おこさま人生相談室 第62回-小林エリカ

おとなのお悩み

「長生きなんてするんじゃなかった殺して欲しい」と母が言います。

今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、Haさん8歳。
昨年は一日も休まず学校へ行きました。サンタクロースにお願いしたのは、電子辞書。
学校では、朝、お昼、お昼の終わり、帰りの会、毎日4回お祈りしています。お祈りするときには目を瞑るのですが、それが嫌い。なぜなら、外が見たいから。

おこさま紹介

お名前:Ha
年齢:8歳
生まれた場所:病院
住んでいる場所:世田谷
好きな食べ物:たぶんお母さんの作ってくれた春巻きみたいなやつ
嫌いな食べ物:食べたことあるので大嫌いなのはアボカド、あとはズッキーニ
これまでの人生で楽しかったこと: 保育園のときにみんなといっしょに公園に行って、じゃんけんしながらジャングルジムを上にあがって行った
これまでの人生で哀しかったこと:一年生のときに入学して去年の11月くらいに学校ではじめて友だちになった子が転校しちゃったこと
得意なこと:工作とか 絵を描くこと
苦手なこと:てつぼう
好きなこと:本読むこと 好きな本は『ロロとレレのほしのはな』(作/のざかえつこ、絵/トム・スコーンオーへ) 絵を描くこと
未来の夢:夢はまだ悩んでる 決まってない

おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
Haちゃんはやさしくて楽しい女の子です。
だれかがころんだときやひとりぼっちでいるときには「どうしたの?」「だいじょうぶ?」とすぐに気がついて声をかけてくれます。明るいお話やおもしろいおどりでいつもみんなをもり上げて、えがおにしてくれるムードメーカーでもあります。みんな、Haちゃんのことが大好きです。いつまでもずっと仲良しでいたいな!
(同級生のKoさんより)

(Ha、以下H)

さて、今回のおとなのお悩みは?

Q 母が99歳で老人ホームにはいり、コロナで人に会えない、膝も痛い、耳も聞こえづらい、生きている喜びもなく、息子である自分に、「長生きなんてするんじゃなかった殺して欲しい」と言います。時々ホームへ行ったり差し入れしたりしますが、どうしたらいいですか。
(じーじさん 77歳 埼玉県在住)

H あの、神様が世界みたいのをつくったから、だから神様がくれた命を大切にしてほしい。

──Haさんは、どうしてそう思えるようになったのですか。

H なんか、学校で教えてもらったから。
学校の授業で、先生が、地球は神様がくださったんですよって。

──なるほど。けれど、じーじさんの母さんは、もしかしたら、そのことを知らないのかもしれません。どうしたら、神様がくれた命を大切にしようと思えるようになるのでしょうか。

H イエス様はマリア様の子どもで、ヨゼフ様の子どもでもあるけど、神様の子どもでもあるから。その神様の愛みたいので、みんなのことを愛してたから。自分は悪いことしてないのに、多分死んじゃったけど、その三日後くらいだったかな復活して、そのあとまたバイバイーみたいになっちゃったから。
だから、神様の愛みたいなものがあるから、神様は地球をつくってくれたんだと思う。神様がつくったのに、人を愛してないってなんか変だから。

──神様の愛があるから、それに気づけば、神様がくれた命も大切にしようと思えるはず、ということですね。ちなみに、その愛に気づけないときは、どうしたらよいでしょうか。

H (持ってきたカードを見せながら)たぶんね、あのね、この聖フィリピン・デュシェーン(注:北アメリカの開拓地に宣教した修道女)は12歳からシスターになるって夢があって、お父さんに反対されたけど、24歳くらいでシスターにやっとなれた(注:18歳で修道会に入会、その後フランス革命で修道院は閉鎖されたが再開に向けて尽力)。夢はもうひとつあって、それはインディアン(と呼ばれたアメリカの先住民)の人たちに神様のことを教えたいっていうので、それは72歳のときにやっとできた。フランスからアメリカに行って。
聖フィリピン・デュシェーンは、神様がいつもそばにいるってことを知ってたから、ずっとお祈りをして、伝えられたのかなって。
お祈りをして。
ちょっとでもお祈りをしてみれば、いいんじゃないかな。

──お祈りをしてみれば、いいのですね。
Haさんは、お祈りをしますか?

H 毎朝してる。学校で。朝礼、お昼、お昼の終わり、お帰りの会の最後。

──では、じーじさんは、どんなふうにお祈りをすればいいでしょうか。

H 心の中で、自分がお母さんにどう思って欲しいとか思いながら口でお祈りを言ってやったほうがいい。

──具体的には、どんなお祈りを唱えたらよいでしょうか?

H だからたとえば言うとしたら。
神様、お母さんが、死にたいと思わずに、神様がいつもそばにいて、神様のくださった愛と命を大切にしてくれますように。
とかが、いいと思う。


(Haさんによる処方箋画)
お祈りしてるおとこの人がいて、その上でお祈りしてる人を見守っている神様。

じーじさん、いかがでしたか?
ちょっとでも、お祈りをしてみましょう。
神様、お母さんが、死にたいと思わずに、神様がいつもそばにいて、神様のくださった愛と命を大切にしてくれますように。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。


神様がくれた命を大切にしてほしい

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お悩みを随時お待ちしています。おこさまに相談したい方はぜひ、ペンネームと年齢、お住まいの都道府県を記入のうえ、こちらまでお悩みをお送りください。

作家・マンガ家
小林エリカ

新刊はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。他の著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)など。