キッズウェアからスタートした〈Caramel〉と、高いデザイン性と圧倒的な発信力を併せ持つグローバルブランド〈Zara〉がマルチシーズンにわたるコラボレーションを発表。〈Caramel〉のデザイナー、エヴァ・カラヤニスにインタビューした。
1999年、ロンドンで子ども服ブランド〈Caramel〉を立ち上げたのは、スペイン出身のデザイナー、エヴァ・カラヤニス。当時、幼い子どもを育てる母親だった彼女は、自分が本当に着せたいと思える服を求めてブランドをスタートさせた。上質な素材と繊細な色彩感覚、そして時代を超えて愛される美しさ。その服づくりは、今も世界中の家族に支持されている。今回の〈Zara〉とのコラボレーションについて、エヴァが大切にしたこととは。さらに、彼女のファッション観や幼少期の思い出、子育てについてもインタビュー。エヴァのクリエイションの価値観を紐解きながら、その魅力に迫る。

1975年に創業したブランド〈Zara〉には、どのような印象を持ちましたか。
〈Zara〉は、圧倒的な規模を持ちながらも、思慮深くデザイン主導のものづくりを本気で目指している企業です。私が最も感銘を受けたのは、〈Zara〉のデザインをより幅広い人々に届けようとする姿勢と、その一方でクリエイティブなプロセスを非常に大切にしていることです。アイデアやプロダクト、ビジュアル、そして服をどのように伝えるかに対して深い敬意があります。今回のコラボレーションで私にとって重要だったのは、〈Caramel〉の価値観を損なわないことでした。色使い、素材、プロポーション、品質といった〈Caramel〉らしさを保ちながら取り組むこと。志や基準を妥協する必要はまったくなかったからこそ、今回のコラボレーションがとても誠実なものになったのだと思います。
〈Caramel〉のデザイン哲学として、最も大切にし続けている本質は何ですか。
〈Caramel〉の中心にあるのは、妥協のないデザインと品質へのこだわりです。この25年間、私たちは色彩、素材、カッティング、プロポーション、そしてクラフツマンシップに対する一貫した姿勢によって信頼を築いてきました。私にとって子ども服は決して「ついでのもの」ではありません。あらゆるデザインの分野と同じように、知性や美しさ、そして配慮が注がれるべきものだと考えています。

お客様が〈Caramel〉を選ぶということは、品質だけでなく、センスや感情、そして子どもたちの装いそのものを私たちに託してくださっていることなんです。その責任感が、常に私の指針となっています。だからこそ、多くのお客様が長年ブランドを支持してくださっているのだと思います。誠実さと思いやりを持って提供し、それに共感していただく。〈Caramel〉には、そんな相互の信頼関係が築かれています。

〈Zara〉との協働で、チャレンジしたことは何ですか。
このプロジェクトでは、ネガティブな意味での困難はありませんでした。〈Zara〉からは自由な創作環境が与えられ、コレクションのデザインだけでなく、キャンペーンのクリエイティブディレクション、ルックブック、ビジュアルアイデンティティに至るまで、すべての工程に深く関わりました。このコレクションが明確に〈Caramel〉らしさを持つことが不可欠だったからです。

〈Zara〉のチームは本当に素晴らしく、創造的なプロセスに対してオープンで、信頼と敬意を持って接してくれました。そのおかげで誠実で丁寧なものづくりができたと思います。自由さと共通の価値観が、最終的な結果にも表れているのではないでしょうか。とても〈Caramel〉らしく、それでいて〈Zara〉を通じてより多くの人々に届くコレクションになりました。
コレクションには、〈Caramel〉と〈Zara〉、それぞれのアイデンティティをどのように取り入れましたか?
私にとっては、〈Caramel〉らしい美意識を明確に持ちながら、それを〈Zara〉のお客様に向けて提案することがテーマでした。〈Caramel〉は色彩、素材、プロポーション、プリント、そしてどこか懐かしくも現代的な空気感をもたらしました。一方で〈Zara〉は、その圧倒的な発信力とエネルギーによって、その世界観をより多くの人々へ届ける役割を担いました。つまり、〈Caramel〉らしさを妥協するのではなく、〈Zara〉を手にするお客様にとって親しみやすく、着やすく、魅力的な形へと翻訳したのです。それが今回のコラボレーションの最も面白い部分でした。

