おこさま人生相談室 第70回-小林エリカ

おとなのお悩み

地球温暖化が進んでいることに恐ろしさを感じます。

今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、ちかげさん5歳です。
フラダンスを習っていて、夏には海の近くで発表会もやりました。
虫や動物や人体にはいつも興味津々。蚕を飼って繭から糸もとりました。
今日は浴衣で近所の神社のお祭へ行ってきたそう。笛や太鼓の演奏を見て、「すみっコぐらし」の綿あめも買ってもらいました。
お友だちの今さん(→次回第71回に登場します)チセさんと一緒に「ICK(いちか)」というグループを結成。ちかげさんの担当は、笛とダンスです。

おこさま紹介

お名前:ちかげ
年齢:5歳
生まれた場所: ?
住んでいる場所: 渋谷
好きな食べ物:梨です。
嫌いな食べ物: きのこです。でもナメコとかエノキはたべれる。
これまでの人生で楽しかったこと:今ちゃんとChiseちゃんといっしょに海で遊んだことです。
これまでの人生で哀しかったこと: ないです。
得意なこと: 絵をかくのです。
苦手なこと: なわとびです。なわとび何秒できますか?でわたしゼロ秒だった。
好きなこと: 悩むなあ。ケーキ。
未来の夢: ふたつあるんだよなあ。家つくる人。あとは、シンガーソングライター。

おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
まえ髪がなくて、髪がけっこう長い子で、わたしにけっこうあまえてくる子なの。それで5歳。春の4月28日に誕生日。わたしの家でお泊まりしたいっていってる。ちょっとだけ、わたしがあまえるのやめてよって強くいったりすると、すねちゃって泣いてすみっこにいることが多い。猫が大すきで猫をかいたがってる。けっこうなんでも残さないで食べる。
メッセージ「こんどうちに遊びにきてね。お泊まりしてもいいよ」
(「ICK(いちか)」メンバー今さんより)

さて、今回のおとなのお悩みは?
Q
年々夏の暑さが厳しくなり、温暖化が進んでいることに恐ろしさを感じます。
燃えないゴミを減らすとか、電気をなるべく使わないようにするとか、小さいことをこつこつやることが大事かと思いますが、みんなそんなに気にしていないように見えます。どうしたらみんなが心がける世の中になるでしょうか。
(グリーンハンドさん 46歳 東京在住)

(ちかげさん、以下C)

──グリーンハンドさんは、年々夏の暑さが厳しくなり、温暖化が進んでいることに恐ろしさを感じているようです。

C あぁ、かんじるねえ。

──ところで地球温暖化という言葉を聞いたことがありますか?

C あぁ、あるある。温度が高くなること?

──温暖化が進むとどうなってしまうのでしょうか。

C 熱中症になったり、溶けるようになったりするから、こわい!

──グリーンハンドさんは、温暖化が進まないためには、燃えないゴミを減らすとか、電気をなるべく使わないようにするとかが大切だと考えているようです。

C どうすればいいんだろう!?

──人間が、たくさんゴミを出したり、電気を使ったり、木を切ったり、車や工場の煙をだしたりすると、温暖化が進むといわれています。

C じゃあ、もうちょっと家を少なくする?

──なるほど、家を少なくすればいい。
確かに、家の数が減れば電気やゴミも減りそうです。
ちなみに、どうすれば家の数は減らせるのでしょうか。

C 警察官にそういう。

──警察官に命令してもらう。法律で規制をしたほうがいい、ということかもしれないですね。

C (あとは)家を小さくする。

──それぞれの家も小さい方がいい。

C 私の家の前の大家さんの家がこんくらいでっかくて。人も犬もいっぱいいて、家もでっかいから。そういうのがだめな気がする。

──人や犬が多いと、どうしても家も大きくなってしまいますね。家が大きすぎたり、人や犬が多いのはだめでしょうか。

C だめではないけど。人間をもうちょーーっとくらい、へらす方法を考えたほうが。

──確かに、この地球上には、人間の数が多すぎるのかもしれません。

C 人間が多すぎるとさ、人間の汗でさ、どんどん暑くなるのかなあ。

──もしかすると、一部の人間が便利で快適な生活を手に入れるために、電気を使いすぎたり、物を消費しすぎているのかもしれません。
ちなみに、ちかげさんは、便利で快適な生活、たとえば外へ出ればすぐに車やタクシーに乗ったり大きなスーパーやコンビニでいつでもごはんやお菓子を買えるけれど温暖化が進むのと、不便で面倒な生活、たとえばいつも遠くまでも歩いたり欲しい物も買えないけないけれど、温暖化が進まなくなるの、どちらを選びたいですか?

