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ポーラ美術館による「カラーズ ― 色の秘密にせまる」展が開催。子どもたちと無限の色世界へ
無数の色にあふれた世界で生きる私たち。とても身近でありながら、どこまでも広がっていく無限の再現方法を持つ「色」の面白さに気づかせてくれる展覧会「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」が、箱根のポーラ美術館にて開催中。
私たち大人にとっての美しい色は、太陽や草木など、自然界が作り出す幻想的な色かもしれないが、現代を生きる子どもたちにとっては、10億色を超える色の再現力をもつと言われる最新ゲームやスマートフォンの世界を作る色の方が、もしかしたら身近な色なのかもしれない。担当学芸員にとってこの度の展覧会の着想元になったのが、自身の子どもがスマートフォンやタブレットで遊ぶ姿だという。子どもたちが「仮想の色」ばかりを見続けることになるのではと感じたことも、「カラーズ」展開催のきっかけのひとつになった。
会場風景より、杉本博司「Opticks」シリーズ © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
展覧会は、プロローグ、第1部、第2部の全3部構成となり、プリズムが生む色彩の美しさを切り取った杉本博司による「Opticks」シリーズの作品群から展示がスタートする。
ロベール・ドローネー《傘をさす女性、またはパリジェンヌ》1913年 ポーラ美術館
ヴォルフガング・ティルマンス《フライシュヴィマー 74》2004年 ポーラ美術館 © Wolfgang Tillmans, Courtesy Wako Works of Art
西洋美術の歴史にも触れることのできるクロード・モネやピエール=オーギュスト・ルノワールといった印象派の画家たちによる作品の展示では、当時の画家たちが色彩としての光をどう描くかという、実験的な試みを感じさせてくれる。さらに、近代画家であるパブロ・ピカソやレオナール・フジタ(藤田嗣治)、加えて新しく美術館に収蔵となったヴォルフガング・ティルマンスの写真作品も会場を彩る。ファッションデザイナー小泉智貴のドレスも圧巻。世界中から注目される色鮮やかなコレクションは、生地の街で知られる東京・日暮里で小泉が見つけたポリエステル・オーガンジーで作られている。
展示風景より、小泉智貴《Infinity》2024年
展示風景より、山本太郎《羽衣バルーン》2012年 作家蔵
会場には、日本の現代アートを代表する草間彌生による、日本初公開の立体作品も展示されている。鏡によって無限に広がる空間のなかで色とりどりの球体が明滅する、万華鏡のような世界を作り出した。
展示風景より、草間彌生《無限の鏡の間-求道の輝く宇宙の永遠の無限の光》2020 年 作家蔵 ©YAYOI KUSAMA Courtesy of Ota Fine Arts
色彩に満ちあふれた絵画や彫刻、インスタレーションなど、さまざまな形で私たちを色の旅へと誘ってくれる展覧会だ。歴史や表現方法を超えた芸術の中にある色の世界は、ぜひ子どもたちにも体感させてあげたい。「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトする美術館で春の訪れを感じながら、アートな色彩に触れてみては。
同館のミュージアムショップでは、色彩をテーマにしたオリジナルのファッションアイテムや、チョコレートが並ぶ。
「カラーズ ― 色の秘密にせまる」展とマザーハウスがコラボレーションしたチョコレートは、天然の素材を利用した5つのフレーバーで色彩を表現した。
【展覧会概要】
「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」
会期:2024年12月14日(土)~2025年5月18日(日)
会場:ポーラ美術館 展示室 1, 2, 3, アトリウム ギャラリー(神奈川県⾜柄下郡箱根町仙⽯原⼩塚⼭ 1285)
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで/会期中無休)
入館料:大人¥2,200/大学・高校生¥1,700/中学生以下無料
TEL:0460-84-2111
特設サイト:https://www.polamuseum.or.jp/sp/colors/
TOP:ベルナール・フリズ《Ijo》2020年 ポーラ美術館 Photo: Ken Kato
© Bernard Frize / ADAGP, Paris, 2024 Courtesy of the artist and Perrotin
Text: Miki Suka