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DATE 2018.08.20

37『たのしいムーミン一家』どうくつでキャンプする時のごちそう

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」をご紹介。今日はムーミンと一緒に楽しむ夏のおはなしです。

自然とともに夏を目一杯味わう暮らしに憧れて

「夏の間だけは夜も明るい国があるんだよ」。そう教えてもらった時の驚きたるや! おとぎ話の存在であるかのような「夏は夜も明るい国」という響きは、子ども心をぎゅっとつかみました。そしてその国の物語を読みまくったものです。なかでも、豊かな自然に包まれたその夏の魅力を教えてくれるのは、ムーミンのお話ではないかと思うのです。

『たのしいムーミン一家』は、ムーミンたちが冬眠から目を覚ました春から夏が終わって秋の訪れを感じるまでのまさに夏の間を舞台にしたおはなしです。春になってムーミンたちが外に出た時の様子はこんな感じです。

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たしかにきょうは、すばらしいお天気になりそうでした。どこにもかしこにも、長い冬ねむりからさめた小さい生きものたちが、よっぱらったような顔つきをして、ぶらついてました。(P.19)

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「よっぱらったような顔つき」というのが、まだ眠気が残っていつつ春の空気にうっとりしている気分をよく表しているではありませんか。そんな生きものたちは新しい季節を胸いっぱいに吸い込んで、いそいそと支度します。住まいや身なりを整えたり、ごちそうの準備をしたり……また動き出した日常にうきうきとしながら楽しい夏を味わうのです。ムーミンたちも冒険に出かけます。海に行ったり、嵐の中キャンプしたり、船に乗って大きな魚を釣ったり、夏を存分に味わうのです。

私たちにとっても夏休みは楽しみだし、キャンプにだって釣りにだって行くかもしれません。でも、ムーミンたちの物語に登場するできごとはもっとずっと特別に思えます。それはおとぎの国のお話だから、ということだけではなくて、困難だって楽しんでしまえるムーミンたちの自由な精神ゆえではないかなと思います。パパはこんなふうに言うのです。

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「わたし、きょうはなにか、とくべつなことをしたくなったわ。」

と、ムーミンママがいいだしました。(中略)

「まったくだ。ねえ、ママ、そんならどこかへ、ピクニックへでかけたらどうだろう。」

こう、ムーミンパパがいいました。

「もう、あらゆる場所へいったからなあ。あたらしい場所なんかないよ。」

と、ヘムレンさんがいいました。

「いや、ないはずはない。もしなかったら、みんなでつくったらいいさ。おい、子どもたち、たべかたやめ。ーーたべものも、もっていこうじゃないか。」

こういったのは、ムーミンパパでした。(P.86)

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さて、そうしているうちに夏も終わります。夏の終わりは少し切ないものです。ムーミンは夏の終わりに切ないお別れもありました。でも夏一番のお祝いの会を家族や仲間と楽しんだムーミンは、秋の気配の涼しい風の吹く夜明けの中を幸せな気持ちに包まれて家に向かいます。

今日はそんな夏の日々のご馳走から、かぼちゃのジャムをお届けします。ムーミンママはきっと、収穫したてのみずみずしいカボチャをこっくりと甘くおいしく炊いたんじゃないでしょうか。パンケーキのお供にはもちろん、トーストにもぴったりです。

『たのしいムーミン一家』トーベ・ヤンソン作・絵、山室静訳(講談社)ムーミン、スナフキン、スニクは冬眠から目覚めました。季節は春から夏へ向かっていきます。森は緑濃く海は青く、日は長く、いろいろなことができます。海へキャンプに出かけて嵐の中で泊まったり、暑すぎる日にはどうくつにでかけたり、あるときには不思議な荷物を持って新しいお客さんが登場したり。そして一番最初からその名前だけで存在感を強く放っていた「飛行おに」がついにムーミン谷にその姿を現します。ヤンソンさんはムーミンのおはなしを全部で8つ書きましたが、これはその2作目です。