少年の冒険旅行が人生を切りひらく。ユーモアとみずみずしさが弾けるロードムービー『50年後のボクたちは』

夏休みも終わり、ほっとしている親もいるだろう。夏休みに帰省した人も多いだろうが、その中で聞いたのが、子どもだけで新幹線や飛行機に乗って先に帰省するという話。乗り馴れた新幹線や飛行機も、子どもだけとなれば大冒険になる。実際に体験した子の話は聞いていないが、期待と不安が入り混ざり、なかなかの大変な旅だったのではないかと思う。

 

9月16日から公開される映画『50年後のボクたちは』も、夏休みの旅がテーマの作品だ。みずみずしい思春期の記憶を思い出させるような、切ないひと夏の経験。笑いとくだらなさと、たくましい少年たちの姿が入り混ざる心地いいロードムービーは、夏休みの疲れを癒してくれる。“心の栄養”になりそうな、ちょっといい映画である。

主人公は、14歳の少年マイク。母親はアルコール中毒で、父親は若い美女と浮気中、クラスではのけ者にされ、クラスメイトのタチアナにも片思い中だ。ある日、風変わりな転校生チックがやって来る。ロシアから来たチックは変な髪型で、いつも酒臭くて二日酔い、マイクのとなりの席になるが、お互いに目を合わせることも無かった。

 

夏休み前の最後の終業式、タチアナは誕生日パーティの招待状をクラスの友人たちに配るが、マイクとチックは渡されなかった。ショックを受けたマイクは、部屋で泣き伏し、タチアナへのプレゼントとして描いた似顔絵を破り捨てようとするが、それもできず悶々とする。

 

夏休みが始まると、チックがボロボロの青い車でマイクの家にやってくる。「借りただけ、後で返す」という盗難車“ラーダ・ニーヴァ”で「ドライブに行こうぜ」とマイクを誘った。不安そうなマイクに「刑罰は15歳からだから14歳は大丈夫」と説得し、2人は車に乗った。

呼ばれてもいないタチアナの誕生日パーティに乱入し、マイクは似顔絵をプレゼントし、その場を颯爽と去った。2人は旅に出ることを決め、チックのおじいさんが住んでいる“ワラキア”へと車を走らせるのだった。

 

旅の途中には、たくさんの事件と出会いがある。車からマイクのスマホを投げ捨てたチックは、行き先も分からずトウモロコシ畑に突っ込む。警官に追いかけられ2人が離ればなれになったり、車がガス欠になり燃料を盗もうとしたり。お腹が空いている時に出会った、ちょっと変な母と子どもたちや、ゴミ山で出会ったホームレスのような美少女イザとは淡い恋に発展する。そして旅の途中、チックはあることをマイクに打ち明ける。

 

旅の終わりは、突然やって来る。夜中の道路を走行中に、大型トラックとカーチェイスになり車がクラッシュ、2人は血だらけのケガを負ってしまう。「施設送りになる」と足を引きずりながら現場から逃げるチックに、マイクは自分が着ていたスカジャンを渡し、「また会おう」と別れを告げた。

病室で横たわるマイクは、警官から「14歳から罪に問える」と告げられ

絶句する。旅のツケは最後にやって来たが、マイクの心持ちは夏休み前と違っていた。この旅が、マイクの中で何かを大きく変えたことは間違いない。

 

旅には、多少の危険や悪事もつきものだ。それを歓迎するわけではないが、“ちょっと危ないこと”“悪いこと”が子どもたちを成長させる。社会に関わるきっかけになるし、劇中にあった「14歳から罪になる」というエピソードと同じで、自分の行動に責任を持たなければならないことを知る。

 

誰と旅するかでも、旅は変わるだろう。マイクの相棒になったチックが、たまらなくいい味をかもし出している。二日酔いで登校するくらい酒好きなのに、大人のふりをするためにガムテープでヒゲをつけてみたり。クールで大人っぽい佇まいに反して、おバカで幼稚すぎる一面もあったりする、このギャップにググッと惹かれてしまう。

マイクは、チックとの旅で、悪事を含めてたくさんの経験をし、少し大人になった。変人扱いされていた夏休み前と違い、明らかな“すごいやつ”オーラを放ち、まわりからも一目置かれるようになった。旅は、そんなものなのだ。

 

“かわいい子には旅をさせよ”ということわざがあるが、それも同じだ。辛いことや大変なことを経験することで、自立し、社会を学び、固定概念を変えていく。旅でしか味わえないことがあるから、子どもにはぜひ旅をしてほしいと思う。大人も同じで、旅はいつでも新しい発見を与えてくれるから、旅に億劫になってはいけないのだ。

 

旅に行きたくても行けない人にも『50年後のボクたちは』はおすすめ。

観終わった後の軽快感は、まるで10代にタイムスリップしたかのよう。疲れをリセットし、悩みを解き放つ。そんな効果があるような気もするから、お疲れの大人にもぜひ観てもらいたい。

 

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