
没入型展覧会「大どろぼうの家」がPLAY! MUSEUMで開催中
「かの有名な大どろぼうが、最後の盗みに出かけ家を留守にした」──。そんな設定から始まる物語のような展覧会が、東京・立川の「PLAY! MUSEUM」で開催されている。その名も「大どろぼうの家」展。来場者は、大どろぼうの不在を見計らい、その私邸へと“忍び込む”ことになる。
仄暗い光に照らされたエントランスは、不穏な空気ながら、子ども達もわくわくした表情を浮かべる。回廊、応接室、隠し部屋──全8室におよぶ館内では、変装道具や偏愛コレクション、美術品の数々が出迎える。なかには「星」や「靴下」までが並び、盗品というよりは、執着にも似た偏愛コレクション。
この奇妙な邸宅を構成するのは、錚々たるクリエイターたち。たとえば、画家・伊野孝⾏が手がけた「緑の回廊」には、古今東西のどろぼうたちの肖像画がずらりと並ぶ。ブックディレクターの幅允孝が演出した「青の応接間」では、引退を考える大どろぼうの静かな葛藤を感じ取ることができる。
そして、最も幻想的な部屋が「銀の庭」だ。宇宙に憧れた大どろぼうが、谷川俊太郎の訃報を受け、15の詩を“盗み”、その言葉で庭を飾った。詩の朗読と谷川賢作による音のインスタレーションが響く空間は、異次元への入口のようだ。
ヨシタケシンスケの原画が展示された「トリコロールの回廊」では、本展と連動した新作絵本『まだ大どろぼうになっていないあなたへ』の世界にも触れられる。“誘拐されて描かされた絵本”の中には、いつか「大どろぼう」になるべき私たちを立ち止まらせ、自分自身を見つめ直すヨシタケシンスケ節の物語が綴られている。
絵本『まだ⼤どろぼうになっていないあなたへ』(ブルーシープ刊)© Shinsuke Yoshitake
さらには、漫画家・さくらももこ、陶芸家・鹿児島睦、お笑い芸人・とにかく明るい安村やくっきー!ら、ジャンルを超えた著名人たちの“盗まれた名品”も並び、大どろぼうの正体を推理するという別の楽しみ方も。随所に仕掛けられた謎や、どろぼうトレーニングといった体験型コンテンツも用意されており、子どもから大人まで、それぞれの視点で「大どろぼう」と対峙することができる。
罪とロマンのはざまで、どこか憎めないその存在。果たしてこの大どろぼうは、何者だったのか? そして、私たちが惹かれるその理由とは──。展覧会の最後にあるショップでは、ヨシタケシンスケの新作絵本に加え、『すてきな三にんぐみ』(トミー・アンゲラー)、『大どろぼうホッツェンプロッツ』(オトフリート・プロイスラー)といった名作絵本や、オリジナルのグッズも販売。ユーモアと美意識に満ちた「大どろぼうワールド」の余韻を、持ち帰ることができる。
【展覧会概要】
「大どろぼうの家」
会期:2025年7月16日(水)~9月28日(日)
会場: PLAY! MUSEUM(東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟2F)
開館時間:10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで、休館日なし)
入場料:¥1,800(一般)、¥1,200(大学生)、¥1,000(高校生)、¥600(中・小学生)、未就学児無料
電話:042-518-9625
ウェブサイト:https://play2020.jp/article/dorobou/
TOP:「⼤どろぼうの家」メインビジュアル① © Maiko Dake
PLAY! MUSEUM「大どろぼうの家」会場写真 撮影:高橋マナミ
Text: Miki Suka