おこさま人生相談室 第64回-小林エリカ

おとなのお悩み

父親が治るのが難しい病気になってしまいました。 

今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、俊太郎さん8歳。
スノーボードで左手を骨折し、二泊三日の手術と入院を終えてきました。学校はコロナで学級閉鎖中です。
連作している自作マンガのタイトルは「ひろいもん」(1話「ねつすいとりき」2話「南極いっしゅんき」3話「ひろいもんとドラえもん」)。

おこさま紹介

お名前:俊太郎
年齢:8歳
生まれた場所:玉川病院
住んでいる場所:世田谷区(以下住所なので略)
好きな食べ物:炭水化物
嫌いな食べ物:トマト、ツナ、ピーマンはまあまあってかんじ
これまでの人生で楽しかったこと: 人生?! 一番は生まれてきてうれしかったってことかな
これまでの人生で哀しかったこと:骨折した
得意なこと:運動、サッカー
苦手なこと:細かい作業(作りものするときネジとかそういうのが苦手)
好きなこと:サッカーだよ!ポジションはミッドフィルター、応援しているのはリバプールFC、静岡学園とか色々
未来の夢:サッカー選手、宇宙飛行士、海賊(いい海賊)
 
おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
ドジな声をするのが苦手でサッカーが好き。
前にあった事を覚えて話してくれる。
禄はしゅんの笑う姿が、すき。
大きくなったらしゅんが船長で、禄はその船のクルーになるんだ。
どうせ船長になるからおれは負けても仕方ない。
船長になる男はそれぐらいできなきゃだめだ。
(友人の禄さんより)

(俊太郎さん、以下S)

さて、今回のおとなのお悩みは?

Q 父親が、治るのが難しい病気になってしまいました。仕事をしていても、人とごはんを食べていても父のことを考えて悲しい気持ちになります。どうしたらいいと思いますか。 
(とろろさん 40歳 東京在住)

S うわぁー難しい!!!

──そうですね。

S 山とかそういうの。頭がほぐれて、気持ちがやわらぐみたいでいいんだ。
けど、もし、そういうところに行きたくない場合は、まあ、頭を自分で揉むとか、そういうのを自分でやったら、頭が固くなるとかはないと思う。

──山へ行ったり、頭を揉んだりするといいということですね。

S 単純なことですが。

──俊太郎さんは、どうしてそうするといいと思えたのですか。

S 頭を揉むとかは、よくマンガでたとえがあるから知ってる。自然の環境は、ママと山とかよく行ってるから。

──自然の環境や山へ行くと、どのようにいいのでしょうか。

S いい景色とかがあって、ほんわかした気持ちになれるっていう。
 
──ちなみに、どこがおすすめですか。

S 尾瀬。龍宮小屋あたりに行って欲しい。

──もしかすると、とろろさんは、悲しい気持ちに囚われてしまっているのかもしれません。

S 悲しい気持ちを持っているのは悪いことではない。
悪いことではないから、とぎれとぎれには思ってはいいんだけど。だって、大事な人って思ってるから、抱えてるわけじゃん。
思ってはいいんだけど、そのことをなるべく頭には入れないで、考えてほしいのね。健康、って頭の中では空想描いて、心のなかで言うだけで、少しは気分が変わると思うのね。
 
──悲しい気持ちは持ってもいいけれど、父親さんが健康な姿を想像してみて気分を変えたりするのも効果的、ということですね。
 
S 悲しい気持ちは絶対持ってはいいんだけど、あまり、ずーっと持っては欲しくない。ずーっととらわれないほうがいい。
 
──悲しい気持ちに囚われすぎないことが重要、ということですね。
 
S さっきいったように、深呼吸とか、自然に入ることが大事。
リラックスっていうのをまず、心に描いたほうがいい。
そういうことをすると、悩みに取り囲まれない。
 
──ちなみに、俊太郎さんも悲しい気持ちに囚われてしまうことはありますか?
 
S 試合に負けたこととか。ドッチボールの試合とか、サッカーの試合とか。せっかく決勝まですすめたのに、準優勝で終わるっていうのがすごいやだった。
そういうときは、深呼吸とかも必要だから、そういうことをいっぱいやると、心が落ち着く。
 
──そもそも、とろろさんは、父親さんが、治るのが難しい病気になってしまったということをどのように受けとめればいいのでしょう。
 
S 病気が治んないとしても、もし病気で亡くなることがあったら、その人とできるだけ死ぬ直前までいたいって思うかもしれない。
 
──たとえやがて亡くなってしまうとしても、俊太郎さんなら、その人と一緒にいたいと思う、ということですね。
 
S たとえば、もしALSとかになってる可能性なければ、多分、喋るとか、文字を書くとかはできると思うのね。だから、手紙でやりとりとか、電話でやりとりとか。そういうかんじで、声を掛け合うってのが、本当に大事なのね。
 
──どうして声を掛け合うことが大事だと思うのですか。
 
S そういうことを、経験してるからかな。
 
──俊太郎さんは、どのような経験をしたのですか?
 
S 友だちとかが怪我になってるときってさ、結構大丈夫かなって思うのね。だから、声を掛け合うことが大事だから。
運動会とかでも、そう。サッカーでも、声を掛け合うことが大事だからね。

(俊太郎さんによる処方箋画)

1.「ソワソワ」2.なやみのおばけがそばに漂っている「ギャー」3.「どーすればいいんだ」4.「そうだ、だれかにそうだんすれば!」5.「ズーン そうだんするあてがない」6.「そうだ、おこさま人生そうだんしつにそうだんしよう」7.「イエーイ とい合わせたらそうだんできるぞ」8. おわり

とろろさん、いかがでしたか?
父親さんと、声を掛け合いましょう。
悲しい気持ちは持っていてもよいそうです。でも、囚われすぎないように、リラックスを心に描きましょう。
尾瀬の龍宮小屋へ行くのもおすすめだそう。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。


声を掛け合うことが大事

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お悩みを随時お待ちしています。おこさまに相談したい方はぜひ、ペンネームと年齢、お住まいの都道府県を記入のうえ、こちらまでお悩みをお送りください。

絵・取材・文
小林エリカ

新刊はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。他の著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1〜3巻(リトルモア)など。