Lifestyle magazine
for modern family

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DATE 2019.06.06

川内倫子「普段の景色に何か発見があった時、満足できる写真が撮れる」

さまざまな写真家の“子どもになって撮る1 枚”をご紹介。第7回目の写真家は、川内倫子さん。一緒に考える、写真の魅力、写真の不思議、写真てなあに。

自分の中の発見、直感。それが子どものような目線と言えるのでは

あふれる光の中に小さなカエル。川内さんの写真は、すぐに彼女のものとわかる。「子どもになって撮る」。彼女は常にそれに近い気持ちで撮るように心がけているという。

 

「そもそも、子ども目線といっても、なりたくてもなれるものではないですよね。でも、“無意識に近いような策略的ではない状態” と捉えたらいいのかな、と思いました。それは私が普段心がけていること。もちろん意図的な部分で撮っている写真もあるし、ある程度セットアップしてから撮る時もあります。でも、撮る瞬間だけは直感的な部分で撮るようにしています」

川内倫子 あふれる光の中に小さなカエル
「テーマである“子どもになって撮る1 枚”。私はそれに近い気持ちで撮るように常に心がけています。だから、どの写真を選んでくれても大丈夫」。その川内さんの言葉とともに何枚か作品を見せて頂く。選ばせて頂いたのは、川内さんが被写体として選ぶことがとても多いカエルの写真。彼女が愛する、切なく儚いもの。

直感的に撮る。そんなシンプルなことが、大人になると一番難しいことのように思える。

「普段見る景色の中に、何か面白さを発見した時、違う景色に見えた時、“ あ! 何かある!” と自分の中の発見がある時、そういう時には満足できる写真が撮れているかな。そういう発見=子ども目線なのかな、と捉えています」

 

2016年の夏、出産した川内さん(出産からの生活を連載「そんなふう」で綴られています)。出産という節目を機に、写真に対する変化が何かあったのか尋ねると、特にないとのこと。

 

「出産後、変化というより原点に戻っていったという感じです。例えば、カエルの写真はもう数え切れないくらい撮っているけれど、何度撮っても飽きない。前は、それに対して、ワンパターンじゃいけないんじゃないか、とか考えた時もありましたが、今は、飽きないならいいか、という感じ。よく毎回飽きずに撮るなと(笑)。前は、それこそ“日常を切りとる作家”と言われることに若干の拒否感を感じたり、模索したりしている時期が若い頃にありました。でも、身のまわりのこと・好きなものを撮っていくことが改めて大事だなと。そもそもの自分の出発点ですから」

自分が見ている世界を忠実に写真に落とし込みたいという想い

写真の世界にのめり込んでいったきっかけは高校生の時に買ったコンパクトカメラ。

 

「いつもそう答えていましたが、今急に思い出しました! よくよく考えたら、その前にもきっかけがありました。近所に憧れのお姉さんがいて、モノクロフィルムで写真を撮っていたんです。それがすごく格好いいなぁと感じたこともあったから、興味がずっとあったんでしょうね。その後、高校の時にコンパクトカメラで写真を撮り始めました。でも写真を現像した時、自分の見ている世界が写っていなくて、がっかりしたんです。“ 私が見ている世界はこういう色じゃない、何かが違う” って。現像も自分でしたら、近づけられるのかもしれないと思い、大学で現像や暗室作業を学ぶことがとても楽しみでした」

 

カエルなどの小さな生き物に、被写体としてとても惹かれるという川内さん。それは、儚さ、か弱さ、死に近い存在であるということ。

 

「切なさ、諸行無常を感じる小さな生き物は、やっぱり写真的なんですよね。私がずっとおじいちゃんを撮り続けていたのも、今考えると同じ理由。おじいちゃん子だった私は、『おじいちゃんが今亡くなりませんように』と写真を撮るたびに強く願いながら撮っていました。死にどんどん近づいている、ということが怖くて仕方がないのと同時に、そういったことを感じさせる被写体としてとても惹かれていたのだと思います。初めて写真を撮った頃から今までずっと、自分が見ている世界を写真の中に忠実に落とし込みたいという気持ちで、撮ってきました。でも写真になると私が見ている世界と何かが違って。そう思い続けてきたから、写真をずっと続けてこれたのだと思います」