動物と家族の記憶をめぐる物語。写真家シャルロット・デュマの個展が開催中
写真家シャルロット・デュマの個展「声が届いて/絵筆を手にとって」が、現在「小山登美夫ギャラリー京橋」にて開催中。会期は、4月11日(土)まで。
1977年オランダ生まれ、現在はアムステルダムを拠点に活動するデュマは、これまで馬や犬など、人間と長い時間を共にしてきた動物たちをテーマに作品を制作してきたアーティスト。写真や映像を通して、動物の存在が持つ歴史や文化的な意味を静かに見つめながら、そこに自身の記憶や家族の物語を重ねていく表現で知られている。

©Charlotte Dumas, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
本展において、新シリーズ「Entendue(声が届いて)」が発表された。この作品は、デュマ自身の父親との記憶や、娘を持つ作家自身の立場を、象の家族の姿を重ね合わせながら、人と動物、親と子という関係を見つめ直すプロジェクトだ。
幼い頃、デュマは父とともに動物園へ通い、象のスケッチを描く時間を共有していた。父ピーターは細密な水彩画を制作するグラフィックアーティストで、長く娘の創作に影響を与えてきた存在。そんな父の死後、デュマは彼が使っていたカメラを手に、かつて共に訪れた動物園で象の姿を撮影する。

Photo by Tomoyuki Eguchi ©Charlotte Dumas, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

©Charlotte Dumas, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
大人の象は画面の中で断片的に現れ、群れの中の子どもの象は全身を見せる。そこには、弱さと力強さをあわせ持つ生命の姿が浮かび上がる。象は仲間を思いやり、死を悼む行動をとることでも知られる生き物。その家族のあり方は、人間の家族の記憶と静かに響き合っていく。
展覧会では、この写真作品に加え、初公開となる新作映画『The Brush in Your Hand(絵筆を手にとって)』も上映される。映画は、デュマ自身、父ピーター、そして末娘アイヴィという三世代の姿を軸に、家族の中で受け継がれていく創造性や記憶を描いている。

©Charlotte Dumas, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
娘のアイヴィが段ボールで小さな部屋を作る姿や、父が残した絵画や日記が登場し、世代を越えて重なり合う「作る」という行為が、過去と現在を静かに結びつけていく。また、映画に登場する段ボールの部屋を用いたインスタレーション作品も会場に展示されている。そこには、誰かが暮らしていた気配が宿るような空間が立ち現れ、家族の記憶をたどるような体験へと鑑賞者を導く。

©Charlotte Dumas, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
動物と人間、親と子、記憶と創造。写真家デュマにとっての私的なテーマでありながら、見るものへの温かな共感を呼び起こす展覧会。親から子へ、そしてまた次の世代へ。家族の中で静かに受け継がれていく「まなざし」を、あらためて感じさせてくれそうだ。

©Charlotte Dumas, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

Photo by Tomoyuki Eguchi ©Charlotte Dumas, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

©Charlotte Dumas, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
【展覧会概要】
シャルロット・デュマ「声が届いて/絵筆を手にとって」
会期:2026年3月7日(土)〜4月11日(土)
会場:小山登美夫ギャラリー京橋(東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 3F)
時間:11:00〜19:00
閉館日: 日、月、祝
入場料:無料
展覧会の詳細は、こちら
TOP:©Charlotte Dumas, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
Text: Miki Suka