おこさま人生相談室 第68回-小林エリカ
おとなのお悩み
モノが捨てられない。片付けられない。
今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、タキさん6歳、サキさん3歳の兄妹です。
この頃は工作にはまっているというタキさん、ダンボールでスマートフォンをつくりました。サキさんはとにかくプリンセスが大好き。なかでも一番好きなのはディズニープリンセスのオーロラ姫だそう。
夏休みには高知の祖父母を訪れる予定です。
おこさま紹介
お名前:タキ
年齢:6歳
生まれた場所:ママのおなか
住んでいる場所:さいたま
好きな食べ物:チョコ
嫌いな食べ物:メロンとスイカ
これまでの人生で楽しかったこと:保育園
これまでの人生で哀しかったこと:べつに
得意なこと: ジャンプだい
苦手なこと: てつぼう
好きなこと: UNOとかやるの
未来の夢: ない
おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
工作とかポケモンが好きですごくたのしくってすごくきれいがちで、よくテレビみていていいとおもう
(従姉より)
お名前:サキ
年齢:3歳
生まれた場所:ママです
住んでいる場所:にほん
好きな食べ物: メロンです
嫌いな食べ物: カメラ
これまでの人生で楽しかったこと:カメラ
これまでの人生で哀しかったこと: うんち
得意なこと: おしっこマン
苦手なこと: メロン
好きなこと: カメラ
未来の夢: うんち
おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
やさしいし、たのしいし、お菓子が好きで、みずでっぽうとかでいっしょに遊べる
(従姉より)
さて、今回のおとなのお悩みは?
Q
モノが捨てられない。片付けられない。
(チーズさん 42歳 東京在住)
(タキさん、以下T サキさん、以下S)
S サーちゃん、かたぢゅけられる。こーやってひろってさ、えーとさ、いれるの。
──サキさんは、片付けられるのですね。
S タキちゃんもかたぢゅけてるんだよ。
T サーちゃんかたづけないけど。
S サーちゃんはひとりで、かたぢゅける。
パパとママねてるあいだにひとりでかたぢゅける。
──サキさん、どうしたら片付けられるのですか。
S サーちゃんはさ、えーとね、なんか、かたぢゅけよっかなーてなる。
──タキさんは、いかがですか?
T パパといっしょにかたづける。
──どうしたら片付けようという気持ちになれるのでしょうか。
T そりゃあ、じぶんでかんがえないと。
──ちなみに、チーズさんはモノも捨てられないようです。おふたりはモノは捨てられますか?
S (さっそくティッシュのゴミをゴミ箱に捨ててみせる)
T なんにもすてたくない。
──そもそもモノを捨てたり、片付けをしなくてはいけないのでしょうか?
S ううん。
──サキさんは、モノを捨てたり、片付けをしなくてもいい、と思うのですね。
T (モノも捨てたりして)片付けたほうがいい。
だってさ、(モノがいっぱいで)足ふむばしょないならさ、あるけないからさ、そのばしょにずっと立ってなくちゃいけないからさ、つかれちゃう。
──確かに、足の踏み場もないようなら疲れてしまうかもしれません。
T そしてドアの方からどんどん後ろにかたづけていく。
──そしてドアの方から片付ける?
T ドアがあったらこっちからやっていった方がやりやすい。
──つまりドア側から部屋の中へ向かって順番に片付けてゆくという方法が、タキさんのおすすめということですね。
T そう。
それかクローゼットにパンパンにつっこめばすぐおわる。
──なるほど。
T ぼくだぶん、ああやるといいとおもう。
──ああやる、というのはどういうことでしょうか?
T えーとさ、かたづけられる薬もってれば大丈夫じゃないかな。
──片付けられる薬。それはどこで手に入れられるのでしょうか。
T お店で買うしかない。
──どんなお店へ行けばよいのでしょうか。
T 実験屋さん。
そこにいけば、薬つくってもらえるんじゃない?
──なるほど。それはどんな薬なのでしょうか?
T 赤だと思う。
──味もあるのですか?
T いちごだと思う(即答)。
──その薬、サキさんには飲ませたいですか?
T (頷く)
──タキさんご自身は飲みたいですか?
T (首を振る)
──タキさんはその薬を飲みたくない。
T 別に。のみたくない。
薬のまなくても、ぼくならかたづけられる。
チーズさん、いかがでしたか?
実験屋さんに片付けられる薬を探しに行ってみてください。
あるいはドア側からからまずは片付けをはじめてみてください。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。
かたづけられる薬
もってれば大丈夫
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小林エリカ
近著はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。他の著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)など。