13『小さなスプーンおばさん』ご亭主のためのマカロニスープ

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今回は働き者でウィットに富んだステキな女性〝スプーンおばさん〟をご紹介。

ティースプーンくらい小さくなってもいつもどおりにごはん作り

人間がもしもきゅーっと小さくなってしまったら? という空想から生まれた物語はたくさんあります。例えば1906年に書かれたスウェーデンの『ニルスのふしぎな旅』でも妖精に小さくされてしまった少年が雁と共に旅をしたし、1966年の『ミクロの決死圏』というアメリカのSF映画では治療のために特別技術でミクロ化した医療チームが人間の体内に入ったし、ドラえもんでものび太たちはスモールライトやガリバートンネルでたびたびミニサイズになって冒険していました。

今日のお話も、ふとしたタイミングで何の前触れもなくティースプーンくらいに小さくなってしまう、その名も〝スプーンおばさん〟が主人公です。

「なるほど。スプーンみたいに小さくなっちゃったんなら、それでうまくいくようにやらなきゃならないわね。」(P.5)

と、スプーンサイズになっても日常が「うまくいくように」おばさんはアタマを巡らせ、動物たちを上手いこと扱ってお手伝いをさせて、ちょっとした冒険をしながら、いつもどおりに家事をこなします。

大自然に囲まれた農村の暮らしは忙しく、普通の大きさでもスプーンサイズでも、おばさんのやることは山のようです。掃除、洗濯、畑仕事に、ご亭主のためのごはん作り。

子供が独立して二人暮らしのおばさんとご亭主ですが、ぶっきらぼうに見えてとっても仲良し。スプーンくらい小さくなってしまったおばさんがどこにいるんだかわからなくなってしまうと、ご亭主はおろおろ……。小さくなったおばさんとマカロニを買いに行った時も、入っていたはずのポケットからおばさんがいなくなってしまい、大慌て。

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 あのリュックサックの中で、おばさんはくちゃくちゃになっちゃったかもしれないと思いながら、おじさんは、しんぱいで、あせびっしょりになって、うちにかえってきました。

「ああ、ああ、かわいそうなばあさんや! おまえがティースプーンくらいなのがなさけないなんて、わたしは、もうぜったい、いわないよ!」

 そういって、おじさんが、うちのドアをあけますと、おばさんは、すぐ目のまえでマカロニ・スープをしゃくいあげていました。おばさんは、もう、ふつうの人とおなじ大きさになっていました。

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著者の筆はここで止まっていますが、ご亭主がどれだけ驚いた顔をしたか、そして安心したか! 想像するに難くありません。そしてそんなご亭主を、おばさんはきっと何事もなかったかのようにおかえりと迎えて、ご亭主の好物のマカロニスープを二人で食べたんだろうな~と思うのです。

動物たちとスプーンおばさんのやりとりもこの本の魅力のひとつですが、おばさんのキャラクターをグッと引き立てているのは、このご亭主の存在のような気がします。大人になって改めて読むと、そんな発見があって楽しいものです。

さて、それではふたりが食べたマカロニスープをいただきましょうか。今回は、ノルウェーの定番料理のフィッシュスープをヒントに、北欧の定番食材の干し鱈を日本の寒干し鱈にして加えました。しっかり食べ応えのあるスープです。大きなスプーンでたっぷりとどうぞ。

『小さなスプーンおばさん』プリョイセン作、大塚雄三訳(学研)ふつうのおばさんがある朝目覚めるとティースプーンくらいちいさくなっていました、とはじまる物語。出かける前やお料理の途中に小さくなるとたいへん。知恵を絞り、動物たちに手伝わせて、いつもの家事を遂行します。ときに小さくなったのをチャンスとばかりに冒険したり、ネコに頼まれごとをしたり。ノルウェーの農村ののどかでのびのびとした日常のなかに、ウィットに富んでユーモラスなスプーンおばさんの活躍が描かれます。

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