おこさま人生相談室 第21回-小林エリカ

おとなのお悩み

大人になるにつれて、夜見た夢、面白い夢ほどすぐ忘れてしまいます。

今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、ナナさん(4歳)。幼稚園年中バラ組、魔女学校は4組です。
京都から東京の叔母さんとお祖母さんのお家へ、お姉さんのソラさんと一緒に2週間遊びにきています。
きのうの夜はお風呂でしあわせになれる魔法のスープをつくってくれたそうです。

おこさま紹介

お名前: ナナさん
年齢: 4歳
生まれた場所: どこ?
住んでいる場所: おうち
好きな食べ物: キュウリ
嫌いな食べ物: 葉っぱ
これまでの人生で楽しかったこと: 夢でもいい? 虹色のトンネルをくぐってお花畑の不思議な国にいったらいきなり花がキャンディーに変身した
これまでの人生で哀しかったこと: 夢ならあるけど、夢の中でいちばん仲良しのお友だちがね、どこか遠いとこに引越しちゃってそれでまた友だちができて、またさいごにみんないなくなっちゃったの
得意なこと: 夢
苦手なこと: 夢の中でごそごそって音がして、行こうと思っても行きたくなかった、それがなにだったかというとクマ
好きなこと: 夢でベンチにすわってたらいきなり自動販売機がぽんてでてきて、その自動販売機でのどがかわいてたから紅茶をかったの、それでその自動販売機でかったとたん、その自動販売機からいろんな好きなどうぶつがでてきた(うさぎとか、しかとか、へびとか)
将来の夢: なりたいのは宇宙飛行士とケーキやさん

おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
慎重だけど、すごい気が強くて、すごいひょうきん。
けっこう石橋叩いて渡るみたいなとこあるよね。
いろんなことに自分のこだわりがあるんだと思うな。
(叔母のともちゃんより)

(ナナさん、以下N)

さて、今回のおとなのお悩みは?

Q 大人になるにつれて、夜見た夢、面白い夢ほどすぐ忘れてしまいます。どうしたら朝まで覚えていられますか。
(ohamaさん 38歳 東京在住)

N N ⋯⋯。

──ちなみに、ナナさんは、夢を覚えていますか?

N (うなづく)

──きょうはどんな夢を見ましたか?

N あのね、くじらのうえにのっかってあそんでたら、いきなりね、あの、起こされちゃった。

──くじらのうえに乗っかっていたのに、起こされてしまったんですね。ナナさんは、どうしてその夢を覚えていられたのでしょうか?

N ⋯⋯。

──ところでナナさんは、夢のつづきも見ることができますか?

N 見れたりする。

──どうしたらそんなことができるでしょうか?

N ただいうだけ。

──ただいうだけ?

N すきなものをいえば。

──なるほど、ただすきなものをいえば、その夢を見ることができるんですね。

N そう。

──ではこのohamaさんが、朝まで夢を覚えていられるように、ななさんから何か教えてあげられることはあるでしょうか。

NN あるかなあ⋯⋯。

──何かひとこと。

N (耳に小声で囁く)ほしゅわほしゅわは〜

──?

N だいじょうぶの、魔法。

──だいじょうぶの、魔法なんですね。このおまじないを唱えれば良いのでしょうか。

N あのね、魔女のね、学校は、夜にりょこうにいってならってるの。

──ナナさんは、魔女の学校へも、通っているのですか?

N そう。

──いつからその学校へ通っているのですか?

N あのね、ふゆぐらいから。

──なるほど。

N 魔法のステッキで、時間だよってピンクのとこが光って、それから花のマークに足をのっけて、行けるの。ごはんたべてる途中に、魔女の学校がひらいちゃうかもしれないの。

──ところで、そこで、ななさんは、何を習ったのですか?

N きのう?

──あ、では、きのう。

N あのね、水晶玉をうかべる。

──水晶玉をうかべられるのですね。では、おとといは?

N え?きのうのきのう?あのね、くじらにはねをはやせる。

──魔女の学校は毎日あるのですか?

N うん。でも休みのときもある。
実はね、魔女の学校はね、ちょっとしかやってないんだよ。
でも、旅行のときはいっぱいやってるときもあるけど。

──そちらには、おともだちもいるのですか?

N うん。小さい子のクラスもあるし、おとなもいる。

──魔法は上手になりましたか?

N うん。全部得意。

──ちなみに、ななさんが一番得意な魔法は何ですか?

N 得意なのは五個くらいある。
最初のは、水晶玉をうかべるじゅつ。
次は、風をよぶじゅつ。
次は、水をよぶじゅつ。
森をつくるじゅつ。
あとひとつ、ステッキをつくるじゅつ。

──ところで、ohamaさんも魔女学校へ行きたいと思ったら、行けるのでしょうか?

N 魔女学校の勉強習えばいけるよ。最初はいえで、魔法を知ってる人におしえてもらって、なれたら、魔女の学校にいけるよ。それから家でステッキつくるの。

──魔法のステッキをつくるのですね。

N アクアビーズで。それで魔法をかけるの。

──もしもその魔法のステッキがなくなってしまったら大変ですね。

N つくりなおすのたいへんやねん。

──つくりなおすこともできるのですか?

N つくるのは10分くらいかな。


(ナナさんによる処方箋画)
くじらにはねがついていて、お空、海、とおくの草の上の家と、倒れた木(ナナさんのきのうみた夢)

ohamaさん、いかがでしたか?
どうやら朝まで夢を覚えていられるようにするには、魔女学校へ通うのがよさそうです。
最初はいえで、魔法を知ってる人におしえてもらいましょう。魔法のステッキも10分くらいでできるそうですよ。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。


ほしゅわ ほしゅわ〜

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お悩みを随時お待ちしています。おこさまに相談したい方はぜひ、ペンネームと年齢、お住まいの都道府県を記入のうえ、こちらまでお悩みをお送りください。

絵・取材・文
小林エリカ

作家・マンガ家。新刊はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。
著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1~3巻(リトルモア)などがある。