〈ボボ ショーズ〉の創業者アドリアナ・エスペラルバは、スペインのカタルーニャの別荘で、その活き活きとしたコレクションへの着想を得ている。彼女が生みだすものには、自身の子どもたちやカタルーニャの自然が反映され、シンプルなものを輝かせる独自のセンスが宿っている。
アドリアナのクリエイションは、自然の片隅で始まる。静寂に包まれながら、豊かな想像をめぐらせていく。〈ボボ ショーズ〉のデザイナーである彼女の別荘は、ピレネー山脈の麓に広がるのどかな高原にある。週末になると、パートナーのグザヴィエ、子どもたちのテオ、モモとともにこの地で過ごしている。手に入れてから1 年も経っていない古くて素朴な家は、あっという間にやすらぎの隠れ家となり、アイデアの実験室となり、思い出のつまった未来の宝箱となった。

一家が多くの時間を過ごすバルセロナとは異なり、ここではゆるやかに時を過ごす。人々や大地とつながり、未来を思い描いていく。庭で過ごしたり、小さな家庭菜園を世話したり、背の高い草むらを散歩したり、秋になるとキノコ狩りを楽しんだり、外での時間を大切にしている。
「この家の好きなところは、部屋に差し込む朝の光と動きだした自然のざわめきで目が覚めること。グザヴィエが淹れてくれるコーヒーの香りも大好きで、それが朝食の合図です。みんなが集まるキッチンで、くつろぎながら、一日のスタートとなる会話を交わします」
アドリアナには、めまぐるしく変化する時代の中で本質に立ち返りたいという強い思いがある。
「この家やここで過ごす時間には、飾らずに、地に足のついた生き方をしたいという願いが表れています」
家の中には派手なものが何ひとつ見当たらない。素朴な造りの室内に1960年代、70年代のアンティーク家具が並ぶ。どれも、デザインだけでなく、それぞれが紡ぐ物語に惹かれて手に入れてきたものだ。
「特に好きなのはランプ。他にも昔のボードゲームや陶器など、ヴィンテージのものに愛着を感じます。また、コレクションで使った布でカーテンも作りました」
創造性が満開の花を咲かせる場所
グラフィックデザインを学んだ彼女が〈ボボ ショーズ〉を立ち上げたのは、息子テオが誕生した2008年のこと。思い描いていたような子ども服がないことに不満を感じ、自身のブランドを立ち上げて子ども服を作り始めた。
「子どもたちの無邪気さに触れると、自然と笑顔になります。子どもたちが、着る服を通して楽しく自信を持って自分を表現できること。そのことが本当に美しいと感じます。子ども服には、彼らと同じようなエネルギーを持っていてほしいんです」
以降、ビビッドなカラー、グラフィカルな模様、動きやすいカットが特徴の〈ボボ ショーズ〉は、気まぐれな子どもたちの世界を探求し続けている。
「子どもたちの世界にはルールなんて存在しない。創造性が満開の花を咲かせる場所なんです」
彼女のクリエイティビティもとどまるところを知らない。〈ボボショーズ〉では大人向けのラインも展開。さらには、よりコンセプチュアルな子ども服ブランド〈トゥルー・アーティスト〉を立ち上げ、シューズの〈カンペール〉、スキンケアの〈Nobads〉、バッグの〈オレンド〉とのコラボ商品を次々と発表。そこには常に「服を通じて物語を語る」という基本の精神が貫かれている。
「ウィメンズのラインは専属チームが制作していて、すでに100以上のアイテムを発表しています。年齢を問わず自由に自分を表現できて、難しいことを考えず、着るのが楽しくなるような服作りを目指しています」


子どもたちが何に感動しているのかを見つめる場所
彼女の創作のプロセスは常に変化し、本能にゆだねられている。決められた段取りはなく、星座のようにイメージと言葉が綴られたアイデアノートがあるだけだ。
「いろんな物語を何時間も想像し続けるんです。そこから毎回新たなコレクションが生まれます」
彼女の創造の世界を豊かに育んでいるのは、ここカタルーニャの自然。そして家族、アート、旅、素朴なものたちの美しさ……。すべてが影響し合い、つながっているのだ。〈ボボ ショーズ〉の2026年春夏コレクションは、まさにこの地の光、フルーツ、生き方からインスピレーションを得たもの。そして、彼女の創作において、自身の子どもの存在は特別な意味を持つ。
「子どもたちが何に感動しているのか、それを観察するのが何よりも好きなんです。子どもたちの目を通して世界を見て、彼らが感動したことを書き留めています」
テオとモモは、母親のブランドとともに成長してきた。試作品を着て、カタログにも登場し、喜んで参加したこともあれば、協力を嫌がったこともある。
「思春期に入ると、自分なりのアイデンティティーを求めて、私の服はもう着たくないと言ったことも。でも今では、一番のファンになってくれて、この冒険での大切な役割に誇りを持ってくれています」

ブランドの名声がどんどん高まっても、彼女は常に陰の存在でありたいと願う。自身の名より、チームや作品を前面に出すアドリアナ。そんな彼女は、信念を貫きながら成長を遂げるこのブランドの心臓部であり続けている。
「私は〈ボボ ショーズ〉自身が語ってほしいと願っています。大切なのは創作のプロセスや、私たちが語る物語。私自身が前に出ることに重きを置いていません。かかわる人々の努力とがんばりが反映されること。それこそが重要で、ブランドの真の成長にもつながります」
これまでの成功を振り返ると、なぜ彼女が喧噪よりも静けさを好むのか理解できた気がする。沈黙は、時に私たちが思う以上に大きな反響を呼ぶのだ。

Photograph: Nia Delfau
Text: Sarah Berger
Translation: Kumi Hoshika
