おいしいおはなし第44回『くまの子ウーフ』はちみつたっぷりの冷たいおやつ

「海が光っているのはどうしてだろう? もしかしたら海の中にいる魚のウロコがキラキラしているのかな?」
これは、身の回りの出来事を観察して思ったことを発表するワークショップで、港の風景を遠くからとらえた映像を見てある男の子が発表した考えです。聞いたときにハッとして、それこそ目からウロコが落ちるような気がしました。大人は「キラキラしているのは水面に太陽の光が反射しているから」と主張するかもしれませんが、彼のこの説が間違っているとは言えません。実際に、水面近くに魚群がいたらキラキラ光って見えるかもしれません。
とかく大人は正解を知っているつもりで生きていますが、子どもが自分で導き出した考えの方がずっと自由で革新的です。子どもの見ている日々の風景や出来事は、不思議と驚きに満ちているのです。そのことを忘れてしまった大人が野暮な正解を押し付けて、子どもたちがのびのび自分で発見したり考えたりする邪魔をしてはいけませんね。
……と、そんなことを考えていて思い出したおはなしが『くまの子ウーフ』です。1969年に出版され読み継がれてきたこのおはなしの主人公ウーフは、遊ぶのと食べるの、そして考えるのが好きなくまの子ども。毎日いろいろなことを不思議に思い、考え、発見しています。

たとえばお母さんが目玉焼きを作るのを見て、卵からは決まって白身と黄身が出てくる=卵は白身と黄身でできている、ということに気付いたウーフは、身の回りのいろいろなものがなにでできているかを知り始めます。そして、めんどりは毎日卵をうむ=身体にたくさんの卵が入っている=「それなら、めんどりは、たまごでできているんだ。」(30頁)という考えに至るのですが、「めんどりはたまごをうむ。けれど、ウーフはうまないよ。うまないかわりに、からだからだすのはおしっこさ。はは、ウーフはね、おしっこでできてるのさ。」(32~33頁)とキツネのツネタに言われてしまって、自分が何でできているのかを考えたりします。
ウーフは食いしん坊ですから、どうも食べながら考えたり、考えながら何かを食べたいと思ったりすることが多いようです。ある暑い日には、ウーフは空に浮かぶ雲を見てこんなふうに思います。
「ああー、ソフトクリーム百こ、なめたいなあ。」(91頁)
そこへやってきた小鳥のピピに、分厚い毛皮を脱いで売ったらいい、と言われます。
「はだかんぼになって、すずしくなって、おまけにお金もちになれるのよ。ソフトクリームなんて、百こも買えるわよ。」(93頁)
そう教えてもらったウーフはピピに手伝ってもらって毛皮を脱ごうとしますが、失敗。お金持ちになってソフトクリームを100個食べる夢が消えたと泣くウーフに、お金を入れたかばんを落として無一文のこがねむしは言うのです。
「おっことしたり、なくしたりしないものだけ、もってればいいのさ。なくんじゃないよ、なあ。」(100頁)
それを聞いたウーフの中に「?」がむくむくと膨れ上がります。
「じゃ、あのー、おっことさないものって、なんなの。」(100頁)
家に帰ったウーフは、「おっことさないもの」がなんなのか、お母さんと考えます。さて、ウーフが見つけた「おっことさないもの」はなんだったでしょう?(大人もこの「おっことさないもの」を大事にしたいものです!)
こんなふうにして、ウーフが発見したことや考えたことは、どれもウーフらしい素敵なものです。大人も子どももぜひ本を読みながらウーフの思索の旅にお付き合いいただくと、楽しい時間が過ごせることと思います。
それでは、暑い夏の日に一生懸命考えたウーフのために、冷たいおやつを作ってあげましょう。ソフトクリームは特別なマシーンが必要なのでお店で食べていただくとして、こちらはおうちでも簡単に作れておいしいアイスクリームです。みなさんも、ウーフの大好きなはちみつをたっぷりかけて、召し上がれ。

〔材料〕

(8cm×16cmくらいのパウンド型1台分)
クリームチーズ 150g
生クリーム 100㎖
はちみつ 大さじ3
ナッツ(ピスタチオ、くるみなど) 30g
ドライフルーツ(レーズン、オレンジピールなど) 40g
お湯(大人はラム酒でも) 大さじ1

〔つくり方〕
  • 下準備。
    パウンド型にはクッキングシートかラップを大きめに敷いておく。
    クリームチーズは室温に置きやわらかくしておく。
    ナッツは硬い殻があるものは取り除いてフライパンで軽く炒り、冷ます。
    ドライフルーツは大きいものは切ってお湯を振りかけておく。
  • クリームチーズを練る。
    ボウルにクリームチーズを入れて泡立て器でなめらかになるまで練る。はちみつを加えて、さらによく混ぜる。
  • ナッツ類を混ぜる。
    ②に炒ったナッツとラム酒漬けにしたドライフルーツを加え、よく混ぜる。
  • 生クリームと合わせる。
    別のきれいなボウルに生クリームを泡立てる。泡立て器を離してツノがたれるくらいになったら、半量を③に加え、ゴムべらで切るように混ぜる。全体に混ざったら残りも加えて、また切るように混ぜる。
  • 凍らせて食べる。
    ①のパウンド型に流し入れ、クッキングシートかラップで表面をぴったりと覆い、冷凍庫で3時間ほど冷やし固める。
    食べるときは、クッキングペーパーやラップごと型からまな板に出して、食べたい分だけナイフでカットしてお皿に盛る。お好みではちみつをたっぷりかけて召し上がれ。

「カッサータ」というイタリアの冷たいデザートをウーフの好きなはちみつたっぷりでアレンジしたアイスクリーム。クリームチーズの代わりに水切りヨーグルトを使うと、あっさりバージョンがつくれます。ヨーグルト400gをコーヒーフィルターで2〜3時間程度水切りすると約150gの水切りヨーグルトになります。ヨーグルトから出た水分は栄養たっぷりなので、ジュースに混ぜたり煮物に使ったりしましょう。

『くまの子ウーフ』
神沢利子 作、井上洋介 絵(ポプラ社)
主人公は、食べることと遊ぶこと、そして考えるのが好きなくまの子どもウーフ。いろんなことを考えながら「うーふー」とうなるからウーフ。日常の中でいろいろなことを不思議に思ったり驚いたりしながら「どうしてだろう?」と考え、自分なりの答えを見つけていく。子どもの好奇心から始まる疑問がふくらみ紆余曲折を経てひとつの結論にたどり着く物語は、大人が読んでも読後の納得感が楽しく心地よい。ウーフを見守るお母さんとお父さんの様子は、子どもの純粋な問いに対して大人はどう寄り添うか?というヒントにもなりそう。

子どもの文学のなかに登場する(あるいは登場しそうな)おいしそうな食べ物を、読んで作って紹介している連載「おいしいおはなし」。第40回までの連載をまとめた単行本『おいしいおはなし』(グラフィック社)は、全国書店または各オンライン書店にて発売中。

文と料理:本とごちそう研究室(やまさききよえ・川瀬佐千子) 
写真:加藤新作
スタイリング:荻野玲子