C 便利でも(地球が)あっつくなる乗り物とかは、のりたくないから大丈夫。

──車も、タクシーも、コンビニもいらない。

C (頷く)

──ちかげさんは、不便で面倒な生活でもいいから、温暖化が進まないほうが大切だと考えるのですね。けれどもし、おとなたちが、やっぱり車もコンビニも欲しい!といったらどうでしょう。

C ……でも、コンビニならいいとおもう。

──なかなか便利で快適な生活を手放せない人たちも多いかもしれませんね。

C そうしたら、ざわざわしていいから、そのかわり、ぼくの言うことを聞け!ってボクシングをはめてぶんなぐる。

──ちかげさんが、温暖化をくいとめるためにボクシングで闘ってくれるのですね。そうすれば、みんな便利で快適な生活を手放せるでしょうか。

C たぶん。

──それは心強いです。

C 木も百本もふやす。
いまの木よりも一千万本もふやす!
木の種をいっぱいまいて、そこらじゅうに、木を植えて、森とかをちょっぴりつくって。

──木を植えて森もつくるのですね。どのあたりに木を植えるのがよいでしょうか?

C ぜんぜんなにもものがない外の土とかにうめればいいんじゃない?

──建物がなくあまっている土地ということですね。

C たぶん、イギリスとか、どこかにあるんじゃない?

──ちなみに、木を植えるのにもお金がかかりそうです。

C そうしたら、そのお金を(わたしが)何かいもつかって、ずっと払っていく。

──そのお金を、ちかげさんが払う。

C そう!
あのね、木の種がみつかったら、それを結構たくさんかって、自分のお金で払う。それで、お小遣いもらって、それで買って、そこらじゅうにまく!

──自分のお金で、たくさん種を買って、種をまく。できる人たちみんなで、それをやったら良いかもしれないですね。

C あと、木で迷路をつくって、楽しくって子どもの遊園地になれば、もっとみんな木を植えるようになる!

──たしかに、楽しければ、より多くの人が取り組めそうです。
グリーンハンドさんは、みんなが日々の生活の中でゴミや電気の問題をそんなに気にしていないようだ、と考えているようです。ちかげさんは、気にしていますか?

C うん。ちょっぴり。
電気使いすぎるとさあ、電気をいっぱいかってお金を無駄にしたりするじゃん?

──他の人たちはどうでしょう?

C それはわかんないねえ。

──もっと多くの人たちが、温暖化が進まないよう努力したり、環境のことを気にして、日々の生活の中でも具体的に行動するようになるには、どうしたらいいのでしょうか?

C じゃあ、工事さんとか警察官とかいろんなひとに、紙におんなじのを書いて、書くんじゃなくてひとつかいたらさ、おんなじようにしたいから(コピーして)いっぱいあるようにして、わごむでとめて、いっこをとって、ひとつの家からポストにいれて、ってやってったらいいのかな。

──紙に書いたものをひとりひとりに渡したり、ひとつひとつ家のポストに入れて伝えるのがいい、ということですね。どんなことを書くのがよいでしょうか?

C わたしは、こう考えたんだけど。
あのね、みーんな、地球を大事にしてないから、木とかを切るようにしないでください!って、やる。

──なるほど、それを、ひとりひとりに伝えていけばいいのですね。

C でも世界中まわるのたいへんだな。
あっ、そうだ!飛行機とか、船とかにさ、こうやって届けてくださーいっていってさ、わたしたりすればいいんじゃない?
そうしたらさ、知らない人とかにわけてくださいって、みんなにちょっぴりずつわたしてさ、それで、みんなで、てつだっていけばいいんじゃない?

──それぞれが、それぞれに伝えていって、ちょっぴりずつみんなで手伝っていけばいい。

C そう。

──もしもちかげさんが、そういう紙を貰ったらどうしますか?

C そうしたら、わたしは、それを守る!
あのねえ、もうねえ、世界じゅうのひとたちに、こういうのがあったよ!なんていってね、やる。それでみんなできょうりょくして、がんばる。

──そもそも、ちかげさんは、地球温暖化は嫌ですか?

C 無理ー。地球があっつくなりすぎたらね、だめな人にねえ、もう、こらーって怒るよ!

(ちかげさんによる処方箋画)

あんまり木をきらない!こういうところをなくす(たとえば、学校の時計台など余分な部分)。できないならボクシングでパンチ!

グリーンハンドさん、いかがでしたか?
家を少なくしたり、人間をもうちょーーっとくらい減らす方法を考えるのがいいそうです。
自分のお金で木を植えたり、世界中のひとたちに、こういうのがあったよ!と伝えたり、ボクシングで闘えば、きっと多くの人たちが、地球温暖化のために行動をとりはじめるはず。
みんなできょうりょくして、がんばりましょう。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。

画像ダウンロードはこちら

絵・取材・文
小林エリカ

近著はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。他の著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)など。