
おこさま人生相談室+ 第1回-小林エリカ
おとなから寄せられたお悩みに、おこさまにお答えいただく人生相談室。今回からはティーンの方を回答者にお迎えする「おこさま人生相談室+(プラス)」が始まります!
おとなのお悩み
あらゆる場面で、とにかく決まった時間に間に合わせることが超難関です。
第1回目の相談にお答えいただくのは、唯愛さん(15歳)です。『にほんごであそぼ』(NHK Eテレ)の野村萬斎さんに夢中になったことに端を発して日本のものに興味を抱き、小学4年生からお箏、6年生から三味線を習い、いまは弓道部主将を務める唯愛さん。国際バカロレア認定学校、そして東京芸術中学(*)にも通っているそう。趣味はパンづくりと歌うこと。
*渋谷パルコで開催されている中学生のための学びの場所〈GAKU〉で開講している中学生のためのアートスクール
おこさま紹介
お名前:唯愛(ゆな)
年齢:15歳
生まれた場所:神奈川
住んでいる場所:東京
好きな食べ物:イタリアン
嫌いな食べ物:イクラ
これまでの人生で楽しかったこと:〈GAKU〉の「新しい演劇の作り方」を受講して、初めて戯曲を書いて、初めて上演したこと。戯曲のタイトルは『I/We am/are starvin』で、書いたのはゴムチップの地面とコンクリートの地面が会話する話。
これまでの人生で哀しかったこと:ちょっと生々しいのですが、ペットが亡くなってしまったとき(自分が生まれる前からお母さんが飼っていたミニチュアダックスフンドのモコ)。
得意なこと: お箏の演奏
苦手なこと: スポーツ全般(弓道を除く)
好きなこと:お箏、演技、演劇、ドラマ、映画鑑賞、読書。最近だとよかったのは「母性」(廣木隆一監督)と「怪物」(是枝裕和監督)。
未来の夢:俳優さん
おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
「名前は唯愛。彼女は真面目です、だが真面目だけじゃない、それがYunaだ。そう! 彼女はおもろい。何を隠そうおもろい。トーク力がずば抜けていて、ツッコミが的確難解ワードで5秒以内に帰ってきます。欠点がないところが唯一の欠点でしょう」(学校の友人、鳥の落花生さんより)
「タスクも全力! ふざけるのも全力! 頑張り屋さんな、おもしろジーニアスゆな!」(演劇クラスの友人、アロエベラさんより)
さて、今回のおとなのお悩みは?
Q
友達と待ち合わせをしてもどうしても約束の時間に間に合わず、待たせてしまいます。昔から約束の時間に待ち合わせするのが苦手で、寝坊しているわけでもないのになぜか家を出る時間が遅くなり、約束の時間に間に合わせるのが難しいのです。仕事もスケジュールを立てて進めているなかで特にサボっているつもりもないのに、納期直前になるとめちゃくちゃバタバタします。仕事はオーバーワークで終わらせているものの、実際は結構無理矢理です。あらゆる場面で、とにかく決まった時間に間に合わせることが超難関です。どうしたらこの状況から脱却できるでしょうか。
(「焦るのは身体に悪いからやめたい」さん43歳 東京在住)
唯愛さん(以下敬称略):うーん。え、でもわかります。
――わかりますか。
唯愛 たまに学校の課題でも、あとから、これもこれもってなっちゃって、ヤバいってなるときあるんですけど。
――課題をやってくうちに必要なことや、そこでやりたいことがあれもこれもでてきて、時間が過ぎてしまう、というパターンですね。
唯愛 この方は、おそらく、プラン組んで、そのとおりやっているんだろうけど、最後に切羽詰まっちゃうって状況………。
ってことは………仕事に関しては、色々やることはあるんでしょうけど………もちろん全部手は抜けないんですけど、どれだけしっかりやりこむかを決めて、先に絶対にやらなきゃいけないことをリストアップして………あとから、これもあれも、ってならないようにやれば、ちょっとは、マシになるんじゃないでしょうか。
――つまり、やらなくてはならないことをリストアップしてからプランを立てる、ということですね。というか、「焦るのは身体に悪いからやめたい」さん、そもそもプランの立て方に何か問題があるのでしょうか。
唯愛 たぶん、プランを立てるときに、たとえば自分がその仕事をやるにあたって、合計で何時間必要か、を見誤ってしまっているのではないのでしょうか。
――合計時間を見誤っている。
唯愛 初めのうちはわかんないと思うんですけど………たぶん「焦るのは身体に悪いからやめたい」さん、43歳だから、結構長い間やっていると思うので。ちょっと多めに時間をそれぞれとっていけばいい。
