『赤い風船』『白い馬』— 70年の時を超えてスクリーンへ

世界中のクリエイターを魅了し続けてきたフランスの映画作家、アルベール・ラモリス。その代表作『赤い風船』と『白い馬』が、時をこえて4Kデジタル修復版として甦り、11月14日より、全国の映画館で順次公開される。

パリの街角で、少年パスカルはふわりと宙に浮かぶ赤い風船と出会う。まるで心を宿しているかのように少年のあとをついてくる風船と友達になり、やがて好奇と嫉妬の視線を向ける大人や子どもたちのあいだを逃げるように、街を駆け抜けていく。CGも機械仕掛けもない時代に実現した、奇跡のような撮影だ。舞台は第二次世界大戦後のパリ。やわらかな風と淡い光に包まれた、往年のパリの姿を味わえるのもこの映画ならでは。

Crin Blanc/1953年/フランス/フランス語/40分/⽩⿊/スタンダード/⽇本語字幕:星加久実/©Copyright Films Montsouris 1953

『白い馬』では、南仏カマルグの大湿地帯を舞台に、少年フォルコと野生馬との静かな信頼が描かれている。荒波のように風が吹き抜ける草原、湿地に差し込む光、自由を知る白馬たち。人と動物、言葉を持たない者同士が交わすまなざしの強さに触れることができる作品だ。少年と風船。少年と馬。その関係はあまりにもシンプルで、まっすぐで、言葉にしてしまうとこぼれ落ちてしまうものばかり。どちらの映画にも描かれている、純真無垢な心を持つ子どもの中にある“信じる”という行為は、私たちの心をそっと撫でてくれるようなやさしさだ。

『赤い風船』では、第29回アカデミー賞脚本賞をはじめ、第9回カンヌ国際映画祭短編パルム・ドール賞及び1956年度ルイ・デリュック賞を受賞。『白い馬』では、第6回カンヌ国際映画祭短篇グランプリ、1953年度ジャン・ヴィゴ賞を受賞した、“映像詩人”と呼ばれたアルベール・ラモリス。この度のデジタルリマスター版を手掛けたのは、そんな彼の背中をもっとも間近で見続けてきた、息子のパスカル・ラモリス。『赤い風船』では主人公パスカルを、『白い馬』では主人公の弟を演じた彼は、幼い頃から父親が作り出す光と構図を見つめ続けてきた人物だ。

Le Voyage en Ballon/1960年/フランス/仏語/84分/カラー/スコープ©Copyright Films Montsouris 1960

「4Kは、映画の細部までかつてないほど深く再現します。色彩のニュアンスが増し、映像はより鮮明に」と、パスカルはコメントを寄せている。当時の意図に限りなく近いかたちで、フィルムの奥に沈んでいた細やかな色の揺らぎや、当時の光を再現した映像美。70年を経たいま、むしろ真新しさをまとった名作を、ぜひスクリーンで味わいたい。

本編上映後には、公開記念・特集上映<映像詩人アルベール・ラモリスの知られざる世界>として、同じくアルベール・ラモリス監督作品で、4Kデジタル修復された代表作3作品(『小さなロバ、ビム』、『素晴らしい風船旅行』、『フィフィ大空をゆく』)も一挙上映。

Bim le petit âne/1951年/フランス/仏語/55分/⽩⿊/スタンダード/⽇本語字幕:星加久実©Copyright Films Montsouris 1951

『赤い風船 4K』『白い馬 4K』 11月14日(金)より シネマート新宿ほか全国順次公開。
公開記念・特集上映<映像詩人アルベール・ラモリスの知られざる世界>
配給:セテラ・インターナショナル 公式サイト
akaifuusen4K.com
公式 X @Akaifuusen4K

「シネマート新宿」限定で、漫画家・松本⼤洋による描き下ろしイラスト付き・⾮売品トートバックや、各作品の特製くり抜きステッカーなどの来場者先着プレゼントも!

TOP: Le Ballon Rouge/1956 年/フランス/フランス語/35 分/カラー/スタンダード/⽇本語字幕:星加久実/©Copyright Films Montsouris 1956
Text: Miki Suka