おこさま人生相談室 第74回-小林エリカ

おとなのお悩み

ぐっすり眠ってスッキリ起きられるようにするための、秘訣ってありますか?

今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、常太さん6歳です。
妖怪博士の常太さん。水木しげる「ゲゲゲの鬼太郎」(特に絵柄は初期)にインスパイアされ髪型は鬼太郎を意識。下駄とチャンチャンコも欠かしません。
調布市深大寺にある「鬼太郎茶屋」、六本木ヒルズで開催された「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」は勿論制覇。春休みには鳥取県境港駅(通称、鬼太郎駅)にある「水木しげる記念館」への聖地巡礼も目論んでいます。

おこさま紹介
お名前:常太
年齢:6歳
生まれた場所:?
住んでいる場所:?
好きな食べ物:ぶどう
嫌いな食べ物: りんご
これまでの人生で楽しかったこと:ぶん(愛犬15歳)がいてくれたこと。それと保育園のときのお友達と仲良くできていること。
これまでの人生で哀しかったこと: ない
得意なこと: のぼりぼう
苦手なこと: ない
好きなこと: サッカー
未来の夢:わからない

おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
「ときちゃんはシャイな男の子だけど、妖怪や好きなものになると博士のように色々教えてくれる元気な子です」
(下の階に住んでいる匠太朗より)

さて、今回のおとなのお悩みは?
Q
年と共に眠りが浅くなり、夜中に起きてしまうようになりました。ぐっすり眠ってすっきり起きられるようにするための秘訣ってありますか?
(すぎちゃん 43歳 東京在住)

(常太さん、以下T)

T ………。

──常太さんは、よく眠れますか?

T ………。

──夜中に起きてしまうことはありますか?

T ………わかんない。

──ベッドに入っても眠れないことはありますか?

T ない。

──すぐに眠れる秘訣は何なのでしょうか?

T わかんない。

──ちなみにいつも何時頃に寝ていますか?

T 9時前にねる。

──常太さんは、どうしてそんなに早く眠れるのでしょうか?

T わかんない。

──どんな妖怪にたのめばいいなどといったコツはありますか?

T まくらがえし。

──妖怪枕返し(注:夜中に枕元にあらわれ枕をひっくり返すとされる日本の妖怪)。その方は、いったい何をしてくれるのでしょうか。

T まくらひっくりかえすだけ。

──妖怪枕返しは、枕をひっくり返すだけ。眠れるかどうかは微妙ですね。他にも、たのめそうな妖怪はいますでしょうか。

T まくらがえししかいない。

──なるほど。妖怪枕返ししかいない。

T (まくらがえしは、まくらを)ひっくりかえして、ひとをねむらさせる「ゆめくりのすず」っていうのをもってる。

──なるほど、「夢繰りの鈴」というものを持っているのですね。それがあれば人は眠れる。どうしたら、その妖怪枕返しはきてくれるのでしょうか?

T まくらがえし、どうやってくるのかはしらないけど、夜なかにくるのはしってる。

──常太さんは、妖怪枕返しが夜中に来ることを知っているのですね。「夢繰りの鈴」の音も聞いたことはありますか?

T きいたことない。だって、すぐねるもん。

──たしかに。

T でも「ゆめくりのすず」は、まくらがえしが、いまもってんのかわかんないけど。だれかにとられて、子どもにさずけられて、その子どもは川におとされたらしいけど(注:ゲゲゲの鬼太郎『まくら返しと幻の夢』による)。
(その川に落とされた子どもは妖怪になり)夢のなかで、おとなを子どもにかえた。それで、おとなはずっとねむったまま。

──おとなは眠ったまま。つまり、「夢繰りの鈴」の音を聞いた場合、眠るは眠るけれどもう起きなくなる、ということでしょうか。

T その妖怪たおさなければ、ずっとねむったままなんだよ。

──それはまずいですね。すぎちゃんさんは、ぐっすり眠ってスッキリ起きたいようです。

T あのね、でもね、その妖怪は子どもは「ゆめくりのすず」のなかにとじこめない。けど、おとなはとじこめる。

──ということは、すぎちゃんさんは鈴に閉じ込められ、川に落とされてしまうのでしょうか。

T ちがうよ。川におとされないけど、部屋のなかでずっとねむらされるだけだよ。

──なるほど。

T まくらがえしが「ゆめくりのすず」もってれば、だいじょうぶだけど。
でも、もってなくて、ほかの妖怪になってたらやばい。

(常太さんによる処方箋画)

ゆめくりのすず

すぎちゃんさん、いかがでしたか?
妖怪枕返しは夜中にやってくるそうです。
ただ、今も「夢繰りの鈴」を持っているかどうかはわからないので、おとなはずっと眠ったままにならないよう、しっかり確認しましょう。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。

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絵・取材・文
小林エリカ

近著はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。他の著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)など。