おこさま人生相談室 第45回-小林エリカ

おとなのお悩み

保育園でお友達に優しくしてもらえないから楽しくない、という娘にどんな言葉をかけたらいい?

今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、橙子さん6歳です。じったんが教えてくれた花札が楽しくて、なんと3桁の足し算と引き算を、筆算でできるようになったそう。これまでの一番の手は猪鹿蝶。
大好きな保育園はもうすぐ卒園です。右下の前歯があとちょっとで抜けそうです。

おこさま紹介

お名前:橙子
年齢:6歳
生まれた場所:?
住んでいる場所:品川区
好きな食べ物:トマト
嫌いな食べ物:ケーキ
これまでの人生で楽しかったこと:花札
これまでの人生で哀しかったこと:わかんない
得意なこと:工作が好き
苦手なこと:フラフープ
好きなこと:ピアニカ 誕生日の歌とかを弾く
未来の夢:動物園のしいくいん

おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
「とうこちゃんは元気で活力があり、知的好奇心が旺盛。
知らないことがあると、わかるまで、出来るまで諦めないでやろうとする負けず嫌いの頑張り屋。食欲も旺盛、ひょうきんでダンスが好きな女の子です。」
(ひいばあちゃんより)

(橙子さん、以下T)

さて、今回のおとなのお悩みは?
 
Q 「保育園でお友達とあそぶとき『次はこういうふうに遊ぼうよ』『わたしはこれがやりたいな』って言っても、いつも聞いてもらえない。優しくしてるのに、優しくしてもらえない。だから、あそんでいても、そのことがあたまをグルグルしちゃって楽しくないの。」と言う娘。どんな言葉をかけたらいいでしょうか。(ガムさん 42歳 東京在住)

T ・・・・・・・・。
 
――橙子さんは、保育園でお友達とあそぶときにいうことを聞いてもらえなかったことはありますか?
 
T (首をふる)
 
――橙子さんは、優しくしているのに、優しくしてもらえなかったことはありますか?
 
T あんまりない。
 
――なるほど、橙子さんの保育園のお友達は、いつもちゃんと橙子さんのいうことを聞いてくれるし、優しくしてくれるのですね。
 
T (深く頷く)
 
――では、橙子さんの保育園のお友達で、いうことを聞いてもらえなかったり、優しくしてくれない、と悲しがっている子はいますか?
 
T あやちゃんとかはある。あやちゃんは、りおちゃんが好き。その子(りおちゃん)と遊びたいんだけど、ちがう子も(りおちゃんと)遊びたいっていっちゃうから。
 
――そういうときは、お友達みんなでどうするのでしょうか?
 
T その子とじゃんけんして、遊びたいのは、順番にしてた。
 
――なるほど。じゃんけんで順番にすれば、よさそうですね。
 
T でも、ゆずる子もいる。
 
――橙子さんは、どうですか?
 
T ゆずる。
 
――どうしたらゆずってあげようと思えるのですか?
 
T 勇気だす。
 
――勇気はどうやったらだせるのですか?
 
T  かっぱおやじってひとがいてね。その人から「ちえと、ゆうきと、やさしさをだせ」って手紙がきたから。
 
――かっぱおやじから、手紙がきた。
 
T らいおん組になってすぐに、手紙がとどいた。
 
――ちなみに、かっぱおやじ、という方からは、よく手紙がとどくものなのでしょうか?
 
T みんならいおん組になるとくるんだよ。
 
――らいおん組になると、かっぱおやじからお手紙がくる。かっぱおやじが直接手紙をとどけてくれるのですか?
 
T 見たことはない。手紙がおちてたりする。
 
――なるほど。ガムさんの保育園にもかっぱおやじから手紙がくるといいですね。どうしたら、かっぱおやじからの手紙をもらうことができるのでしょうか?
 
T みんなはね、くるようにね、手紙をかいてた。

――まずは、こちらから手紙を書くのですね。
 
T りょうたろうくんっていう男の子は、金のひょうたんが欲しくて、かっぱおやじに手紙をかいたらね、ほんとにきたんだよ。
あと、(遠足から)保育園にかえったら、きゅうりのたべかけがあった。
 
――それはすごいですね。
 
T 好きなものとか、手紙おいたらいい。
 
――好きなものは何なのでしょう?
 
T おにぎり。かっぱおやじの本(編集部注:絵本『でた!かっぱおやじ』安曇幸子、伊野緑、吉田裕子著)でみたよ。遠足のとき、おべんとうをちがうとこにおいておいたら、木に手紙があってね「おにぎりひとくちもらったぞ」って書いてあったんだよ。
だから、ふつうに、おにぎりおいといたら、とるとおもう。
 
――おにぎりをおけばいいのですね。
 
T あとは、きゅうり。きゅうりのほうが面倒じゃないから、きゅうりでいい。
 
――はい、わかりました。
ガムさんの保育園だけでなく、ガムさんやガムさんの娘さんにも、かっぱおやじからお手紙がきたらいいですね。
 
T うん。
 
――ガムさんとガムさんの娘さんは、まず、かっぱおやじにどんな手紙をかいてみたらよいでしょう?
 
T かっぱおやじじゃなくても、ママがいったらいい。
 
――何をいったらいいのでしょうか?
 
T 「ちえと、ゆうきと、やさしさをだして」って。
 

橙子さんによる処方箋画
矢印は言葉のやりとり。水道の蛇口を上に向けたままにしたり、水がぽたぽたと垂れているところから、かっぱおやじはやってくる。

ガムさん、いかがでしたか?
ガムさん自身がかっぱおやじから手紙をもらいたかったら、まずは手紙を書いてみましょう。それから、かっぱおやじの好きな、おにぎりかきゅうりを置いてみてください。
水のあるところの近くがよいそうです。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。


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お悩みを随時お待ちしています。おこさまに相談したい方はぜひ、ペンネー ムと年齢、お住まいの都道府県を記入のうえ、こちらまでお悩みをお送りください。

絵・取材・文
小林エリカ

作家・マンガ家。新刊はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。
著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)などがある。