LIFESTYLEInterviews2023.12.20

エヴァ・カラヤニス/英国発子ども服ブランド〈キャラメル〉の創業者兼デザイナー

美しく機能的な子ども服を生み出す〈キャラメル〉の創業者兼デザイナー、エヴァ・カラヤニスにインタビュー

1999年に子ども服ブランドとしてロンドンで誕生した〈キャラメル〉。創業者でありデザイナーのエヴァ・カラヤニスが得意とするのは、クラシックとモダン、相反する要素を巧みに掛け合わせたデザイン。今ではウィメンズやホームコレクションも展開し、英国のみならず各国にファンを持つ。彼女の世界観を体現した、日本のフラッグシップストアである代官山店で、服づくりへの想いを聞いた。

ギリシャで法律を学び、弁護士として働いていたエヴァが、ブランドを始めたのは、24年前のこと。
「私の長女は29歳になるのですが、彼女が生まれた時に、着心地が良く動きやすい、子どもが自由でいられるキッズウェアが少ないことに気がついたんです。加えて、ギリシャからロンドンに移り住んだことで、新しいことを始めたくなって。当時はロンドンのファッションが今よりもエネルギッシュだった時代。“ここでなら、きっと自分が好きなことを表現できる”。そう思い、ブランドをスタートさせました」

〈キャラメル〉の服は上品でいて遊び心を感じさせ、クラシカルでモダン。型にはまらないそのスタイルは、ブランドの設立当初から変わらない。
「イギリスの伝統的なファブリックや柄が大好き。モダンな要素とミックスしよう、という特別な意図はなくて、ただただ自分が好きなもの、リスペクトする素材を取り入れるようにしてきただけなんです。“こうしなきゃ、これはしちゃだめ”というステレオタイプな考えは、服づくりをするうえではない方がいいわね。私がブランドを始めた頃は、カシミア素材の子ども服がなかったの。私が初めて使ったんじゃないかしら。“子ども服にカシミア!?”って驚かれたけれど、私にとってはとても自然なことでした。子どもは私とって大事な存在ですから。大切な存在を想いながら服を作ったら、暖かくて肌触りが良く、身体を優しく包んでくれるカシミアという素材を使うのは自然なことだったんです。デザインするうえで、“新しいことをしたい、退屈したくない”という気持ちはずっと持ち続けています」

インタビューを受けながらも、店内のディスプレイを手直しする手を止めないエヴァ。その様子からも〈キャラメル〉というブランド、そして自身の仕事を愛していることがよくわかる。

「誰しも好きなものに出会うとアドレナリンが出て、のめり込んでしまいますよね。私はこの仕事に出会って常にその状態なんです。デザインを考えて脳を使うほどに、新しいアイデアがどんどん湧いてくる。日々アンテナを張り巡らせて、キッズウェアに限らず、メンズやレディースの服をチェックしたり、生地を見に行ったりしてリサーチをするの。そうして自分で足を運び、目にしたものが新しいアイデアにつながる瞬間が好き。いつも何かを探しているから、新しい色の組み合わせが生まれたり、新鮮な素材を取り入れることができるんじゃないかしら。結果それが〈キャラメル〉のアイデンティティになっているのだと思う」

子どもの頃に身に纏うものは、その人の美意識に影響すると思う? と問うと、“Completely!”と即座に答えが返ってきた。
「私自身、ファッションにこだわりのある母に育てられ、その影響で小さい頃から服が大好きでした。タータンチェックのケープや、ダッフルコートを気に入って着ていたのをはっきり覚えています。母はよくオーダーメイドの服を着ていたのですが、そのフィッティングに連れて行ってもらい、何度も調整しながら服ができあがっていくのを見て、服作りは簡単ではないことを学びました。だからこそ大事にしないと、という気持ちが芽生えたと思う。親が子に上質な服を与えること、丁寧に服を扱うことを教えることは、人の美意識を育むうえで大切なこと。私は自分の子に、袖が片方しかないサンプルなんかを時々着せていたけれど(笑)。とにかく、美意識というのは親から子へ受け継ぐものではあると思うわ」

〈キャラメル〉代官山店の店内を見渡してみると、服のデザインはもちろん、セレクトされている小物、インテリアやラッピングと、細部に至るまでエヴァの美意識が行き届いている。ファストファッションが台頭するなかでも、ブランドのブレない世界観を長年保ち続け、純度が高いまま海外にまで広げていくことは、簡単なことではないはず。
「そうね、だから常に動き続けてきたかもしれない。ライフワークバランスを整えようとはいつも思ってはいるけれど、難しいわね。子ども服って、サイズの幅も広いし、ビジネスとしても難しい分野。でも私はお客様が好きで、子どもが好き。大切なお客様に良いものを提供したいし、楽しんでもらいたい。それが私の喜びなんです。仕事を辞めたいと思ったことも、正直ありますよ。でも、お客様が喜んでいる顔を見ると、もう嬉しくて、やっぱりまたやりたくなっちゃうの。その繰り返しなのよね。子ども服が安く買える時代だけど、良いものを大切に着る人はちゃんといる。特に日本には、上質なものを長く使う文化が根付いていると感じます」

エヴァが、母から受け継いだ服への愛。そこから生まれた〈キャラメル〉というブランドは、彼女とって子どものような存在なのだと話す。
「24年間子どものように育ててきて思うのが、自分の人生と共に〈キャラメル〉を終わらせたくないということ。より良いものをお客様に届けたいという気持ちや、私やスタッフが大事に育ててきた世界観。そういったDNAをちゃんと引き継いでくれる人と出会えたら嬉しいですね。まだまだアイデアが湧いてくるから、先の話ではありますが、ブランドが歴史のようになっていくといいな、と思っています」
 
 
 
 

Eva Karayiannis(エヴァ・カラヤニス)
〈キャラメル〉デザイナー・創業者。ギリシャ出身。アテネで法律を学び、ロンドンで弁護士として活躍。「子どもたちが自由でいられる服を作りたい」という想いのもと1999年〈キャラメル ベビー&チャイルド〉を創業。のちにブランド名を〈キャラメル〉に改め、現在は子ども服のみならず、ウィメンズウェア、ホームウェアも展開するライフスタイルブランドに。ロンドンではノッティングヒルをはじめ4店舗、そのほかパリ、東京・代官山、新宿伊勢丹店にも店舗を構える。

 
 
 

 
 
 

キャラメル代官山店

住所:東京都渋谷区猿楽町29-10 ヒルサイドテラスC
営業時間:11時〜18時
定休日:なし
TEL:03-5784-2345

https://caramel-japan.shop

Photo: Keisuke Kitamura
Interview&Text: Yasuko Mamiya

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