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DATE 2019.07.05

家族で力を合わせて子育てをする。ダウン症の息子が教えてくれること|それぞれ違う家族のかたち Vol.2

人が多様ならその分だけ家族も多様です。これが正解という家族のかたちがあるわけではありません。ダウン症の龍之介くんを授かったことで知ることができた広い世界。未来への不安と闘いながら、家族で力を合わせて子育てをする大岩さん一家の家族のかたち。

子どもが生まれてわかったこと

「出生前診断がまだ一般的になる前で、調べることはしませんでした。障害があることは想像もしていなかった。生まれた次の日、先生にダウン症の可能性がありますと言われました。首や腰のすわりも人の何倍もかかり、歩き始めも2歳半くらいでしたが、1人目の子どもだったのでそういうものかと思ってゆっくり子育てしていました」。

 

龍之介くんは転座型トリソミーのダウン症だった。

大岩竜也(44) EC事業経営
大岩智子(45) 主婦
大岩龍之介(12)
大岩稟香(5)

身近に健常者しかいない状況で障害者と生きることがどんなことかを想像するのは難しい。竜也さんと智子さんもまったく考えてもいなかった。

 

「龍之介が生まれるまで障害者とちゃんと接したことがなく、少し偏見すら持っていた自分がいます。出産の立ち会いもしたのですが、驚きました。ショックはその後もそれなりに引きずっていたかもしれません」

 

と竜也さんは正直に話す。

 

「小さい時が本当に大変で、普通の3歳児は親が少し目を離してもひとりで遊んでくれていたりしますが、龍之介は本当に目が離せなかった」

不安が横たわる眠れない夜

夫婦で力を合わせて子育てするようになったのは、2人目が生まれてからだった。転座型は親の影響からなることがあるダウン症でもあり、2人目の妊娠から出産まできっとすごい不安との闘いだったはずだ。2人目がほしいと思ったのはどういう気持からだったのだろうか。
「龍之介ひとりだと、私たちが死ぬに死ねないと思ったんです。私たちがいなくなったら、どうするんだろうと不安に思っていた時、稟香の妊娠が分かりました。眠れなくなるほどずっと心配が続きました。龍之介とは違う病院に行ったら、そこではちゃんと確率を計算してくれて、ほとんど障害はないであろうという状況が分かったことで産む決断ができました」

 

龍之介くんと稟果ちゃんは7歳差の兄妹だが、稟果ちゃんは、お母さんが大変だからと龍之介くんの面倒を見ているという。それも2歳頃から。龍之介くんがどこかへ行ってしまうと「お兄ちゃん、そっち行っちゃダメ!」としっかり叱ってくれる。龍之介くんも稟果ちゃんも褒めて育てることをしているが、龍之介くんは、稟果ちゃんを褒めるように褒めればそれでいいというわけではないそうだ。

 

「できないことが多いため、少し何かができただけで何でも褒めるようになってしまうと、しつけが曖昧でわがままになってしまう。療育施設は褒めて育てましょうという方針だったんですが、ダメなものはダメだとしないといけないと思い始めて、時々厳しく言うようになりました。最近は、だいぶ何をしたらいけないかを分かってきています。姿が見えないと、大体トイレにいます(笑)。水と渦巻きが好きで、放っておくと3時間くらい水場にいて、水が排水口に渦を巻いて流れていく様子を眺めています」

気持ちをつなぐ息抜き

公的な支援や福祉サービスも生まれた頃より格段に充実してきているし、有志の集まりも各地にある。渋谷区にダウン症の会があり、そこでダウン症の子がいるお父さんたちが集まって話をしたり、イベントをしたり、時に飲み会をやったりもする。20~30人はいるそうした仲間の集まりに参加して、竜也さんは息抜きをしている。一方で智子さんは、インテリアが好きで少しでも日々の風景を良くしようと趣向を凝らしている。

 

「息抜きでもあり、没頭できるものでもあるインテリアに凝っていなかったら、気持ちが続いていなかったかもしれません。少しでも居心地の良い時間を作れるように工夫しています。今日はボーダーで揃えてきましたが、服作りも同じような感覚ですね」

まっすぐ前を見て、大きくなった自分

「例えば遊園地に行くとすると、健常者の子どもの親の、私たちを見る目がとても怖く感じることがあります。突拍子のない動きをすることもあるので、親は何をしているんだという目の時もあります。逆に当事者として経験したことで、他の障害がある人や変わった行動を取る人を差別的な目で見ることがなくなりました」

 

と竜也さんが言うと、智子さんも

 

「龍之介が生まれて世界が広がりました。この子のおかげで、目を背けていた世界を正面から見て、こういう人たちもいると認識することができた。自分自身大きくなった気がしたし、同じ境遇の人たちとのつながりもできました。健常児で生まれてきていたら、いろいろなことが当たり前になってしまって、何も考えずに子育てしてきたと思うので、龍之介には感謝しています。そして健常児で生まれてきてくれた稟果にも本当に感謝です」。

 

稟果ちゃんという支えはできたけれど、自分たちがいなくなったらという未来への不安は簡単に拭えるものではない。家族だけが目を背けず問題にするのではなく、私たちひとりひとりが目を背けず、社会全体でともに生きていくことを考えていきたい。

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