いわさきちひろ、没後50年。3つのテーマの展覧会が開催
やさしい眼差しの子どもたち、生き生きとした草花。色と色が混ざりあり、時にはとろけるように広がっていくその絵の美しさに、おとなたちは自らの子ども時代を重ね、子どもたちは心の安らぎを覚えるのかもしれない。
画家として活躍をした、いわさきちひろ。没後50年にあたる今年、「ちひろ美術館(東京・安曇野)」では、生前に作家が大切に描いてきた、「あそび」「自然」「平和」という3つのテーマを設け、家族がともに参加のできる工夫に満ちた展覧会が開催される。それぞれの展覧会には、第一線で活躍をする著名な研究者を迎えて、科学の目でいわさきちひろ作品を読み解くという面白さがある。
展覧会ディレクターは、子どもの遊びや玩具をモチーフにしたインタラクティヴな空間演出を手がけるplaplaxが担う。ちひろが描いた子どもや自然、平和を、科学の視点と重ねながら、見慣れた風景を発見と喜びに変えていく眼差しを表現する。会場では、作品を見たり触れたり、体を動かしたり。子どももおとなも、一緒になってワクワクを共有できるような空間づくりが見どころだ。
『あ・そ・ぼ』
安曇野/2024年3月1日(金)~6月2日(日) 東京/6月22日(土)~10月6日(日)
発達心理学・発達認知神経科学を専門とする、京都大学准教授の森口佑介氏の企画協力で、あそぶ子どもたちを描いたちひろの絵を発達心理学の視点から読み解く。美術館で絵を見ることをあそびに変えた展示で、絵を見るための遊具や、体全体を使ってちひろの絵のなかに入る作品なども登場する。
『あれ これ いのち』
東京/3月1日(金)~6月16日(日) 安曇野/9月7日(土)~12月1日(日)
高度成長期のまっただなかに東京に暮らしながら、野や森が失われていく姿を目の当たりにしたであろう、作者が残した言葉の数々。生き生きと描かれた作品とともに作者の言葉を通して、人間以外のいろいろな「いのち」となかよく生きるにはどうしたらよいかを、感性と知性で楽しく考えていく展示。東京大学名誉教授で理学博士の、鷲谷いづみ氏が企画協力する。
『みんな なかまよ』
安曇野/6月8日(土)~9月1日(日) 東京/10月12日(土)~2025年1月31日(金)
インクルーシブデザインの手法を取り入れた展示。ちひろの絵を起点として、子どもから大人まであらゆる人が、ひとりひとりの個性を尊重しながら、ともに平和を築いていくための手がかりを探していく。日本科学未来館ロボット展リニューアルで問いの監修等、多様な人を深い学びに誘う「問い」のデザインを探究し続ける、京都大学准教授の塩瀬隆之氏が企画協力する。
展覧会の特設サイトは、こちら
TOP: いわさきちひろ わらびを持つ少女 『あかまんまとうげ』(童心社)より 1972 年
Text: Miki Suka