おこさま人生相談室 第72回-小林エリカ
おとなのお悩み
いま気になる人がいるのですが、年齢がとても離れていて(彼は55歳)恋愛感情をもって接していいものか迷っています。
今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、トワノさん7歳です。
はじめて映画館に観に行った映画(注:三歳時)は大森立嗣監督の『日日是好日』。現在はドラマ『僕の姉ちゃん』(テレビ東京)にはまっています。
ジャニーズSixTONESでは、田中樹くんが好き。岩波少年文庫では、『星ぼしでめぐるギリシア神話』と『点子ちゃんとアントン』が好き。
おこさま紹介
お名前:トワノ
年齢:7歳
生まれた場所:久我山
住んでいる場所: 世田谷
好きな食べ物:ぶどう
嫌いな食べ物: ゴーヤ
これまでの人生で楽しかったこと:バレエの発表会でアンダーソンの音楽で「タイプライター」を踊った
これまでの人生で哀しかったこと: あんまりない
得意なこと: ダンスを自分で考えたりする
苦手なこと: わかんない
好きなこと: ダンス (バレエをしたり、コナン・グレイ「Disaster」にあわせてオリジナルのダンスを踊ったり)
未来の夢: 学校の先生 お勉強好きだから
おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
とわちゃんは、やさしくて、いっぱい長そうな本をもっていてすごいと思います。
わたしが思いつかないようなあそびをかんがえるのでおもしろいです。
ずっとなかよくしていたいな。
(幼稚園から親友のそらさんより)
さて、今回のおとなのお悩みは?
Q
いま気になる人がいるのですが、年齢がとても離れていて(彼は55歳)、恋愛感情をもって接していいものか迷っています。
人としてはとても魅力を感じているのですが、将来的には結婚をして家庭を持ちたいと思っているので、こんなに歳が離れていてうまくいくか心配です。
同年代のカップルよりも寿命的に長くは一緒にいられないであろうことを想像すると、その後の人生が不安にもなります。
好きな気持ちを大切にしたいとは思うのですが、これからどうしたらいいでしょうか?
(オコジョ 30歳 東京在住)
(トワノさん、以下T)
T うーん………。
──どうするのがいいでしょうか。
T むずかしい………なんだろ………。
──おこじょさんは30歳、彼さんは55歳なので、彼さんの方が25歳年上ということですね。
T うーん………。
──もしトワノさんが25歳上の人を好きになったら、迷いますか?
T ………………迷わない。
──迷わない。どうして、迷わないのでしょうか?
T え、だって………もったいないもん。
──もったいない。
T うーん………。
──何がもったいないのでしょうか。
T うーん………。
──彼さんや、好きな気持ちを大切にしないともったいない、ということでしょうか。
T うーん………だって、そのまま結婚しちゃったらさあ、さきに死んじゃったら、かなしいもん。
──ん?!結婚は、しないほうがいい!?
T かなしくなっちゃうから。
──つまり、もったいない、というのは、彼さんと結婚してしまったらもったいない、ということですか?
T そう。
──なるほど。
T だってさ、あの、結婚しなくてもさ、好きな人が死んじゃったらさ、かなしいじゃん。でも、結婚して、家族になって死んじゃったほうが、もっとかなしいもん。
──なるほど、そうかもしれません。では、好きな気持ちは、どうすればよいのでしょうか?
T 結婚した気分になればいい。
──結婚した気分になる。そんな気分には、どうしたらなれるのでしょうか?
T 一緒に映画観たりとか。
──そうしているうちに、実際に結婚したくなってしまったら、どうすればいいのでしょうか?
T 結婚してないことを思い出さなければいい。
──結婚していないことを思い出さない。
ところで、結婚しないまま、ずっと一緒にいる、というのはいいのでしょうか?
T (頷く)
――ずっと一緒にはいていいけれど、結婚はダメ。
T 結婚したら家族になるから。もっと相手のことが大事になるから。だから、結婚しないほうが………。
──ちなみに、恋愛感情は持ってもいいでしょうか?
T (頷く)
──でも、結婚はダメ。
T (頷く)
──ちなみにトワノさんにとって結婚とは、何なのでしょうか?
T 家族になる。
──オコジョさんは、将来的には結婚して家庭を持ちたいようです。
T 他の人と結婚するけど、その人(彼さん)とは一緒にいればいい。
──どうしてそう思うのですか?
T だって、その人、好きなんだもん。
──結婚と、好きは、別。
ひょっとすると、たとえ短くとも、たとえ死んでしまっても、好きだったら家族になりたい、結婚したい、という人もいるかもしれません。けれどトワノさんがそう考えないのは、なぜですか?
T 別に結婚しなくても、一緒にいられるから。
オコジョさん、いかがでしたか?
まずは彼さんと結婚した気分になって、一緒に映画を観たりしてみましょう。
結婚してないことを思い出さなければ大丈夫。
そのまま結婚してしまったら、もったいない、そうです。
別に結婚しなくても、一緒にいられます。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。
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小林エリカ
近著はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。他の著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)など。