LIFESTYLE / Interviews / 2026.11.05

南村麻美/子どもたちの日常に上質という贈りものを。〈こどもビームス〉ディレクター

子どもにとって、本当にいい服とは何だろう。世界中から感性豊かな子ども服を届けてきた〈こども ビームス〉が、この11月、新たなオリジナルコレクション「STANDARD RICH by Kodomo BEAMS」をローンチする。日本のものづくりが育んできた確かな技術と、上質な素材が持つ肌触り。子ども服ながら、決して妥協のない価値を見つめ直したハイクォリティなコレクションを目指した。〈こども ビームス〉のディレクター、南村麻美さんに、そんな新しいラインに込めた思いをインタビューした。

世界中の服に出会ってきたからこそ、日本のものづくりへ

東京・代官山で、誕生から18年にわたり親しまれてきた〈こども ビームス〉。店内には、国内外からセレクトした個性豊かな子ども服やオリジナルアイテムをはじめ、ベビーカー、おもちゃ、雑貨など、遊び心あふれるアイテムが並ぶ。まだ知らなかったブランドに出会ったり、大人顔負けの凝ったデザインに心を奪われたり。訪れるたびに新しい発見があり、子どもも大人もファッションの楽しさに夢中になれる場所だ。

「私たちが大切にしているのは、素敵な子ども服を届けるだけでなく、子どもたちの成長に寄り添うレーベルであること。子どもの感性を豊かにする“もの”や“こと”を提案していきたいと思っています。子どもがワクワクするのはもちろん、親も一緒にワクワクできること。ファッションやカルチャー、トレンドに対しても妥協したくないんです」

そう語るのは、4代目ディレクターを務める南村さん。2004年にビームスへ入社し、店舗やVMD、レディース部門などで経験を積んだ後、自身の出産・育児を経て、子ども服の世界へと活躍の場を移した。

「娘に着せたいものを考えることが、そのまま仕事につながっていくような感覚でした。〈こども ビームス〉では、プライベートと仕事が自然に重なり合う、とても楽しい日々を過ごしています」

以来、子ども服への情熱は深まるばかり。年に2回の海外展示会に加え、日常的にSNSで新しいブランドを探し、ときには自ら海外のデザイナーにコンタクトを取ることも。選ぶ基準は、まず自分自身が心から可愛いと思えるか。そして、その服を手に取る親子の姿が思い浮かぶことだと南村さんはいう。

「きっとこれは好きそうだな、これを紹介したら驚いてくれるだろうな、と。お客様に受け入れてもらいながら、同時に新鮮な驚きも届けたいと思っています」

そんな南村さんが今回、新たな挑戦として目を向けたのが、日本のものづくりだった。ブランドの20周年を見据え、オリジナルの可能性をさらに広げていきたい、素材や仕立てに一歩踏み込んだ服づくりを実現したいという思いが、〈こども ビームス〉の新しいライン「STANDARD RICH by Kodomo BEAMS」へとつながった。

「目指したのは、究極のシンプル。トレンドを追うのではなく、素材の良さや仕立ての美しさが自然と伝わる服です。そして今回、どうしてもこだわりたかったのが、日本製であること。世界中の子ども服に触れてきたからこそ、改めて日本の丁寧な手仕事や、細部まで妥協しない技術の素晴らしさを感じます。日本のブランドとして誇れる子ども服を、私たち自身でつくってみたかったんです」

素材の向こうに見える、つくり手の情熱

「STANDARD RICH by Kodomo BEAMS」は、国内での素材加工や縫製にこだわった全5型。南村さんは自ら工場に足を運び、ものづくりの現場を見つめてきた。そこで出会ったのは、想像を超える職人たちの情熱だった。なかでも印象的だったのが、ダウンに使用する羽毛を扱う「河田フェザー」の工場。コレクションで採用したのは、回収した羽毛を国内で精製・洗浄し、機能をよみがえらせたリサイクルダウン。独自の厳しい清浄度基準を設け、埃や不純物を徹底的に取り除いている。

「本当に圧巻でした。原料をさらに良いものへと高めていく技術も、品質へのこだわりも、想像以上で。これこそ子ども服に使うべき素材だと感じたんです。特に肌が敏感なお子さんを持つ親御さんにとって、安心して服を選べることは、とても大切だと思います」

ふっくらと軽く、暖かい羽毛に加え、表地にもなめらかな肌触りを追求。素材の清潔さと心地よさを兼ね備えた、子どものためのダウンが生まれた。さらに岡山では、デニムやチノパンの縫製工場を訪問。そこでも、ものづくりに向き合う職人たちの姿勢に心を動かされたという。

「私たちはデザインを考え、工場の方々に形にしていただくわけですが、その裏側に、これほど手間をかけた丁寧な仕事があるなんて。実際に目の当たりにして、感動しました。こういう服こそ、子どもたちに着てほしいと改めて思いましたね」

