絵本『からすのパンやさん』で人気の、かこさとしが遺した童話集が発売に
1967年に登場した名作『だるまちゃんとてんぐちゃん』は、後に「だるまちゃん」シリーズを生み出し愛らしいキャラクターたちにたくさんの子どもたちが夢中に。1973年の『からすのパンやさん』もまた、4羽の子からすちゃんたちが頬張るおいしいパンに思わず夢中にさせられる名作だ。絵本の金字塔としても読み継がれている本名作が、50周年を迎える今年、作者、かこさとしが自ら編んだ初の童話集「かこさとし童話集」(全10巻)が、来年3月にかけて順次刊行されている。
2018年にこの世を去ったかこさとしは、240余りの小さなお話の原稿を残していたという。未発表のものや、過去に雑誌に掲載されたもの、紙芝居のために書いたもの、まだ本にしていないお話などに、亡くなる直前まで手を加え、挿絵を描いて、自分の手で童話集として編集をしていた。なかには90歳近くになって書かれたお話もあれば、20代の頃に書かれたお話も掲載されている。
童話集の原稿は、かこさとしが亡くなるわずか1ヶ月半前に、担当編集者に託されたものだ。1巻のなかに対象年齢の異なるお話や長さの違うお話が入っていたことから、改めて編集しなおすことも検討されたが、そんなお話の並び順やまとめ方にも、かこさとし本人の考えが込められていることを尊重し、そのままの刊行を決めたという。挿絵には、A4用紙にいくつも描かれた絵がある。一つひとつの小さな絵のなかにも、生き物たちの個性豊かな表情や動きのある場面が、しっかりと感じられる。
子どもたちが次のページを急かすようなワクワクが詰まったお話、親子のこころが温かくなるような物語。「かこさとし童話集」の一つひとつから、作者が長年かけて作りあげたその想いをぜひ、拾いたい。
Text: Miki Suka