を刻んだ2種類をつくればよいのですね。
Y それを混ぜる。
──混ぜる。
Y それをそのひとの好きな食べ物にいれて、食べる。そうしたら、なんでも楽しくなる。
実際、ストレンジ子さんもお薬をつくることができるように、そのつくりかたを絵にしていただくことにしました。
(ゆうさんによる処方箋画)
「これ(左)は嬉しいときの写真、こっち(右)は悲しいときの写真。写真の太陽のところをぶんかいして、ミキサーに入れて混ぜるとかわいい色になって、3層の色になったら大成功。それを一日冷蔵庫に置いておいて、固まって、お薬の形に切り抜いたら完成になる。
1段目は6日間、2段目は4時間、3段目は1時間、4段目は5日間、5段目は20日間、6段目は1日、7段目は1ヶ月、8段目は2ヶ月、一番下の段は1年効果が続くお薬です。
5段目は一番かわいい色なので、一番やりたくないなっていうときに食べるといいです。
一番やってもいいかなってときは、ねこちゃんのがいいです」
ストレンジ子さん、いかがでしたか?
処方箋画に従ってお薬を食べてみると、どんなことでも楽しくなり、嫌なことを嫌といえるようになれるかもしれません。いや、嫌なことさえ楽しくなるかもしれません。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。
プリントして壁に貼っていただけるようになっています。
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お悩みを随時お待ちしています。おこさまに相談したい方はぜひ、ペンネー ムと年齢、お住まいの都道府県を記入のうえ、こちらまでお悩みをお送りください。
小林エリカ
作家・マンガ家。新刊はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、夏にははじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)を刊行予定。
著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)などがある。