おこさま人生相談室 第76回-小林エリカ

おとなのお悩み

主人との長い付き合いの中で少しずつ疑問や価値観のずれがちり積もり、喧嘩が絶えず前のような愛情を取り戻せないかもしれません。

今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、Chiseさん7歳です。
この頃はフラフープと指編みに夢中です。『風の谷のナウシカ』にインスパイアされて、指編みとビーズでつくった蟲(ヘビケラ)の名前は「名まえちゃん」。好きなバンドは「The Linda Lindas」です。

おこさま紹介
お名前:Chise
年齢:7歳
生まれた場所:東京だよ
住んでいる場所:どこあそこ?
好きな食べ物:パスタ
嫌いな食べ物: ナス
これまでの人生で楽しかったこと:遊園地いくの
これまでの人生で哀しかったこと: なんだろ。あ、わかった。きゅうしょくで、おようふくに水こぼした。
得意なこと: フラフープ
苦手なこと: 校庭5周走るの
好きなこと: やっぱフラフープ
未来の夢:宇宙飛行士

おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
「Chiseちゃんはとっても楽しくって、だれとでもみんなおともだちになれそうなかんじ。そして、なによりとってもやさしいです。
ふたりでいつもいろいろなあそびをかんがえてするのがだいすき」
(保育園から親友のれいさんより)

さて、今回のおとなのお悩みは?
Q
主人との長い付き合いの中で少しづつ疑問や価値観のずれがちり積もり、喧嘩が絶えず前のような愛情を取り戻せないかもしれません。
子供もまだ小さいので仲良くできるのが一番なのですが、どうしたらいいか何かアドバイスありますでしょうか。
(こきなえさん 30代 関東在住)

(Chiseさん、以下C)

C ふつうに、その子供、大きくなるまで待てばいいだけじゃん、それ。

──たしかに、“子供さん”がまだ小さい、とありますが、大きくなるまで待つ?

C 5歳になってから、やればいい。

──やる、というのは、何をやるのでしょうか。

C 5歳になったら、まず、その子供が、おじいちゃんとお友だちになって、お母さんとおじいちゃん、いっしょにつなげるの。

──その子が、おじいちゃんと、お母さんをつなげる?

C まあ、おばあちゃんでも、ひいおばあちゃんでもいいんだけど。

──つなげる、というのはどういうことでしょうか?

C その子と、お母さんと、ひいおばあちゃんで、くらす。

──なるほど、こきなえさんは、子供さんが5歳になったら、“主人さん”ではなく、おじいちゃん、あるいは、おばあちゃん、ひいおばあちゃんでもよいので、誰か別の人と一緒に暮らすのがいい、ということですね。

C そう。

──なるほど。

C だって、離れればいいだけじゃん。

──こきなえさんは、主人さんと、離れた方がいい。つまり、別居や離婚をしたらいい、ということでしょうか。

C うん。

──Chiseさんは、どうしてそう思ったのでしょうか。

C えー、だってさ、よく本に書いてあるじゃん。好きじゃない人とはいっしょにくらさない、とか、よく書いてあるじゃん。

──ちなみに、どんな本に書いてあったのでしょうか。

C チカちゃんの本にも書いてあったよ。(注:おそらくポプラ社『おしゃれマナーBook』シリーズからの解釈?)

──ところで、なぜ子供さんが5歳になったら、なのでしょうか。

C だって、5歳ってけっこうおっきいし、まだ(子供が)ちっちゃいっていっても何歳かわかんないから、とりあえず5歳。まあ、3歳でもいいけど。

──とにかく、子供さんがまあまあ大きくなったら、ということでよいでしょうか。

C そう。

──では、主人さんという人には、こきなえさんから、どう言ったらよいでしょうか。

C しらないよ。

──はじめは仲が良くても、疑問や価値観のずれがちり積もり、喧嘩が絶えない時、また仲良くなれたりするようなアドバイスはありますか。

C ふつうに離れれば、それはおこらない。

──とにかく離れることが重要なのですね。

C そう。

──例えば、こきなえさんが子供さんと一緒に離れた場合、もしかすると子供さんが主人さんと会えなくなることを寂しがるかもしれません。あるいは、子供さんが主人さんと一緒にいたがるかもしれません。

