14『窓ぎわのトットちゃん』海のものと山のもののお弁当

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今日はあの〝トットちゃん〟のお弁当をご紹介。

トモエ学園のシンプルで的確なお弁当の約束事

初めてこの本を読んだ時、「自分の学校にはないことばかり!」と、トットちゃんの通うトモエ学園にうんと憧れました。そしてこのおはなしが、戦争より少し前のことだと知ってはいても、つい最近の日々のおはなしのように感じていた気がします。それくらい、『窓ぎわのトットちゃん』に書かれたエピソードは生き生きと鮮やかで、今読み直してもその輝きは衰えていません。

憧れのトモエ学園は、校舎が電車で、座る席は自由で、時間割がなくて、みんな自分の登る木があって、日々いろんな事件や、トモエならではの行事があります。

たとえば、運動会の一等賞の賞品が大根1本、二等賞がゴボウ3本で、三等賞はホウレン草1束、他にもなんだかんだと野菜のごほうびは配られて、最後には生徒全員が何かしらの野菜を手にしていることに。そして、いざ帰るとなって「恥ずかしいなあ」とグズグズしている子どもたちのところへ来た校長先生は、こんなふうに言います。

***

「なんだ、いやかい? 今晩、お母さんにこれを料理してもらってごらん? 君達が自分で手に入れた野菜だ。これで、家の人みんなの、おかずが出来るんだぞ。いいじゃないか! きっと、うまいぞ!」

 そういわれてみると、たしかにそうだった。トットちゃんにしても、自分の力で晩御飯のおかずを手に入れたことは、生まれて初めてだった。だから、トットちゃんは、校長先生に言った。

「私のゴボウで、キンピラをママにつくってもらう! おねぎは、まだわかんないけど……」(P.146-147)

***

夕飯のおかずの材料をもらえるなんて、なんて面白い運動会なんだろう! と、トモエ学園通いたい熱はますます高まり、子ども心にもぎょっと驚くことをしでかすトットちゃんとお友達になりたい! と、切に願ったものです。少なくとも本を読んでいる間は、自分もトモエ学園の一員でトットちゃんたちと学校生活を送っている気分になり、一緒に笑い、一緒に息を切らし、一緒に別れに涙しました。

大人になって読み返すと、また別の憧れの気持ちをトットちゃんの周りの大人に対して抱きます。

きっとたくさんの「トットちゃん困った」の報告を受けていただろうに「君は本当はいい子なんだよ」と言い続けた校長先生の教育者としてのあたたかさ。食料が手に入りにくくなったある日、バイオリニストであるトットちゃんのパパが軍の慰問演奏に誘われ、食べ物をもらえるといういい話だったにも関わらず「僕のバイオリンで軍歌は弾きたくない」と言ったパパに、「そうね。やめれば? たべものだって、なんとかなるわよ」(P.248)と答えたママの優しさ、たくましさ。

こんな大人になりたいと、大人になった今、思うのです(トモエ学園に通ってトットちゃんとお友達になりたいという気持ちはもちろん、今も変わらずですが)。

そう、この本の一番の「おいしそう」を作ったのも、トットちゃんのママです。それは、トットちゃんのトモエ学園初日のお弁当。校長先生からのお願いはシンプルで的確「海のものと山のものを入れてください」。ママはそのお願いをステキにお弁当にしてくれました。トットちゃん曰く「ママは、とっても、おかずじょうずなの」(P.48)。今回は、ママにならってお弁当のでんぶは自家製です。本の中にも出てきますし、レシピを見れば分かりますが……でんぶは海のもの? それとも山のもの?

『窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子著(講談社) 「困るんです」と、前の学校を退学になったトットちゃんがママと一緒にトモエ学園にやってくるところから、おはなしは始まります。学校やお家での様々な出来事がぎゅうっと詰め込まれていて、子どもが読んでも大人が読んでも、その日々を追体験できる生き生きとした文章が魅力です。トットちゃんがトモエ学園に通っていたのは、太平洋戦争の始まる直前から始まった頃まで。おはなしの終わりに向かって少しずつその影が忍び寄ります。日常を奪って行く戦争の悲しさや悲惨さも、読後静かに強く印象に残ります。

トットちゃんのおべんとう

でんぶ(作りやすい量です)
 生タラ・・・1切れ(約100g)
 酒・・・大さじ1
 砂糖・・・小さじ2
 塩・・・少々
ごはん・・・適量
炒り卵・・・適量
焼いたたらこ・・・適量
グリンピースの塩茹で・・・適量

1) 下準備。生タラは皮を取り除き茹でて、身をざっくりほぐしながら骨と血合いを取り除く。

2) 洗う。1をガーゼにとって絞り、ガーゼに包んだまま流水でもみ洗いをする。洗ってぎゅっと絞るのを数回繰り返し、最後は特によく絞る。

3) 味付け。小鍋に2のタラを入れて、酒と砂糖、塩少々を加え弱火にかける。木べらで混ぜながら、ふわふわになるまで炒めて仕上げる。

4) 盛り付け。ごはんをお弁当箱にふわっと詰め、でんぶと炒り卵、焼きたらこ、グリンピースの塩茹でを彩りよく盛って、できあがり。

POINT でんぶはお魚で作るので海のものですね。味付けして炒めるときは、焦げやすいので、木べらで常に混ぜながら仕上げてくださいね。お好みで食紅でほんのり色付けしても。
Photograph: Shinsaku Kato
Food & Recipe: Kiyoe Yamasaki
Styling: Reiko Ogino
Edit & Text: Sachiko Kawase
DATE 2017.04.10
<
>
2017.05.14(日) - 2017.05.14(日)
2017.5.14(日)

MilK JAPONの
iPhoneアプリが登場

マガジンと連動したスペシャルなARコンテンツが楽しめたり、
ウェブのイベント情報をいち早くお届けできるアプリです。

MilK JAPON #34
Spring-Summer 2017