『インスタント・ファミリー〜本当の家族見つけました〜』笑いあり涙あり! 子どもたちと夫婦が家族になるまでの奮闘を描いたストーリー
アメリカのニュースやドキュメンタリーを見ていると、養子縁組で親子になった家族の姿が目につきます。養子として家庭に引き取られてくる子どもは、人種も背景も様々です。白人の両親に、黒人やヒスパニック、アジア系の子どもがいてもちっともおかしくありません。両親と養子の子どもたち、彼らはどのようにして引き合わされ、親子の関係を築いていくのでしょうか? 『インスタント・ファミリー』(2018年)はその過程を嘘のない笑いと温かい涙に包んで見せてくれるコメディ作品です。
主人公のピートとエリーは幸せな夫婦。しかしエリーは子どもなしの生活に物足りなさを感じるようになります。二人は養子縁組について考えますが、正式な家族として子どもたちを迎え入れるのには、それなりの手続きとプロセスが必要だと里親研修で学びます。彼らの訪れた機関では、養子を貰いたい家族はまず里親として子どもと暮らして、その後に正式な縁組が認められるのです。ピートとエリーは養子候補との対面イベントでティーンの子たちが“売れ残り”のように扱われるのに腹を立て、その中からリジーという十五歳の少女を選びます。リジーを引き取る条件は、彼女の弟ホアンと妹リタも引き受けること。一気に三人の子どもを迎え入れたピートとエリーは大わらわ。薬物依存症のシングルマザーに育てられてきた三人はそれぞれに気難しく、特に十代特有の問題を抱え独立心旺盛で反抗的なリジーは難物です。上手くいかないことだらけで、夫婦は「(彼らを)追い出す!」と夜に口走ることも。
「きっと、血のつながった子どもを持つ親でも共感してもらえる本音だと思う」と監督のショーン・アンダースは語ります。実は彼も三人の養子を迎え入れた経験者。「(本当の)家族を壊してしまった気がする」というエリーの戸惑いも、最初は三人にピンとこなかったピートの中に芽生える父親としての自覚も、監督自身が通過してきたことです。つまずきながらも、「家族になる」というゴールを目指して子どもと絆を深めていく夫婦を応援したくなります。
山崎まどか
15歳の時に帰国子女としての経験を綴った『ビバ! 私はメキシコの転校生』で文筆家としてデビュー。女子文化全般/アメリカのユース・カルチャーをテーマに様々な分野についてのコラムを執筆。著書に『ランジェリー・イン・シネマ』(blueprint)『映画の感傷』(DU BOOKS)『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)、共著に『ヤングアダルトU.S.A.』(DUブックス)、翻訳書に『ありがちな女じゃない』(レナ・ダナム著、河出書房新社)等。
text: Madoka Yamasaki
illustration: Naoki Ando