Lifestyle magazine
for modern family

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DATE 2018.03.28

濱田英明「“大人になって忘れてしまった感覚”にぐっとくる」

さまざまな写真家の“子どもになって撮る1 枚”をご紹介。第5回目の写真家は、濱田英明さん。一緒に考える、写真の魅力、写真の不思議、写真てなあに。

1 枚で時間軸を行ったり来たり稀有な存在である“ 写真”

“子どもになって撮る1 枚” という、この企画のテーマ。濱田さんが撮影をする際に意識していることにまさに近いのだそう。

 

父親である濱田さんが自分の息子ふたりを撮り続けている『ハルとミナ』の中の1枚。兄弟ふたりが寄り添いながら学校に登校していく後ろ姿。「これは中でもぐっと感情がこみ上げる1枚。親である撮影:濱田英明 自分、息子たち、かつてはこどもだった自分、自分の親、など色々な感情が入り混じっています」

「“ 大人が子どもの目を通して見たときの世界”を常に意識して撮っているつもりです。例えばこの写真。親である僕の見送るしかないという切ない気持ち、振り返りもせず進んでいく子どもたち。それだけでなく、子どもだった頃の自分、子どもの頃の自分を見送っていたであろう親、この1枚でそこまで感じられる。過去・現在・未来すべてが1 枚に詰まっていて、その時間軸を行き来できてしまう。自分の子どもたちを撮り続けるということを継続していくうち、そういった写真の奥行きにふと気づいたんです。息子の写真を撮っているときにふと『この風景、なんか知ってる!』みたいな不思議な感覚になったことがきっかけ。息子は2 歳差の男兄弟。僕もお兄ちゃんがいて、2 人兄弟なんです。だから余計気持ちや思い出がかぶるんでしょうね。夏休みに子どもを連れて実家に帰省したとき、息子が実家の玄関でボッーとしているのを見て『あ、これはもしかしたら自分かもしれない』みたいな不思議な気持ちになって、人生をもう一度生き直しているような気分に。子ども時代は、100%誰もがみんな通る道。そこで持っている共通の記憶や経験って必ずあるはずなんです。それをできる限りたくさん拾い集めて共有したとき、未来を考えることができるようになるのかなぁと」

 

また、写真を撮るという行為自体も時間軸を行き来する。写真を撮っているのは今だけれど、撮った瞬間に写真は過去となり、その写真を見るのは未来。このように、時間軸がぎゅっと混在しているのが写真であるということ。写真という存在そのものが稀有な存在であるということを、濱田さんは改めて実感していく。

自分のこどもを通して生き方が変わっていく

そんな濱田さんと写真の出会いのきっかけは、子どもが生まれたこと。

 

「僕の世代って、まさにインターネットの成長とともに育ってきた世代。だから僕ももれなく、子育てブログを書いたり、撮った自分のこどもの写真をFlickr にアップしたり、SNS を楽しんでいました。そうしているうち、見てくれている人がどんどん増えていって、海外から評価をいただき、台湾から展示のオファーをもらって。デザイナーという仕事に限界を感じていたタイミングだったこともあり、本格的に写真を仕事にしようと決意。こどもが生まれたことで、写真を撮ろうと思ったし、そうしているうちに楽しさや奥深さを気づくことができた。本当に感謝していますね。この『ハルとミナ』をずっと撮っていて、時系列で並べると、子どもたちが成長するにつれ僕と彼らの距離が遠く離れていく。子離れ・親離れという親子の距離感がそのまま写真に表れているんです」

自分の子どもを撮るときは“いかに離れるか”、初めて会う人を撮るときは“いかに近づくか” を意識しているそう。被写体との距離感を大事にしている濱田さんならでは。

 

「“知っているようで知らない” “見たことあるようで見たことがない” そこのズレみたいなものを大事にして、バランス・視点を見つけたいと常に思っています。それには距離感は大事。撮影のときも、画づくりはするけれど、そのままじゃつまらない。7 割くらいは段取りして、残り3 割くらいは想像しなかったことが起こることで写真は楽しくなる。大切にしていることはこの3 つ。子どもならではの、大人には思いつかないような発想。かつては誰もが持っていたはずなのに、大人になって忘れてしまった感覚。“これとこれを組み合わせるのか!” というような発想に出会ってハッとする瞬間。そういう部分に僕はぐっとくるので、大切にしながら撮り続けていきたいですね」