Lifestyle magazine
for modern family

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DATE 2018.09.14

第15回:山野・アンダーソン・陽子より
夏の思い出はノルウェーの小島を目指したドライブ旅行。

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」と「ハハ」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。

山野・アンダーソン・陽子さんから長島有里枝さんへ。

 

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有里枝さんへ

 

今朝の気温は10度でした。薄手のコートを羽織り、息子を保育園へ送りましたが寒かったです。今は家の中で、リトアニアで見つけたリネンのブランケットに身を包みながら書いています。小さい頃から晩秋(こっちでいうと10月ごろ)が好きなので、早くもっと暗くて寒くならないかと、待ち遠しいです。でも、寒くなったらそこからが長いので、待ち遠しくしている今が一番ちょうどいいとも思います。日本はまだ暑いですよね?

 

夏休み……何か遠い日のような気がしますが、私たちは車でノルウェーの友人の住む島まで2週間ほど旅をしました。ストックホルムから片道1000キロちょっとで、途中途中にある友人の家やサマーハウスに寄りながら何日間かかけて行きました。私への40歳の誕生日プレゼントにと、パートナーとそのノルウェー人の親友が考えてくれました。「考えた」と言っても、友人と連絡を取り、車を借りて、予定を立て、どの経路でどうやって向かうのかを計画したり、泊めてくれる友人達へのプレゼントを考えたり、買いに行ったり、車の中での過ごし方やランチの場所、トイレの場所を調べたり、名前のないことをやるのは私です。パートナーは旅にかかる費用と運転、旅の最中の子供の寝かしつけをやってくれました。それでも、彼が寝かしつけている間に、私は毎日友人とワインを飲んでまったりできて、自由気ままに夜を過ごしました。道中は、さすがノルウェー、山あり谷あり、フィヨルドありで、とっても素敵でした。夏の間でしか十分に練習できないので、息子の自転車も持参しました。息子にとっては自転車強化合宿のようになったと思います。友人の島は真夏でもノルウェー海に面しているのでかなり寒く、泳ぐことはできなかったのですが、海にアザラシを見に行ったり、浜に上がったクラゲをつついたり、山へ本気(滑ったら死んじゃうほど)のハイキングに行ったりと、とっても楽しい時間を過ごしました。帰りは違うルートでまた別の友人のところに泊まりつつ、ストックホルムまで帰ってきました。車の中では、息子と歌を歌ったり、お芝居をしたり、道を間違えてイライラしているパートナーと少し喧嘩もしたりしたけれど、たくさん笑って自然をたっぷり感じて、なんだかすごく楽しかったです。息子が、ストックホルムに帰ってきて、「アスファルトの匂い大好き!」と、家の前のアスファルトの匂いを存分に嗅いでいるのを見て、今までで一番の嫌味のない苦笑いが出たのは想像していただけると思います。

 

ストックホルムのみんなは、夏の間はサマーハウス(田舎/森/海)で過ごします。観光客が多いので人は多いのですが、遊ぶ友人がいなくなるので、人が少なく空っぽな気分になります。私は今まではそんな夏のストックホルムが大好きだったのですが、子供がいると子供のために、何かエンターテーメント性の強いことをしないと……と。毎日、家族3人で顔を合わせて、なんてことない時間が過ぎることに、なぜかそれではダメな気がして少し焦るのが最近の私のスウェーデンでの夏休みです。

 

有里枝さんの夏は、とっても日本らしくていいですね。息子さんと一緒に鈴本演芸場で落語なんて、ウキウキしますね。「幕の内弁当と豆菓子」をこんなにもかわいいアイテムと感じたことがないです。すごく、うらやましいっ! 実は、ほんの少しの間、湯島で働いていたことがあって、上野駅から湯島まで歩いて通勤していたことがありました。その時、鈴本の前を通って、番組を見るのが楽しみでした。あんなに近くにいたのに、結局一度も寄席に行ったことがないんです。柳家権太楼師匠の高座をいつかみてみたいです。有里枝さんと息子さんの話を聞きながら、勝手に自分と息子を照らし合わせて、息子が大きくなったら鈴本に行く前に「みつばち」の小倉アイスを食べて、寄席の後に「デリー」のカレーも捨てがたいなとか、息子がもっともっと大きくなってお酒も飲めるようになったら、終わってから「シンスケ」に行くのもいいな、とか、想像してしまいました。息子から何でもいいので彼の興味あることに誘われてみたいです。それも、毎日の積み重ねなんでしょうね……。今度息子に「ベランダから外を見ようよ」と言われたら素直に一緒に見てあげようと思います。できるかどうか不安ですが、ちゃんと些細なことでも大切にして、それでいて、彼の興味を自分の興味へとそそのかさないようにしたいです。今ある興味はどこまで続いて、これから何に興味を持って行くのか、どのタイミングでどのようにして出会っていくのかとても楽しみです。自分の事となるとそうはいかないので、人(息子)の人生を借りて少し客観的に見てみるのも楽しいです。自分で興味あるものを見つけ出せる力やそれを継続できる力ってどうやってつくのでしょう? 息子さんは有里枝さんの興味あることや仕事にも興味を持ってくれますか?

 

未来を思うとき、そこがどうか平和であって欲しいですね。スウェーデンは今年から2010年に廃止した徴兵制を8年ぶりに再開しました。廃止してみたけど、うまくいかなかったのだと思います。ロシアとのこともあるし。スウェーデンに住む18歳の男女に、ネットでのやりとりだと思いますが、春、質問用紙が配られ、返答してもらい、そこから選ばれた人が医師のチェックを受け、4000人ほど徴兵されるそうです。女性に徴集がかかるのはスウェーデンでも初めてのことです。スウェーデンは武装中立国なので、徴兵をしたと言っても戦争に行くことはないようですが、それでも、何かポジティブにとらえることのできないものがあります。

もうすぐ選挙です。

 

 

山野陽子

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次回更新は9/28(金)の予定です。写真家の長島有里枝さんからのお返事です。