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DATE 2018.10.20

39『チョコレート戦争』チョコレートつやめくうっとりエクレア

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」をご紹介。町中の子どもたちがある事件をきっかけに大好きな洋菓子を食べなくなって……大人vs子どもの戦いの結末は?

大人も子どもも大好きな町の洋菓子店のケーキだけど……

シュークリームにショートケーキ、モンブラン。昔ながらの洋菓子の名前は、どこかうっとりと甘く耳に響きます。そんな素敵な甘いお菓子を作っている人気の洋菓子店を中心に、子どもたちと大人との甘くないケンカの一部始終を描いたおはなしが『チョコレート戦争』です。

戦いの舞台となる町一番の洋菓子店「金泉堂」は、地方の隠れた名店としてきっとガイドブックに載っているだろうお店。その本格的なことといったら、シュークリームではなくシュー・ア・ラ・クレームとフランス語の正式名で売っているくらいで、そんなお菓子を大人たちは「東京でも買えないほどの味」と誇りにしています。もちろんそれは町中の子どもたちにとっても同じです。

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おかあさんは、勉強のにがてな子どもたちをはげますのに、「こんど、百点を取ったら、金泉堂の洋菓子を買ってあげますからね」といった。このことばは、ほかのどんなことばよりもききめがあった。(P29)

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というのですから、「金泉堂のお菓子」がどれほど子どもたちの憧れの存在だったかわかるというものです。

そんな金泉堂のショーウィンドウを割ったと勘違いされてしまうのが、主人公の明と光一。やっていないという説明を信じてもらえないまま、店員に引っ張られて支配人のところへ、そして社長の前にまで連れて行かれ、一方的にやったと決めてかかる大人の前で、うまく説明ができない二人の前はただ立っているだけ。そして、ただ黙って唇を噛んでいた二人のショックやもどかしさは、怒りに変わっていきます。明はそれを「ぼくたちの名誉をきずつけられたからだ」(P69)と考え、光一は「戦うんだよ、あの、金泉堂のわからずや連中と」(P69)と決意します。

読んでいる人はきっと「大人はどうして話を聞いてくれないのか」と子どもの頃に一度ならずも悔しく思ったことを思い出し、明と光一にエールを送りつつページをめくることでしょう。

この本が面白いのは、この戦いが簡単に「子どもの一撃で勝利!」とならない、複雑なものになっているところ。光一と明がそれぞれのやり方で別々に戦いを挑むのも大きなポイントですが、金泉堂の社長の金兵衛さんの若い頃の苦労話も描かれていて悪役への共感を誘ったり、年長の子どもたちが明や光一たちの知らない影で動いていたり、一枚上手な大人の反撃があったりと、登場人物もシーンも多く、それぞれのエピソードや人物が絡みながら物語がどんどん展開していくのが魅力です。

子どもと大人の戦いをドキドキしながら見守っていく合間には、甘いお菓子も登場してうっとり。明の好物はエクレールです。このおはなしでは「エクレア」ではなくエクレールと呼んでいるのも、金泉堂流なのでしょうか。つややかなチョコレートをまとってとろけるクリームをたっぷりつめたエクレールを上手に食べるには、おはなしの中での明のやり方を真似してくださいね。

『チョコレート戦争』大石真著(理論社)物語は著者のある日のできごとを綴った「まえがき」から始まります。著者の同級生から聞いたというおはなしがこの物語。主人公の明はささいなことから同級生の小原くんとケンカをしてしまった帰り道、ケンカを仲裁してくれた光一と一緒に町一番の洋菓子店、金泉堂に寄ることになります。たまたま立ち寄った二人の目の前で、ショーウィンドウがバーンと派手に割れ、二人はその犯人として濡れ衣を着せられてしまうのです。「やってないよ」という二人の主張を信じてくれない金泉堂の大人たちに、明と光一は自分たちの名誉をかけて戦いを挑みます。