C じゃあ、まず、子供にきいてから、どっちもやだっていわれたら、ひいおばあちゃんちに、ずっと子供をあずけておいたらいいってわけ。1年くらい。それで、お父さん(主人さん)とお母さんでしばらくくらして、どっちか決めて、仲直りになったら3人でくらして、仲直りにならなかったらジャンケンで決める。

──子供さんが、離れることに反対したり、どちらと一緒に暮らすかを決められなかった場合、まずは子供さんを誰か別の人に預け、しばらくの間、こきなえさんと主人さんとのふたりだけで暮らしてみる。話し合いをして、もしも仲直りができそうならば仲直りをして、それが無理そうならばジャンケンをして、今後どちらと暮らすかを決める、ということですね。

C そう。

──ちなみに、子供さんを誰かに1年間預けると何か良いことがあるのでしょうか?

C ある。ふたりの時間がもてる。それでもダメなら、ジャンケン。

──たしかに、ふたりだけの時間が持てないことで、話し合いの時間も持てず、すれ違いが多くなったり、喧嘩してしまったり、ということは起きるのかもしれません。
しかし現実的に1年間というのはなかなか難しいかもしれないです。

C じゃあ、まあ、少なくとも4日くらいかな。………4日か1週間。

──できれば1週間。

C あ! わかった。1日くらいお母さんと子供で泊まって考える。まぁ、お父さんとはちょっと離れるし。それにお父さんと子供の日もあるっていうわけ。そうすれば、けっこうバランスとれるじゃん。

──子供さんがこきなえさんと泊まる日、子供さんが主人さんと泊まる日、などを設定して、まずは少しずつ離れてみる、ということですね。

C 子供を、お母さん、お父さん、おばあちゃん、お母さん、お父さん、おじいちゃん、お母さん、お父さん、おばあちゃん………………ってやっていくの。

──なるほど。こきなえさんと子供さん、主人さんと子供さん、誰か別の人と子供さん、といった風に、それぞれに暮らしてみる、ということですね。

C そう。それでもダメならジャンケン。

──もしかしたら、離れる、ということを決めるのは、とても勇気がいることかもしれません。どうしたら、こきなえさんは、それを口にしたり、行動に移すことができるでしょうか。

C がんばる。

──どうしたら、がんばれるのでしょうか。

C やるきだせばいい。

──どうしたら、やる気をだせるのでしょうか。

C すべり台で、違うとこいく。

──滑り台で違うところへ?!

C この天井くらい高い長ーいすべり台。

──長い滑り台を滑ると、やる気がだせる、ということでしょうか。ちなみに何回くらい滑ればよいのでしょう。

C えーと、50回。

──長い滑り台を50回滑れば、勇気がいることも、決められる。

C うん。遠い公園のすべり台ね。

──近い公園の滑り台ではダメなのですか?

C ダメ、ダメ、ダメ!

──なぜ遠い公園の滑り台でないとダメなのでしょうか。

C えーとね、その子供とお父さんがスーパーとかコンビニいくときにバレるかもだから。

──やる気をだそうとしていることがバレない方がいい。

C けっこう離れたほうがいい。1時間か2時間。それとも新幹線で2時間くらい。

──ここでも離れることが重要なのですね。ところで、なぜ50回なのでしょうか。

C 50回。あー疲れたな、もう面倒くさいなー、ってかんじがぬけるまでやるの。

──そうすると、どんなに大変だったり、面倒そうなことにも、やる気がだせる。

C そう!

(Chiseさんによる処方箋画)

長いすべり台をすべる。できれば100回。

こきなえさん、いかがでしたか?
まずは、主人さんと、少しだけでも離れてみましょう。
あるいは、子供さんを誰かに預けて、主人さんとふたりだけの時間を持ってみるのもよさそうです。
やる気をだしたいなら、遠い公園の長い滑り台を50回(できれば100回)滑ってみて。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。

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絵・取材・文
小林エリカ

絵・取材・文
小林エリカ
近著はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。他の著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)など。