〈Caramel〉はお出かけや家族との食事の時など特別なシーンに。そして〈Zara〉は日常をオシャレに見せてくれるお気に入りというイメージがあり、2つのブランドのコラボはその壁を取り払ってくれたような喜びがあります。今回のコレクションをどのようなシーンで着てもらいたいと考えていますか。
私は〈Caramel〉をとても多面的なブランドだと考えています。子どもたちの人生のさまざまな場面に寄り添う服をつくっていますし、それをどう着こなすかはお客様自身に委ねたいんです。今回のコレクションには、日常使いのアイテムもあれば、特別な日のためのアイテム、さらにファッション性の高いピースもあります。
〈Caramel〉の世界観そのものを楽しむご家族もいれば、一着だけを選び、手持ちの服と合わせる方もいるでしょう。その自由度こそが、このコレクションの魅力です。日常と特別な瞬間を自然に行き来できる。子どもが快適でありながら、個性と美しさを感じられる服でありたいと思っています。

色彩や素材選びでは、どのようなこだわりを持って臨みましたか。
色と素材は常に〈Caramel〉の中心にあります。デザインとは切り離せない、服そのもののアイデンティティだからです。今回も、私たちが大切にしている基準に忠実な素材を選びました。主にコットンを使用し、〈Caramel〉らしいやわらかさや質感を重視しています。大規模なコラボレーションであっても、その丁寧さを失いたくありませんでした。

色についても同様です。繊細で考え抜かれた色合いを選び、決して派手すぎるものにはしていません。私は色には深みと感情が宿るべきだと考えています。洗練されていて、それでいて子どもに自然になじむことが大切です。美しい素材、慎重に選ばれた色彩、そして着やすさと個性を兼ね備えた服。それが私たちのいつものアプローチです。

〈Zara〉は美しいビジュアルにも定評があります。今回のコレクションのイメージブックについて教えてください。
今回、キャンペーンのディレクションからモデル選び、フォトグラファー、スタイリング、映像、そして全体のムードづくりまで、〈Caramel〉と同じようにすべてのクリエイティブプロセスに関わりました。私にとってビジュアルは服そのものと同じくらい重要です。コレクションの世界観や子どもたちの個性、そして服に込められた感情を伝える手段だからです。

今回のコラボレーションでは、その表現にも大きな自由が与えられました。〈Zara〉が〈Caramel〉らしさを十分に発揮できる環境を整えてくれたのです。その結果、イメージブックには私たちのブランドと同じような空気感と、細部へのこだわりが表れていると思います。とても美しく、思慮深く、コレクションの精神と深く結びついたものになりました。
今回のコレクションにはウィメンズラインも含まれています。大人向けの服をデザインする際に大切にしていることは何ですか。
〈Caramel〉では以前から小規模なウィメンズのカプセルコレクションを手がけてきたので、今回のコラボレーションにウィメンズアイテムを加えることはとても自然な流れでしたし、私自身とても楽しみながら取り組みました。私にとってウィメンズウェアは、子ども服とは別のものをつくるという考え方ではありません。同じ世界観を広げていくことです。色彩や素材、心地よさへのアプローチをそのままに、大人の女性に向けて表現し直したものだと考えています。

