イブ・クラインの回顧展カタログ

ここ最近の世情も相まって、手紙を出す機会が増えました。わたしは自分でつくったカードを送ることが多いのですが、その度にこのカタログを思い出します。
こちらは1985年に発行されたイブ・クラインの回顧展のカタログです。イブ・クラインはモノクローム絵画を代表するフランスの画家で、とくに「インターナショナル・クラインブルー」(IKB)という自らが開発した青の染料に特許登録を行なっているほど、「青」という色にこだわりをもっていました。
そんなクラインは自らの展覧会の招待状にも妥協を許さず、1957年5月に開催された「単色者イブ」展と「純粋顔料」展のハガキには、彼自身がつくった「青の切手」を使用しています。この「青の切手」は公式のものではなく、クラインはハガキを郵便局に持ち込み、通常の郵便料金の他に、郵便局員にチップを払うことにより、正式な消印を切手の上に押してもらっていました。
切手を貼る度に、わたしもいつかは彼のように自分だけのこだわりの切手で手紙を届けてみたいと思ってしまいます。
クラインはこの他にも、ガスバーナーでパネルに吹きつけられた火の焦げ跡を作品にした「火の絵画」や、紙に直接人体をIKBで押印した「人体測定プリント」など数々の面白い作品を残しています。子どものように何ものにもとらわれることなく、自由な発想で自らの表現を追求し続けたクラインの姿勢には、見習いたいところがたくさんあるように思います。(C)