金属の可能性を五感で体験。エルメス財団「スキル・アカデミー」がこの夏も開催
2021年にスタートした、エルメス財団の「スキル・アカデミー」は、自然素材に光を当て、職人技術や手わざの伝承、拡張、共有を目的としている。これまで「木」「土」をテーマに開催されてきた本プログラム。今年は3つ目の素材として「金属(メタル)」を取り上げ、春と夏の2期にわたって体験プログラムを展開する。
2026年7月15日(水)〜8月16日(日)まで、東京・葛飾にある「SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)」を舞台に開催されるのは、実験的な視点で金属と向き合う3組のアーティストによるグループ展「結合」。また同会場では、この春、中高生たちが5つのプログラムのワークショップで学んだ成果も展示形式で公開される。

Leonor Serrano Rivas, Installation view of Here Be Dragons, 2025 | Courtesy of the artist and carlier | gebauer | Photo: Andrea Rossetti
スペイン出身で現在も同地で活動を続けるレオノール・セラーノ・リヴァスは、無機物である金属と植物という有機物が融合したハイブリッドな生態系を表現。特殊な加工によって溶け出した金属が、朽ちゆく植物を皮膚のように包み込み、植物を宿主として結晶化していく様子を詩的なオブジェへと昇華させる。

Leonor Serrano Rivas, Where We Expect to Find Flowers n17, 2025 | Courtesy of the artist and carlier | gebauer | Photo: Roberto Ruiz
一方、ロンドン出身のダニエル・コッペンと、福島出身のマルヤマ・サキによるアート・デザインユニット「Playfool」は、金属の甲羅をまとったカメ型ロボットを発表。周囲の環境に反応しながら自律的に動く作品に触れることで、普段は意識することのない金属の性質や振る舞いを体感することができる。

Playfool, Installation view of a re(imitation) of Life, 2024 | Courtesy of the artist | Photo: Naoya Toita

Playfool, Installation view of a re(imitation) of Life, 2024 | Courtesy of the artist | Photo: Naoya Toita
さらに、東京出身の花火師である島田清夏は、金属を熱することで生まれる光の色彩に着目。花火を切り口に、物質としての金属、火薬学、文化的背景までを横断的に探究し、メディウムとしての花火を再構築することで、新たな視点を提示する。

Sayaka Shimada, here/there, 2025 ©Sayaka Shimada

Sayaka Shimada, R9+C9QP, 2020 | Courtesy of the artist | Photo: Great the Kabukicho
会場では、この春、10組の専門家とともに5日間のワークショップを体験した中高生たちの成果も紹介。橋やタワーなど身体のスケールを超えた構造物から、はさみや時計といった道具、さらには彫刻やダンス、音楽まで、多彩な分野を通して「金属のスキル」に触れた子どもたちの言葉や制作物、実際に使われた道具、映像記録などが展示される。素材を学ぶだけではなく、その向こうにある創造性にも目を向ける、貴重な機会となりそうだ。

Leonor Serrano Rivas, Where We Expect to Find Flowers n3, 2025
Courtesy of the artist and carlier | gebauer | Photo: Roberto Ruiz
上記の展示会期中には、アーティストや職人から直接学べるワークショップも開催。10歳以上を対象に、金属という素材に触れながら、ものづくりの奥深さを体験できる。体感型のワークショップ「スチールの足場で、建築する」と、「素材がジュエリーになるまで」の詳細と応募は、公式サイトまで!
スキル・アカデミー
金属に学ぶ、五感で考える:夏のオープンクラス
会場:SKAC (SKWAT KAMEARI ART CENTRE)
住所:東京都葛飾区西亀有3-26-4
開催期間:2026年7月15日(水)~8月16日(日)
開館時間:11:00~19:00
休館日:月、火 ※7/20(月・祝)、8/11(火・祝)は開館
※会期中、7月18日・19日には、参加アーティストによるアーティスト・トークも開催される予定。申し込み・詳細は、こちらから

本プログラムの理解をさらに深める関連書籍も刊行中。フランス版をもとに、日本独自の論考やインタビューを書き下ろしで収録し、日本の金属技術の歴史や刀、自在置物、現代アート、建築、音楽まで、多角的に「金属」を見つめ直す一冊に仕上がっている。展示やワークショップ体験とあわせて、ものづくりの背景にある文化や技術への理解がさらに深まりそうだ。
『Savoir & Faire 金属』(岩波書店、2025年)
TOP: Leonor Serrano Rivas, Where We Expect to Find Flowers n3, 2025
Courtesy of the artist and carlier | gebauer
Photo: Roberto Ruiz
Text: Miki Suka