11『かぎばあさんの魔法のかぎ』パイナップルのせハンバーグの魔力

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今日は、一度読むと忘れられないかぎばあさんのハンバーグを。

心に小さなトゲが刺さった時の特別なハンバーグ

「私、子どものときにあの本を読んで以来、お肉とフルーツの組み合わせのメニューに抗えなくなってしまって」

とは、おはなしで読んだおいしいもの、についておしゃべりしていた時のある女性の告白。〝あの本〟は『かぎばあさんの魔法の鍵』です。

主人公の広一くんは鍵っ子です。ある日、せっかく算数で100点を取ったのに、先生のちょっとした一言が心に刺さったまま、「家のなかで、おかあさんがまっていてくれたら、いやなことをぜんぶ、はなしてしまいたいのに……」(P.6)と、ひとり帰宅します。

子どもの頃には、心に小さなトゲがささったまま、どうして良いか分からず途方に暮れてしまうことがよくあります。友達の悪気ない冗談、大人のちょっとした態度、先生の何げない一言。家族でも友達でも、誰かに話せればいいのですが、話すタイミングを逸したり、どう話して良いか分からず、小さなトゲを抜くことができません。

広一くんにトゲを抜くきっかけをくれたのは、かきばあさんでした。鍵をなくした(実はウソ)という広一くんのために、不思議な鍵束で家のドアを開け、おいしいごはんを作ってくれると、広一くんの悩みを解決するための魔法を授けてくれます。

と書くと、まるでやさしい魔法使いのおばあさん、という感じですが、「……わたしも、せわしくて、せわしくて……いっそのこと、インスタント食品にしたいぐらいなんだけど、このかぎばあさんが、かわいいかぎっ子たちに、まさか、インスタント食品では、もうしわけがないだろう……」(P.17)と軽くぼやいたり、「……頭というものは、安もののおなべとはちがうんだから、つかえばつかうほど、よくなるというのは、ほんとうなんだよ」(P.33)なんてへンなたとえでお説教したり、妙にリアルなところが魅力。

そんなかぎばあさんの作ったお料理が、パイナップルをのせた特大ハンバーグです。

***

おばあさんは、大きなハンバーグの上に、油でやいたパイナップルをふたきれ、のせました。

(中略)

ナイフとフォークをもって、広一はハンバーグをたべはじめました。パイナップルがあまくて、なんともいえない、いいあじです。(P.21)

***

その大きさはラグビーボールくらいだそうですから、読んで想像するに、実に衝撃的なハンバーグです。読んだ人の記憶(味覚)にも、しっかり刻まれてしまうわけです。

冒頭の女性曰く「大人になった今だと、一週間がんばった金曜日の夜なんかに食べたいな」。

このハンバーグを食べながら今日のあれやこれやをおしゃべりすれば、大人だって子どもだって、きっとぐんと元気になって、心のトゲも知らない間になくなっているはずです。

『かぎばあさんの魔法のかぎ』手島悠介著/岡本颯子絵(岩崎書店)鍵をなくしたかぎっ子の広一のところへ、世界中の「鍵をなくして困っている人」を助けているかぎばあさんがやってきます。小さな秘密や悩みを抱えている広一のことを、かぎばあさんはお見通し。おいしいごはんを作ってくれると、広一の悩みを解決するための「魔法」を授けてくれます。

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