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DATE 2018.09.20

38『町角のジム』忘れられないベーコンサンドイッチ

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」をご紹介。今日のメニューは元船乗りの老人の冒険物語からおいしそうなサンドイッチです。

少年を夢中にさせる元船乗りの冒険話

「おはなしの中のおいしいものといえば、僕は『町角のジム』のベーコンサンドイッチだなあ。子どもの頃どうしてもあれが食べたくて作ったんですよ」と、ある大人が教えてくれたので、それはいったいどんなにおいしそうなサンドイッチなんだ!? と気になって、2001年に復刊されたこの本を手に取りました。

『町角のジム』の主人公は元船乗りのジム老人と仲良しの少年デリー。デリーの住んでいる町のポストの脇に置いたミカンばこに座っているのがジムです。「デリーは、ジムが、昼間だけでなく、夜中もずっとそこにいて、通りの番をしてくれているのだと思っていました。」(P.7)というくらい、ジムはいつもそこに座って、ニコニコしながら輝く瞳で行き交う人を、町を見守っているのです。

ジムは、デリーだけでなく、町の人みんなにとって大切な存在です。おはなしのはじまりには、こんなふうに語られています。

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そんなわけで、ジムは、この通りにはなくてはならぬ人でした。ここにすむ人みんながそうおもっていました。だれでも、このかどをまがるときは、まるで、じぶんの一部が、ジムといっしょに、ミカンばこの上にすわっているような気がするのでした。(P10-11)

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そうして始まるのは、町角のミカンばこでジムがデリーに語る冒険物語の数々です。たとえば濃い霧が続いた日には海の上でジムがとてつもなく濃い霧に包まれた時のできごとを、あるいはデリーが新しい望遠鏡を手に入れた時には空に輝く月のおはなしを、暑い暑い日にはもっと暑い南の島での体験を。

ジムはすばらしいストーリーテラーです。日常の何気ない会話のなかから、想像力を刺激してわくわくさせる冒険物語をするするっと紡ぎだし、デリーや読む人を夢中にさせます。ジムが話し始めるといつもの町角は、荒れ狂う海の上や緑色の海の底、氷のほら穴の中になります。その不思議な体験は元船乗りのホラ話だと言ってしまえばそれまでですが、そんな無粋なツッコミの隙を与えないほど、その描写はいきいきと鮮やかでユーモアに満ちているのです。

そして、このおはなしのもうひとつの魅力は、ジム老人とデリー少年の友情です。10のおはなしを読み進めていくうちに、ジムの話に耳を傾けているデリーが、どんなにジムのことを大好きで、そして尊敬しているかが、読む人に伝わってきます。そして最後の10番目のおはなしまで読み進めたとき、きっと胸の中にあったかいものが広がって、ニコニコしてしまうはずです。

さて、そういえば例のベーコンサンド、もちろんジムの冒険のおはなしのなかに登場します。ジム曰く「ガブッと、ひと口やるには、口を大きくあけなくっちゃならない。が、そのとき、ベーコンの味がジュウッと、舌にしみて、なんともいえずうまかった。」(P.18)なるほどこれはおいしそう。きっとこんな自家製ベーコンなら、ジムのサンドイッチに負けないおいしさになるはずです。

『町かどのジム』エリノア・ファージョン著、松岡享子訳(童話館出版)8歳の少年デリーが住む通りの角にはミカンばこが置いてあり、そこにはジム老人がいつも座っています。元船乗りで世界中のことを知っているジムは子どもたちの人気者で、デリーも大好きなジムの冒険話にいつも夢中。10のおはなしを読み進めていくと、季節も秋から冬へ、冬から春へ、そして春から夏へと移り変わり、ジムの冒険話もその季節の彩りにあわせて語られます。ジムの語る生き物やいろいろな気象の様子、海の姿はいきいきと魅力的です。