大人の服をデザインするときは、女性が服を着たときにどんな気持ちになるかを常に意識しています。美しいだけでなく実用的であること。個性はあっても複雑になりすぎないこと。私は、着る人が服に支配されるのではなく、自分らしく着こなせる服が好きです。肩の力が抜けていて、それでいてきちんと考え抜かれている。そんな服に惹かれます。今回のウィメンズラインは決して大きなものではありませんが、リラックスしていて、さりげなく個性的で、日常にしっかり根ざしているという、〈Caramel〉らしい感性が息づいています。
シューズやバッグ、帽子、ヘアアクセサリーもとても魅力的です。これらはどのような発想から生まれたのでしょうか。
シューズは1980年代の体育館シューズから着想を得ています。私は以前からあのデザインに特別な魅力を感じていました。どこか懐かしく素朴でありながら、今回のコレクションの中ではとてもモダンにも見えます。本当に愛らしい一足になったと思います。帽子やヘアアクセサリーについては、〈Zara〉チームから提案されたアイデアがもとになっています。私はそれらをコレクションに取り入れることができてとても嬉しく思いました。

アクセサリーは子ども服に豊かな個性を与えてくれます。スタイリングに遊び心を生み出し、装いに表情やムードをもたらしてくれる存在です。私にとってアクセサリーは、コレクションの世界観を完成させるために欠かせないものでした。小さなディテールですが、そこには個性や魅力、そして楽しさが詰まっています。
あなたの子ども時代についてもぜひ聞かせてください。今のご自身につながるファッションの思い出はありますか。
振り返ってみると、〈Caramel〉が誕生するずっと前から、私はまさに「〈Caramel〉の女の子」だったと思います。私のスタイルの原点は子ども時代にあり、とりわけ母から大きな影響を受けました。母は、服を大切にすること、時間をかけて選ぶこと、本当に良いものを買うこと、そしてそれを丁寧に着て、手入れをし、次の人へ受け継いでいくことを教えてくれました。

当時の私はクラシックで少しプレッピーなスタイルが好きでしたが、同時に「頑張りすぎない」感覚も持っていました。そのバランスは今の〈Caramel〉にも受け継がれていると思います。丁寧に考え抜かれているけれど、決して完璧すぎたり作り込みすぎたりしない服です。

お母さまは、どのような方だったのですか。
母はとてもおしゃれな人でしたが、医師でもあったため、装いは決して気取ったものではありませんでした。快適で、実用的で、知的で、そしてシック。その姿勢は私に大きな影響を与えました。服は美しくあるべきですが、同時に現実の暮らしに根ざしていなければならないという考え方です。だからこそ私は今も、品質やプロポーション、色彩、そして着心地に惹かれるのだと思います。服は特別であってもいい。でも、自然体であることが何より大切なのです。

エヴァさんは3人のお子さんを育てる母親でもありますね。子育てを通して学んだ最も大切なことは何ですか。
母親として最も大切なのは、子どもたちが自分らしくいられるだけの“自信”を育てることだと思います。私はできるだけ自分の価値観を子どもたちに押しつけないようにしてきました。もちろん導き、守り、価値観を伝えることは必要です。でも同時に、一人の人間として自分自身になっていく自由も与えなければなりません。

私にとって大切だったのは、言葉で教えるよりも、自分の生き方を見せることです。美しいものや手仕事、品質、人、そして世界への敬意を日々の暮らしの中で示していれば、子どもたちは自然とそれを吸収していきます。強制されるから学ぶのではなく、親の姿を見て学ぶのです。
だから子育てで学んだ最も大きなことは、「信頼」かもしれません。子どもたちが自分らしい個性を見つけていくことを信じながら、その土台として愛情や敬意、自信を与えていくこと。それが何より大切だと思っています。


Photo: Pauline Suzor
Eva Karayiannis(エヴァ・カラヤニス)
スペイン出身。1999年、ロンドンで〈Caramel〉を設立。ニュアンス豊かな色彩と上質な素材、端正な仕立てによる子ども服で注目を集める。どこか懐かしく、静かなモダニティを感じさせる世界観は、世代や国境を超えて愛されてきた。現在はウィメンズコレクションも手がけ、日常に寄り添う美しい服づくりを続けている。
Caramel x Zaraは、6月3日(水)より、ZARA 新宿店、心斎橋店、グラングリーン大阪店、及びオンラインストアにて発売開始予定。
問い合わせ先:ザラ カスタマーサービス www.zara.com
Text: Miki Suka