――時間をそれぞれの多めに取る。
唯愛 私自身もそうやってやっているんですけど。課題とかって、やっぱり自分が思っていても書くことが思い浮かばないとか、余計に時間がかかってしまうこともあるので。実際はたとえば5時間くらいで終わるなっていうふうに初めに思ったとしても、だいたい7時間は取るようにする。
――なるほど。はなから時間を足しておくのは良いアイディアですね。つまり待ち合わせ時間が7時だとしたら5時をイメージするということですね。
唯愛 仕事だったら、たとえば、1日の中で1時間とか。毎日ちょっとずつ足しておくとか。期限当日の2日前に終る計算でやっておけば、何かあったとしても1日はまだあるし。
――ひとつ気になるのは、お悩みを相談してくださった方のペンネームが、「焦るのは体に悪いからやめたい」さんということ。どうやらこの方は、焦っているし、それが身体に悪いし、やめたい、と考えていらっしゃるのでは。
唯愛 たぶん、普段から、期限ギリギリじゃない仕事でも、終わらないかもしれない、という心配があるから、焦ってしまっているんじゃないかな。
――「終わらないかも、間に合わないかも」という心配や不安で、常に焦ってしまっている。
唯愛 まだ時間に余裕があるなら、いったん落ちついて。普通に自分のペースをつくって、まずやっていくことが、大事なんじゃないかな。
――まずは、いったん落ちつく。
唯愛 焦っていると、よけいに仕事がはかどりづらくなるんじゃないかな。
――たしかに、焦っているゆえに、仕事も、出かける準備もはかどらないこともありそうです。
唯愛 私自身も、たまに課題あと10分(で提出)だ! みたいなときあるんですけど、そういうときって、なかなか思いつかないし。
――焦ってしまうときは、どうすればいいのでしょうか?
唯愛 ………ちょっとずつ、休憩時間はさむとか? 仕事の合間でも、ずっと仕事していないと怒られるとかそういうわけじゃないだろうから。1時間やったら10分間お茶飲むとか。
――なるほど。
唯愛 自分の好きなこととか、読書好きなら読書するとか。ずっとスマホさわるとか、ずっとゲームしてるとか、そういうのは、良くないです。そっちでも、頭使っちゃうから。
――スマホやゲームでは休まらない。ちなみに、唯愛さんは、「終わらないかも、間に合わないかも」というような場合には、どうしているのでしょうか。
唯愛 期限前日の夜中に、終わらない、ってなったとしたら、そのときは、明日、授業の休み時間の間これくらいできるって自分に言い聞かせて、明日の分はもうやらないで残して、すぐ寝て、朝起きて、学校早めに行ってやってる。
――徹夜してがんばるとか、焦って慌てる、ではない、ということですね。どうしてそんなふうに考えられるようになったのでしょう。
唯愛 中1のときはほんとに終わらないとき、徹夜してたんですよ。朝5時くらいまでやって、「はっ、寝なきゃ、でもいま寝ても起きれなくなるだけだ………」みたいなときも、あるにはあったんですけど。でも、1回、眠すぎて寝ちゃって。それで休憩時間とかに、ばってやったときがあったんですよ。で、そっちのほうが、点数が良かったんですよ。で、眠かったら寝て、次の日やったほうがいいんじゃない!? って思って。それからずっと、そうしています。
――ところで、唯愛さんが焦ること、というのはあるんでしょうか。
唯愛 そんな焦ることないです。
「焦るのは身体に悪いからやめたい」さん、いかがでしたか?
焦ったら、まずはいったん落ちついて、お茶を飲んだり、好きなことをしたり、してみましょう。待ち合わせ時間は2時間早めを想定し、仕事のプランには1日1時間、あるいは全体で2日プラスしてみてください。
おこさまのお答え
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協力:GAKU東京芸術中学

小林エリカ
作家・アーティスト。小説『女の子たち風船爆弾をつくる』(文藝春秋)が第78回毎日出版文化賞受賞、第38回三島由紀夫賞候補に。他に『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社)、エッセイ『彼女たちの戦争 嵐の中のさ さやきよ!』(筑摩書房)などの著書があり、サンギータ・ヨギの絵本『わたしは なれる』(green seed books)の翻訳も手がける。
Edit: Yasuko Mamiya