おいしいおはなし第55回『川におちたたまねぎさん』じゃがいもと玉ねぎの相性がいいわけ

以前、国立子ども図書館を訪れたとき、展示室で面白い企画展をやっていました。「絵本に見るアートの100年」(2019年10月1日〜2020年1月19日)と題したその展示では、20世紀の絵本における美術表現に注目し、シュルレアリズムやロシア・アヴァンギャルド、あるいはバウハウスなどの影響を受けた国内外の絵本を紹介するものでした。その中で、日本のモダニズムというカテゴリーで紹介されていたのが、村山知義の絵でした。細いシャープな線と鮮やかな色、どこかユーモラスな表情の動物たち、そしてそこに添えられている文章の面白さが記憶に刻まれました。その後、本屋さんであの絵の表紙の本を見つけました。村山籌子の『川へおちたたまねぎさん』です。
著者の村山籌子は詩人で、子どもを出産後は夫の知義とともに子どものための童話や童謡を創作しました。それは100年近くも前の作品ですが、籌子の言葉と知義の絵が生み出す独特な世界観は今読んでも色褪せることなく斬新で、「わくわく・ドキドキ・わはは・うふふ」の世界に誘ってくれます。

『川へおちたたまねぎさん』は、復刻された村山籌子作品集の第3集で、17篇の童話と童謡が収録されています。彼女の作品の多くは、身近な生き物やモノが登場人物です。表題の「川へおちたたまねぎさん」では、玉ねぎとじゃがいもが登場します。
ホテルを営むじゃがいもさんのところへ、たまねぎさんという紳士が宿泊したいと訪ねてくるのです。ところがあいにくその日は満室。たまねぎさんに《うまごやでも、やねうらでも、どこでも いいから、どうぞ とめてください。》と懇願されたじゃがいもさんは、《では、ちかしつでも よろしければ おとめします。》と案内します。たまねぎさんは大喜びで滞在するのですが、その夜たまねぎさんの身にはあることが起き、次の朝、じゃがいもさんが朝食を持って行くと、たまねぎさんの姿がありません。その後、新聞に訪ね人の広告を出して心配しているじゃがいもさんのところへ、ひょっこりたまねぎさんが帰ってきます。たまねぎさんが身に起きたことを説明するとじゃがいもさんは恐縮しきり。でもたまねぎさんは《あ、あ、ぼくがもう1日 おそく ここへ きたら、きのうのようなひどい目には あわなかったよ。》と大らかに笑います。そしてじゃがいもさんのホテルを気に入って、ホテルの番頭さんになりるのです。そして村山籌子はこう続けます。
《それですから みなさん、あなたがたの めしあがる ようしょくで、じゃがいもの ついている おさらには、きっと、たまねぎが ついているでしょう。それは、こんな わけです。》
村山籌子は子どもと食事をするときに、実際にこんな話をしていたのかもしれません。ごはんを楽しく食べてもらえるように。
この「川におちたたまねぎさん」は、実にユーモアに溢れて独創的な物語です。ぜひ作品集を手に取っていただいて、籌子・知義夫婦の素晴らしい創作を味わっていただきたい、と思います。
そして、夕ごはんにはハンバーグやポークソテーなどの付け合わせに、たっぷりとじゃがいもと玉ねぎのソテーを添えて「じゃがいもと玉ねぎを一緒にお料理するとおいしいのは、そんなわけです」と、子どもたちにおはなししてみてはいかがでしょう。

〔材料〕

じゃがいも 小2〜3個
玉ねぎ 中1個
塩 4つまみ程度
こしょう 少々
ローズマリー 2本程度
オリーブ油 大さじ1

〔つくり方〕
  • 下準備。
    じゃがいもは皮をむいて一口大に切る(皮が薄い新じゃがの場合は皮はむかずタワシなどでよくこすりあらいする)。玉ねぎは皮をむき、8等分にくし切りにする。
  • 焼く。
    フライパンにオリーブ油をひき、弱めの中火にかける。フライパンが熱くなったら、じゃがいもと玉ねぎを並べ、塩をふたつまみ振り、ローズマリーを入れて蓋をする。焦げめがつくまでさわらないように。
  • じゃがいもと玉ねぎをそっと返して塩をふたつまみ振り、こしょうを振ってまた蓋をする。弱火にし、じゃがいもに火が通るまでじっくりと焼いて出来上がり。ポークソテーやハンバーグに添えてどうぞ。

焼いていてフライパンにじゃがいもが張り付いてしまった! というときは慌てず無理にはがさないのが良いです。蓋をしたまま火を止め、しばらく置きましょう。蒸されるとぽこっとはがれます。お肉やお魚も同じ。くっついてしまったときは試してみてくださいね。