おこさま人生相談室 第75回-小林エリカ
おとなのお悩み
年上の部下が、私よりも高い給与をもらっているのに、仕事が上手くできません。
今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、Rioさん6歳です。部屋には自作のレゴを飾りつけ、エリカのためにと植物辞典で見つけた「エリカの花」のページを開いて歓迎してくれました。スケートボーダーの堀米雄斗みたいにカッコよくなりたくて、現在スケートボードを練習中。
おこさま紹介
お名前:Rio
年齢:6歳
生まれた場所:ピンクのドクター
住んでいる場所:辻堂
好きな食べ物:アイスクリーム ピザ カレー パスタ
嫌いな食べ物: ビートルート
これまでの人生で楽しかったこと:えーと、ママと遊んで、あと幼稚園と、えーと、サイエンス、ハロウィン、レゴ作る、ママとご本読む、あとダディと遊ぶのと、ひまりと遊ぶことや、みんなと遊ぶこと、お馬さんに乗るのと、ママとぎゅーする。
これまでの人生で哀しかったこと: ダディとママがケンカした
得意なこと: レゴ作る、隠れる、段ボールでもの作るのと、Art & Craft、(カッコいい)ムーブと、忍者と、ピアノと、お馬さんと、スケボー
苦手なこと: えーと、バックフリップ(バック転的な動き)できない。クッキングはまだできない。あとルービックキューブむずかしい。ご本読むのまだそんな上手じゃない。あと、本当はスケボーちょっとむずかしい。
好きなこと: スケボー、幼稚園、忍者、(かっこいい)ムーブ、あとひまりと一緒にいること、レゴ作ること、ママとご本読むのと、Art & Craft と、Colouring と、ピアノと、馬に乗ること、泳ぐの、あとママとぎゅーする。
未来の夢:YUTOみたいにカッコよくなりたい(スケートボーダーの堀米雄斗)
(注:上記は「エリカの前で、全部ゆえないと嫌だから、前もって全部ゆいたい」というRioさん本人の希望により事前にRioさんのママさんが聞き取りをしたものになります)
おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
「物作りや大好きなLEGOへ、興味のあることに全力で情熱を傾けて夢中になる姿は、とても素敵でキラキラしています。Rioくんのふとした一言にハッとさせられたり、大人とは違う視点から物事を見て感じ取る特別な感性を持っていながら、ユーモアと愛らしい笑顔でいつもみんなを惹きつけています」
(ひまりとひまりのママより)
さて、今回のおとなのお悩みは?
Q
年上の部下が、私よりも高い給与をもらっているのに、仕事が上手くできません。入社してから一年以上経ちますが、いつも消極的で、まだ一人で仕事をまわせないため、私が部下の面倒を見ながら、自分の仕事もこなさなければならず、とても疲れてしまいます。どうしたらいいですか?
(ももまま 42歳 福島県在住)
(Rioさん、以下R)
R お金あげる。
──確かにももままさんに、もっとお金をあげたほうが良さそうです。どうしたら、お金をあげられるでしょうか。
R 大好きものぜんぶたべちゃうよっていって、そのあとに、お金あげないと、たべちゃうよっていう。
──お金をくれないなら、大好きなものを全部食べちゃうよ、と言う。つまり、交渉をすればいいということですね。
たとえば、ももままさんも、もっとお金をくれないなら、大好きな仕事全部やめちゃうよ、というふうに会社と給与交渉をすることもできるかもしれないです。
R (頷く)
──そもそも仕事ができない部下さんの方がお金を多くもらっている、というのはどうでしょう。
R お金あるひと、そんなにがんばれない。
──お金がある人は、そんなに頑張れない?!
R お金あるひと、もっとかって、もっときれいくしなくって、ぐちゃぐちゃにする。
──お金がある人はどんどん買い物をするし、掃除もしなくなって、部屋もぐちゃぐちゃになってしまう。お金がありすぎるせいで、頑張れない、ということでしょうか。
R はい。なんだけど、(お金がたくさんある絵を描いてみせながら)これよりもっと(お金)あって、もしかして、うれしすぎて、がんばれない。
──お金があると、嬉しくなりすぎて、頑張れない、ということですね。お金があれば、もういいや、となってしまうこともありそうです。
R それぼくまえ(そう)だった。がんばれなかった。
──なるほど。Rioさんにもそういうことがあったのですね。
つまり、部下さんには、お金を、給料をあげすぎない方がいい。どうすればそうできるでしょうか。
R ………。
──難しい質問ですね。
R ちょっとかんたん!
──簡単なのですね。
R もしかして、このこ(部下さん)いっぱいあそびすぎて、あと幼稚園にいってないから。このこ(ももままさん)いつも幼稚園とか、おとなのいうものやってる。
──部下さんは勉強が足らず遊びすぎているし、ももままさんは勉強もしていて真面目で上の人のいうことをきいてしまう、ということでしょうか。
R (頷く)このこ(ももままさん)JOBが大好きすぎて、すごいやってる。
──ももままさんは仕事が大好きすぎて、部下さんの分までやってあげてしまう。
R (頷く)
──ももままさんは、真面目で人のいうことをよくきいてしまうし、大好きなことだから頑張りすぎてしまう。それで、疲れてしまう、ということでしょうか。
R (頷く)ママとおなじ。
──どうしたら、疲れないようにできるでしょうか。
R ぼくいつも、すわってテレビ見たら、もっとものできる。
──ももままさんも、テレビを見たり、少し休んだほうがいい。
R ただただ、ねちゃう。
──ただただ寝る。どうして寝るとよいのでしょうか。
R つかれるとき、ねるしょ。
──疲れたら、とにかく、寝る。
R あと、このこ(部下さん)、もしかして、もっと幼稚園にいって、とか。
──部下さんは、もっと仕事を勉強するようにした方がいい。
R もっと、ものとかJOBあったらできる。
ぼく大きくなったらJOBはホームルームティーチャー。
──部下さんも、もっと何か得るもの、もっとやりたい仕事やできる仕事があったら、頑張れるということでしょうか。
R そう。
──部下さんもやりたい仕事なら上手くできるかもしれません。
R このこ(部下さん)のお金、どっかにとっておいて、そのあとにすごいがんばったら、もいっかいあげる。
──部下さんには、はじめから給与やお金を与えるのではなく、頑張ったらその分だけお金を与えるようにする。つまり、頑張ったことのリワード(褒賞)をきちんと用意する、ということですね。
R Reward.
──Reward!それはお金でなくてもよいのですか?
R レゴとか。レゴでなんでもつくれる。あと100さいでもレゴつくれる。
──部下さんががんばれたらレゴを与える、というのはすぐにでもできそうです。
R (画を描きながら)レゴとかものいっぱいあげた。できる。もっとものあげた。クッキーとか、おりがみとか、あと、色えんぴつとか、あとえんぴつとか、あげた。もっとできる。
ももままさん、いかがでしたか?
会社には給与交渉、部下さんには部下さんのやりたい仕事と頑張りに応じてレゴなどの褒賞を与えてみましょう。
真面目でいうことをよくきいて頑張りすぎたり、疲れてしまったら、とにかく、寝ましょう。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。
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小林エリカ
絵・取材・文
小林エリカ
近著はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。他の著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)など。