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DATE 2019.09.20

「スノーマン」、「さむがりやのサンタ」で知られる英国を代表する絵本作家レイモンド・ブリッグズさん最新インタビュー。ミルク会員へ映画鑑賞券プレゼントも!

85歳になるレイモンド・ブリッグズさん。現在もサセックスのウェストメストンに暮らし絵本作家として創作を続けています。自身の両親を描いたグラフィック・ノベル「エセルとアーネスト」がアニメーション映画になり、ここ日本でも公開になります。

美しいアニメーションにもなった言葉のないコマ割り絵本「スノーマン」やサンタさんのクリスマスの忙しい1日を描いた「さむがりやのサンタ」は今の子どもたちだけでなく、親世代も子ども時代に愛読した記憶がある人も多いのでは? 英国だけでなく世界中の子どもたちに愛されるファンタジックな物語を描く一方で、ブリッグズさんは核戦争をテーマにした「風が吹くとき」など社会派のグラフィック・ノベルをいくつか手がけています。

1998年に発売された「エセルとアーネスト」もそのひとつ。英国ブックアワードを受賞したこの名作は、自身の父と母の出会いから、家族になり、第二次世界大戦の苦難の日々を乗り越え、2人に死が訪れるまでのおよそ40年間を丁寧に描きます。イギリスでは本作をアニメーション映画『エセルとアーネスト ふたりの物語』に。製作には、ブリッグズさんも全面的に協力をされたそうです。
ブリッグズさんにアニメーション化について、そして公開を記念して日本でも書籍化された原作についてお話を伺うことができました。

──ご両親の物語を描くのは、難しくありませんでしたか?

 

難しいと思ったことはないですね。自分自身について書くのは、ちょっと変な感じがしたけれど(笑)。私は、両親の送った人生に興味をそそられて、そのことを書いてみたいと思ったんです。

 

──ご両親が存命のころに昔の話を聞いていたりしていたのでしょうか。

 

それはなかったと思います。私は両親の性格を知った上で、こういうやりとりがあったろうな、と想像しながら描きました。私の母は、いつもちょっと特別でありたいと願っている人で、上流志向があった。父はもっと現実的な性格で。僕が若いころ、髪を伸ばしていると母は「いつ髪を切りに行くの?」としつこく言ったものです。「ご近所の人がどう思うかしら」と。父はあきれて「仕事が見つかったら髪を切るさ」と言うと「あんな髪で仕事なんて見つかるわけないわ!」と返す、そんな調子です。

 

──物語には家の様子もとても丁寧に描かれています。手回しの脱水機やアイロンを電球のソケットに差し込むといったとても具体的な描写も。それらもすべてブリッグズさんの記憶をもとに描かれたのでしょうか。

 

そうですね。父と母と暮らした家の記憶は私の一部ですから。今でも、家の中の様子をすべて描くことができますよ。陶器をしまっておいた食器棚の扉の小さな取っ手の模様まではっきり覚えています。

──今、思い出される家族のエピソードはありますか?

 

なんでしょうね……。母の手料理でしょうか。料理上手でひと通りなんでも作ってくれたんです。クリスマスなんかはもちろんご馳走でしたよ。あんな小さなガスコンロで大変だったろうに、と今は思います。その頃は、七面鳥は珍しいものだったから鶏の丸焼きが出て。あの頃は、どこの家も鶏だったように思いますね。あとは、ケーキ作りも上手だった。よくフルーツ・ケーキを焼いてくれましたね。

──アニメーションでもとても正確かつ緻密に日々の暮らしを描いていますね。

 

それはアニメーションを手がけたロジャー・メインウッド監督の仕事ですね。彼がすべてやりとげたことで、私は何もしていないんですよ。彼は時に、こちらが苛立ってしまうほど細かくて、小うるさい(笑)。まるで、年老いたメイドみたいなもので。「そこの段は、そっち向きじゃなくてこっち向きでしたよね?」なんて言うから「そんなことはどうでもいいだろう、段なんて誰も見てるわけない、話の進行を見てるんだから」って言ったこともあったこともあったくらいで。何でも完璧にしたがっていた。ロジャーは製作中に頻繁に私のところにやってきてくれていろいろな話をしました。

 

──メインウッド監督は、アニメーション映画の「スノーマン」(1982)「さむがりやのサンタ」(1991)の製作に携わり、「スノーマン」の続編アニメーション「スノーマンとスノードッグ」(2012)では監督も務めています。ブリッグズさんとの信頼関係も厚かったんでしょうね。残念ながら2018年に死去されています。

 

とても若く見える男でね。病気だったなんて思いもしなかったよ。彼の完璧さを知っていたからこそ、私は安心してアニメーション化することを任せられたんです。だから、余計にショックでしたね。

──「エセルとアーネスト」では1920年代から第二次世界大戦、そして終戦からの戦後の新しい時代へと移っていく姿も克明に描かれています。ご両親の姿を通して、この時代の普通の人々の生活の記録を描こうと意識されたのでしょうか。

 

僕はそれほど考えていませんでした。担当の編集者にそうしようと言われて、こんな大作になってしまったんだと思います。歴史書を読んで、年代ごとの出来事をメモしたり、戦時中の暮らしぶりについてもいろいろ調べました。生活の中での社会的な歴史という感じですね。生活を描くことで、人は個人的に人間関係を築き、好き勝手に生きているようで、結局、世の中の大きな流れの中で生きざるを得ないんだということをより深く理解できます。普通の人の生活を戦争がこんなに変えたんだって、ね。イギリスだって、ドイツだって、一般市民は戦争を望んでなんていなかった。でも、爆撃は突如襲ってくる。水や電気の供給が足りなくなる。これは、最悪なことです。

ブリッグズさんの自宅にて。壁には子どもたちからの手紙や写真がたくさん貼られている。

──子どもたちにも伝えたい大切なことですね。

 

私のところには、小さい子どもたちから老人までたくさんの手紙が届きます。多くの読者がいてくれるのはとてもうれしいことです。日本からももちろんたくさんの手紙をもらいますよ。中にはずっと手紙をくれる方もいて。わざわざ会いに来てくれた人もいます。ここのところ、私はパートナーのリズの介護をずっと続けていてなかなか執筆ができない状況でした(リズさんは2015年に逝去されました)。今、私も85歳という年齢で、なかなか執筆は進みません。次の本が最後の作品になるのかもしれませんね(11月に自身の人生を描いた「Time For Lights Out」を発売予定)。

読んでおきたいレイモンド・ブリッグズさんの名作絵本

「ゆきだるま The Snowman」(評論社)

「さむがりやのサンタ」(福音館書店)

「風が吹くとき」(あすなろ書房)

「エセルとアーネスト」(バベルプレス)

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