この冬、大切な人に贈りたい美しい本3選

こころに残ることばの数々、あたたかな気持ちになるストーリー。ホリデーシーズンの今、家族や大切な人にこんな特別な本を贈りたい。MilK MAGAZINE JAPON編集部が選んだ、ギフトにしたい美しい本3冊をご紹介。

___________________________________________________________________

クラフトマンシップの精神を次世代へと伝えるエルメスの絵本、第二弾
『エルメスのえほん くるくるとステッチ』

©100%ORANGE/HERMÈS/KODANSHA

ものづくりへの愛が込められた、エルメスの絵本。前作『おさんぽステッチ』に続き舞台となるのは、エルメス第一号店として長い歴史を持つパリのフォーブル・サントノーレ24番地のアトリエ。愛らしい糸巻きの「くるくる」を主人公に、さまざまな道具たちとものづくりの喜びを分かち合う成長の物語が繰り広げられる。前作同様、イラストレーションやグラフィックを手がける絵本作家100%ORANGEによる、おしゃれで愛らしいキャラクターたちも見どころ。小さな糸巻の視点を通して感じられる、ものづくりへの温かな心、そして贈り物の喜びを家族みんなで共有したい。

©100%ORANGE/HERMÈS/KODANSHA

©100%ORANGE/HERMÈS/KODANSHA

エルメスのえほん くるくるとステッチ

作:100%ORANGE 
価格:¥2,600(税別)
(講談社刊 2024年10月)

___________________________________________________________________

子どもたちの平和を願い続けた画家の、やさしさと生命力のあふれる画集
『ちひろの子どもたち ハッピータイム CHIHIRO’S CHILDREN Happy Time』

とろけるように混ざり合うやさしい水彩絵の具で描かれた、つぶらな瞳の子どもたち。一目で“いわさきちひろ”とわかるあたたかみに満ちた絵には、まるで癒しの効果があるよう。55年の生涯の中で、たくさんの子どもを描き続けた画家・いわさきちひろの作品を没後50周年の節目に一冊にまとめた、貴重な画集。母との時間、友達とはしゃぐ姿、家の中でのひと時など、今まであまり見ることができなかった雑誌や広告、教科書などの挿絵から、水彩画や線画で描かれた子どもたちの絵が、大胆なレイアウトでまとめられている。ピュアな表情をした子どもたちの姿は、私たちに懐かしくほのぼのと幸せになれる瞬間を届けてくれる。帯には黒柳徹子のメッセージ、あとがきには同じ画家として活躍する孫の松本春野の手記が収められている。

左/母の日(1972年) 右/少年と母(1970年)

左/きまった ばしょに(1965年) 右/そうじをする子ども(1956年)

左から時計回り/水鉄砲で遊ぶ男の子(1970年頃) 箱に入る男の子(1972年) のびをする子ども(1960年代) 犬を抱き上げる少女(1970年) 白い鳩を持つ男の子(1960年代半ば) 指遊びをする女の子(1960年代後半)

ちひろの子どもたち ハッピータイム CHIHIRO’S CHILDREN Happy Time

著者:いわさきちひろ
価格:¥2,000(税別)
(グラフィック社 2024年11月)

___________________________________________________________________

谷川俊太郎の言葉が、工芸品のように特別な装丁の一冊に
『あたしとあなた 谷川俊太郎』

今年の11月、92歳でこの世を去った詩人・谷川俊太郎。1952年に『二十億光年の孤独』でデビューしてから、亡くなる直前まで数多くの詩を残しただけでなく、絵本や作詞、翻訳でも広い世代の読者に愛された日本を代表する詩人だ。生きることのおもしろさや大変さ、尊さ、死や戦争までをテーマにした作品も多い中、日本語の美しさや楽しさにも触れられる一冊をぜひギフトに。83歳の出版当時、谷川が「メディアに氾濫するコトバの洪水に食傷しているうちに、思いがけず自分にとってはちょっと新鮮な発想の短い詩群が生まれた(―あとがきより)」と残すように、37篇の書き下ろしの詩全てに、さまざまな〈あたし〉と〈あなた〉が登場する。そんな谷川の特別な言葉たちに寄り添うように、ブックデザイナーの名久井直子は、この本のためだけの特別な紙を制作。日本の職人技とも呼べるしっとりとした質感の鮮やかなブルーの高級越前和紙に刻まれた、今は亡き詩宗の流れるような言葉の数々こそ特別な贈り物となるはず。

あたしとあなた 谷川俊太郎

著者:谷川俊太郎
ブックデザイン:名久井直子
価格:¥2,000(税別)
(ナナロク社刊 2015年7月)※増刷準備中。2025年春、発売予定

Text: Miki Suka