おいしいおはなし 第29回『ふたりはいっしょ』食べるのが止められないクッキー
小さいころ「お友だちに優しくしなさいね」と、大人からよく言われたものです。でも、いつも優しくするのは難しく、ときには意地悪したりされたり、ぶつかり合ったり、そして仲直りしたりしながら、友だちと一緒に大人になりました。そして今度は、「お友だちに優しくね」と子どもたちに言う立場になりましたが、もし、子どもたちから「お友だちに優しくってどういう感じ?」と聞かれたら、この本を読んでもらったらいいんじゃないかな、と思います。
『ふたりはいっしょ』は、「がまくんとかえるくん」シリーズの中の1冊 です。頼もしい兄貴分のかえるくん、おっとりで少々悲観的ながまくんのふたりは、仲良しの友だち。本の中には彼らの日々が綴られていて、その何気ない日々の中の、のどかでユーモラスなやりとりがとても魅力的です。
がまくんがおいし過ぎるクッキーをつくってしまって、ふたりとも食べるのが止まらなくなったとき、〈ぼくたち たべるのを やめなくちゃ!〉とがまくんは悲痛な叫びをあげる一方、かえるくんは〈ぼくたちには いしりょくが いるよ。〉(ともに34頁)と冷静 です。
そんなふたりは一緒にクッキーを食べるのを止める方法を次々に考え、片っ端からトライします。しかし、おいし過ぎるクッキーの魔力……。最後にはかえるくんの大胆な行動で、えいっと解決するのですが、それでもやっぱりおいしいクッキーに未練いっぱいのがまくんのセリフに、読んでいて思わず笑ってしまいます。
本に書かれているおはなしのあと、かえるくんはきっと「じゃあもう、心ゆくまで一緒に食べよう!」そう言ってくれたんじゃないかな……と想像します。がまくんのことが大好きで、見た目も性格も違うけれど、いつもそのありのままを受け止めてくれるかえるくんのことですから。
もちろん、がまくんだってかえるくんのことが大好きです。はっきりそう言わずとも、ふたりの気持ちは読んでいる私たちにくっきりと伝わり、読み終えるとふたりのきずなを感じて心の中があったかくなります。たとえば、がまくんが怖い夢を見たときのおはなし。がまくんがうなされているところに、かえるくんが訪ねてきます。
「かえるくん。」がまくんがいいました。
「ぼくきみがきてくれてうれしいよ。」
「いつだってきてるじゃないか。」
かえるくんがいいました。(63頁)
お友だちに優しくする方法はいろいろあると思いますが、いちばん大切なのは、そっと寄り添うこと。そう、がまくんとかえるくんに教えてもらったような気がするのです。
〔材料〕
(直径7〜8cmのクッキー15枚分)
バター(無塩)50g
くるみ 25g
薄力粉 70g
全粒粉 30g
三温糖 30g
オートミール 30g
無調整豆乳(または牛乳) 大さじ3
打ち粉(薄力粉) 適量
〔つくり方〕
- 下準備。
・バターは1㎝角に切って冷やしておく。
・くるみはフライパンで軽く炒っておく。
・天板にオーブン用シートを敷いておく。 - フードプロセッサーに薄力粉、全粒粉、三温糖を入れ、軽く攪拌してから、バターを加えて攪拌する。
さらさらのそぼろ状になったら、オートミールとくるみ、無調整豆乳を加え、くるみをくだき過ぎないように、数回攪拌する。
バラバラしている生地をそのままラップでぴったりと包み、冷蔵庫に1時間ほど置く。 - 生地の仕上がりに合わせて、オーブンを170℃に温める。
打ち粉をふった台に生地をのせ、全体を3〜4回こねる。
15等分にし、それぞれを丸める。丸めた生地を天板に並べ、それぞれを手のひらで厚さ5㎜程度に平たく押しつぶす。 - 温めたオーブンに入れ、20〜25分こんがりと焼く。
歯応えと香ばしさがおいしいクッキーです。プレゼントにも喜ばれます(その際は湿けないように乾燥剤を入れて)。フードプロセッサーを使わない場合は、粉類とバターをボウルに入れ、カードなどでバターを細かく切り刻みながら、手のひらを使って粉とすり合わせ、最後に豆乳やあらかじめ粗く刻んでおいたオートミール、くるみを加えるとよいでしょう。
子どもの文学のなかに登場する(あるいは登場しそうな)おいしそうな食べ物を、読んで作って紹介している連載「おいしいおはなし」。第40回までの連載をまとめた単行本『おいしいおはなし』(グラフィック社)は、全国書店または各オンライン書店にて発売中。
文と料理:本とごちそう研究室(川瀬佐千子・やまさききよえ)
写真:加藤新作
スタイリング:荻野玲子