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DATE 2017.05.25

平野太呂「ただ好きだから撮る、っていう素直な気持ち」

さまざまな写真家の“子どもになって撮る1 枚”をご紹介。第2回目の写真家は、平野太呂さん。一緒に考える、写真の魅力、写真の不思議、写真てなあに。

4歳の娘が教えてくれた、“子どもになって撮る”ということ

子どもの時に絵を描いたり写真を撮った記憶はあっても、その感覚まで思い出すことは難しい。平野さんに“ 子どもになって撮る” というお題を渡した瞬間、平野さんは“ もう子どもではない自分” と向き合うこととなった。

 

「子どもになって撮るって難しいお題ですよね(笑)子ども風には撮れるかもしれないけれど、それはあくまで大人の僕が子ども風に撮っているだけだから、要は大人の写真。子どもの時にしかこどもの写真て撮れないですよね」

 

絵に置き換えるとわかるように、衝動的で勢いのあるこどもの絵は、大人になってから同じように描くことは難しい。写真も同じことだ。そこで大きなヒントになったのは、4歳の娘さんが写真を撮る姿だった。

「iPhone とかおもちゃのカメラを渡すと、写真を撮る行動はよくします。それは、いつも僕や妻が娘を撮っているから、その真似事というか、『今度は自分が撮る』ということなんだと思うんですけど。何を撮っているかというと、僕だったり妻だったり、ほとんどが人。子どもは、好意を抱いている人のことしか撮らないんじゃないかなぁ。ただ好きだから撮る、っていう素直な気持ち。それに、フレームに納めることもこどもにとっては大変な作業だから、『お父さんとお母さんが両方四角の中に入ったら押す』って感じで、撮るタイミングは被写体でなく撮る側にある。構図がいいとか表情がいいとか、そういうことは一切考えていないんです。だから子どもが撮った写真は変な瞬間だったり油断していたりして、それがいいですよね」

 

そして数日後、娘さんからインスパイアを受けた平野さんから編集部に届いたのは、フレームの中にご両親が納まった1枚の写真だった。

少し前に自宅で仕事中のお父さんとソファーに座るお母さんを撮った写真。ご両親を1枚の写真に入れて撮る機会がなかなかなかったので、珍しい1枚なのだそう。「僕が今でも“子ども”でいられるのは、彼らの前だけなんですよね。この写真を見ると、自分が彼らの子どもなのだと改めて感じますね」と平野さん。

“ なんだこれ” という写真の不思議が 写真を撮り続ける原動力

ところで、平野さんが写真やカメラと最初に出会ったのはいつなのだろう。

 

「子どもの頃からカメラが好きだった、という記憶はあるんです。父が持っていたキャノンのカメラは、黒くて部品がたくさんついていてゴツゴツして、かっこいいなと思っていました。でも、触っちゃいけないものという感覚もありましたね。小学校3年生の時に近所の写真館で売っていて、ずっと欲しかったオリンパスのXA という機種を誕生日に買ってもらったんです。それがはじめての自分のカメラ。何を撮ってたのかは覚えていないんですけど。その後、高校2年生くらいの時にはじめての一眼レフを手に入れて友達を撮っていましたね。思い出が好きだったというか、楽しい瞬間を覚えていたいという気持ちで撮っていた気がします」

 

この頃は、写真=遊びの延長だったかもしれないが、その後、生業にするまでに平野さんが写真にのめり込む原動力は、写真に対していつまでも不思議に思い続けることだったようだ。

「僕の中で、写真て“ 押せば写るじゃん” というのが大前提としてあって、それが芸術のジャンルになっているのも不思議でした。いつまでも“ なんだこれ” と思っている人が写真を続けているんじゃないかなぁ(笑)写真は瞬間的なものだけど、不思議なもので、そこに来るまでの気分や経験が反映すると思うんですね。カメラを構えた時に、ちょっとこうしようってフレーミングを変える行為には特に理由はなくて、過去から引きずった自分の野生の部分がそうさせているような気がするんです。子どもたちには、経験がまだそんなにないから、それを羨ましく感じることもあります。子どもたちに写真を教える機会があるのなら、ただただ、一緒に遊びたいですね。教えることって、なにか正解を持っている人が『こうですよ』って教えることだと思うんですけど、きっと写真に関しては答えはないし、自由を奪うことになるんじゃないかって。子どもであることって特権ですからね、それを思いきり楽しんでほしいですね」。