LIBRARYFAB LAB2022.12.15

〈FAB 2-2〉ガラスケースの中に小さな地球を作ってみる

各界で活躍するプロフェッショナルから直接学ぶことで、こどもの好奇心と感性を育てていくMilK JAPONのワークショップ企画、「FAB LAB」。第二回目は、ガラスケースの中に植物が育つ環境を作って栽培を楽しむ「パルダリウム」をテーマに、銀座にある「ADA LAB」にてワークショップを行いました。
店内はまるで実験室のようで、植物が実験器具のような瓶に入っていたり、まばゆいライトに照らされていたり、まるで未来の園芸店のような空間。ここにくればパルダリウムに使う機材や植物がすべて揃っていて、作り方まで教えてもらえる、という場所です。

「パルダリウムは、小さな地球を作るような感覚で、植物が育ちやすい環境を考えながら作っていきます」と、ADA LABワークショッププログラムの講師を務める川上朋子さん。まずは、ガラスケースの中に植物が根をはるための大地の部分を作ります。
「ガラスケースでは、土を小さな粒状に焼き固めた<ソイル>と呼ばれる特別な用土を使います。滅菌されているため、カビなどが生えにくいんです。ケース内は閉鎖環境になり湿度も高くなるため、雑菌が入り込むとカビが生えやすくなってしまうので」。

次に植えたい植物を選びます。今回用意してもらったジュエルオーキッドと呼ばれる蘭。その名のとおり、宝石のようにキラキラと葉脈が光る不思議な植物で、子供たちもその摩訶不思議な姿に興味津々。
「ジュエルオーキッドは、実際は日本よりも、もっとジメジメした東南アジアのジャングルに生息しているため、これまでなかなか日本の気候で育てるのは難しい植物でした。でも、ガラスケースがあれば簡単に育てることができるんですよ」。と川上先生。
ケースを使うと、霧吹きで水やりをしたあと蓋を閉めるだけで、簡単にジャングルような高湿度の環境が再現できるのです。

ジュエルオーキッドをソイルに植えこんだら、そのまわりに石や苔を植え込んでいきます。その植え込みに使うのは、こんななが~いパルダリウム用のピンセット! なぜこんなに長いかというと、ケースの中にはなかなか手も普通の長さのピンセットも届かないため、こんな長いピンセットを使って作業をします。
ここが一番みんなが夢中になった作業。実際、この苔の植え方で、景色の仕上がりがかなり変わってきます。大人はここで考えすぎてしまいがちなのですが、子どもたちは自分の頭に浮かんだインスピレーションに素直にしたがって迷いなくズバズバと植え込んでいき、ダイナミックな景色が生まれました。苔の植え込みが終わったら、蓋をしめてパルダリウム完成!

ジュエルオーキッドは、自生地では木漏れ日が当たるくらいのジャングルの林床に生息しているため、それほど強い光はいりません。カーテン越しの窓辺の光がちょうど良いのだとか。
または、太陽の代わりに蓋の上にLEDライトをのせれば、部屋のどこでも栽培ができてしまいます。自分の机の上においたりして、好きなだけ植物の成長を観察できるのがパルダリウムの魅力のひとつです。
「なんで葉っぱがこんなキラキラになってるの?」と早速ケースの中の植物を食い入るように覗き込む子どもたち。ジュエルオーキッドの光る葉模様についてはまだちゃんとした研究がされておらず、葉脈から葉の中に光を取り込んで光合成の効率を上げている、だとか、虫食いの擬態である、などの可能性が言われていますがハッキリとしたことはわかっていません。植物の世界は、実はまだ研究されていないことがたくさんあるのです。将来、この中の子どもたちがジュエルオーキッドのキラキラの謎を解き明かしてくれるかもしれませんね。

仕上げに、霧吹きで雨を降らせてあげます。ソイルの色がしっかり下まで濡れた色になればOK。
「水やりは、あげすぎに注意してくださいね。ケースの底に水がたまりすぎてしまうと根腐れして植物が調子を崩してしまいます」。と、シュッシュと控えめに数回だけ霧吹きをする先生。
ケース内は湿度が保たれるため、すぐに乾いてしまう心配はあまりなく、むしろ水のやりすぎのほうがパルダリウムの失敗の原因になりやすいのだとか。ソイルの表面が乾燥してきたら、また軽く霧吹きをして湿らせてあげるくらいで良いそう。置き場所にもよりますが、毎日でなく週に2-3回霧吹きをしてあげるくらいで十分。とても楽です。先生からは、パルダリウム製作に使った植物の種類や、その管理方法が書かれた「プランツカルテ」ももらいました。
「管理はしやすくても、ほったらかしではもちろんうまく育ちませんよ。伸びすぎてしまった植物を刈り込んだり、枯れ葉を取り除いたり、とみんな自分のお庭を手入れするような気持ちでケースの中を常にきれいな状態にしておいてあげてくださいね」。
子どもたちが思い思いにレイアウトした小さなジャングルは作っただけでは終わりません。これから、どんな素敵な景色に育っていくのか、本当に楽しみです!


 
 
 

ADA LAB GINZA

ガラスケースで行う新しいインドアグリーンカルチャー「パルダリウム」を提案する実験的なショップ。「ネイチャーアクアリウム」と呼ばれる、水槽の中に自然の景色を作り上げるスタイルの生みの親であるアクアデザイン アマノが運営する。毎日パルダリウム ワークショップが開かれており、今回とほぼ同様のプログラムを受けることができる。https://ada-laboratory.com

Photograph: Akira Yamaguchi
Produced by STRAIGHT

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