日本製セルビッジデニムパンツは、本格的な耳付き生地を使い、はき込むほどに味わいが深まる一着。2タックのバレルラインチノパンツには、立体的なシルエットと、クラシックな仕立ての美しさが息づいている。普段は目にすることのない、素材の精製や縫製の工程。その一つひとつに込められた時間と手間を知ることで、服を見る目も少し変わってくる。南村さんが工場で感じた驚きや感動は、新しいコレクションの確かな魅力へとつながっている。

大人が惹かれる美しさと、子どもが喜ぶ着心地

どれほど上質な素材を使い、丁寧に仕立てられた服であっても、それを着るのは小さな子どもたち。大人が考える美しさと、子どもが求めるお気に入りは、必ずしも同じではないのではないか。

「大人は、どんな技術でつくられているのか、どれほど丁寧な仕事が施されているのかという背景にも魅力を感じますよね。でも、子どもにとって一番大切なのは、やっぱり着心地なんです」

その考えを象徴するのが、希少な吊り編み機でゆっくりと編み上げたスウェットだ。空気を含んだ裏毛生地はふんわりとやわらかく、ヴィンテージ由来の「フリーダムスリーブ」は、腕を自由に動かせる機能的なデザイン。古き良き服の美意識と、子どもの伸びやかな動きを両立させた一着。また、サーマルロングスリーブTシャツは、凹凸のある生地が保温性と通気性をかなえ、季節を問わず活躍しそうだ。デニムやチノパンも、クラシックな見た目でありながら、子ども自身が脱ぎ着しやすいゴム仕様を取り入れている。

「私自身、どんなに素敵な服を買っても、娘が『チクチクするから嫌だ』と言って着てくれなかった経験があります。だからこそ、子どもが自然と手に取りたくなる服であることは、絶対に譲れません」

今回発表をする「STANDARD RICH by Kodomo BEAMS」のファーストコレクションは、いずれもベーシックなアイテムばかり。お出かけにも活用できながら、毎日の暮らしのなかで気負わずに着られる服を目指した。

「このラインだけでコーディネートを完成させるのではなく、お気に入りのインポートブランドや小物と自由にミックスして楽しんでほしいですね」

いつか、次の誰かに受け継ぐ日のために

子どもと過ごす日々は、驚くほど早く過ぎていく。昨日までぴったりだった服が、いつの間にか小さくなっている。お気に入りの一着を着て過ごした季節も、振り返ればほんの一瞬だ。けれど、だからこそ、子ども時代の服には特別な愛おしさが宿るのではないだろうか。

「良いものだから、ちゃんと受け継ぎたくなる。ワンシーズンで終わらせるのではなく、何度洗ってもくたびれず、自分の子がサイズアウトしたあとも、次の子どもへとつないでいける。そんな服をつくりたかったんです」

長く使うことを前提に、良いものを選ぶ。成長の早い子ども服だからこそ、この考え方には大切な意味がある。丈夫で、心地よく、時代に左右されないデザインであること。それらが共に感じられて初めて、一着の服は次の誰かへと受け継がれていく良いものになる。今後は、新生児のためのプレミアムなアイテムも構想しているという南村さん。国内生産には職人の不足やコストなど課題もあるが、できる限り日本のものづくりにこだわっていきたいと熱い想いを語る。

「つくり手の顔が見えることは、大きな安心感があると思うんです。子どもに食べさせる食品を選ぶときと同じように、肌に触れる服にも確かな品質を求めたい。子どもたちに“安心・安全な服”を届けること。その思いは、これからも変わらずに大切にしていきたいですね」

「STANDARD RICH by Kodomo BEAMS」は、子どもの成長に寄り添い、やがて次の誰かへと手渡されていく一着。それは服を選ぶ楽しさだけでなく、ものを大切にする心や、つくり手への敬意も育んでくれる子ども服だ。南村さんと〈こどもビームス〉のこだわりが詰まった上質なこども服は、ファミリーの豊かな日常に溶け込みながら、また次の未来へとつながっていきそうだ。

南村麻美(Asami Namura)
2004年 BEAMS入社。店舗スタッフ、ビジュアルマーチャンダイザー、〈B:MING by BEAMS〉のレディースディレクターを担当。産休・育休を経て復職後の現在は〈こども ビームス〉のディレクターを務め、海外からの買い付けや商品企画まで幅広く活躍。趣味はこども服とインテリア。SNSで発信する親子のライフスタイルが注目を集めている。Instagram:@chami1222

こども ビームス(代官山)
東京都渋谷区猿楽町19-7 1F
03-5428-4844
営業時間:10:00〜19:00(不定休)

Photo: Takayuki Saito(BEAMS) Text: Miki Suka

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