谷川俊太郎&堀内誠一の『マザー・グースのうた』
小さな時に意味がわからないながらも「音」として覚えて、今も忘れられないうたや詩ってありませんか? たとえば大好きだったミュージカルの歌詞やCMソングなど(ときに大いなる覚え違いをしていることもありますが)。
マザー・グースの詩もそんなふうに最初に「音」として覚えたもののひとつで、右のらくがきだらけの方は子どもの頃に使っていたマザー・グースの本で、左の方は大人になってからちゃんと読んでみたくなって手に入れた『マザー・グースのうた 第1集』。
ご存知マザーグースは、イギリスの伝統的な童謡集ですが、その内容は摩訶不思議なものがたくさん。子どもの頃特に気に入っていたのは、「ハバードおばさん」(p.40)です。「ハバードおばさん とだなさがした いぬにほねをやるために」からはじまり、ハバードおばさんがいぬのために奔走する詩ですが、ちょっと人を小馬鹿にしたようないぬの態度がおもしろい。「ソロモン・グランディ」(p.20)は、月曜から日曜の1週間で描かれる人の一生のあっけなさにちょっとこわさも感じながら、早口言葉のように一気読みするのが小気味良い。あるいは、「ばらはあかい すみれはあおい おさとうはあまい そうしてきみも」(p.5)というキュートで美しい詩も。
それらの谷川俊太郎さんの訳詞には、堀内誠一さんによるイラストがふんだんに添えられていて、詩画集としても一生そばに置いておきたい一冊です(ちなみに、子どもの頃にハバードおばさんの詩が好きだった理由のひとつは、絵のいぬが大好きだったスヌーピーにどことなく似て見えたからでした)。
この不思議で魅力的なことばの世界を、ぜひ大人にも子どもにも味わってもらいたいなあと思います。(K)