おこさま人生相談室 第22回-小林エリカ

おとなのお悩み

父が認知症になって、老人ホームにいれたくても、受け入れてもらえません。

今回、人生相談にお答えいただくおこさまは、ゲンさん、明日がお誕生日で9歳になります。ちなみにゲンさんのお悩みは、お誕生日ケーキをどれにしようかということだそう(フルーツ系のケーキと苺のショートケーキが候補です)。お誕生日プレゼントはもう決まっているけれど、まだ秘密。
ちなみに、来月と再来月のお父さんとお母さんの誕生日のプレゼントは、すでに半年前からもう買って準備してあります。
大切にしているものは、万華鏡。実は定価が1万4千円(閉店セールで半額でも7000円もした!)もする品で、凄くきれい、二度と同じ姿を見せないのも魅力だとか。

おこさま紹介

お名前: ゲンさん
年齢: 明日で9歳
生まれた場所: 新宿区
住んでいる場所: 二子玉川(マンション名だったので省略)
好きな食べ物: けっこうありすぎて選べない コロッケ・・・・・・・でも嫌な思い出もあるからな。12個も食べてよく日お腹が超痛くなって、そのよく日も超お腹が痛くなった。
嫌いな食べ物: 肉の皮 食感と香りが保育園のころから大嫌い あとは食品添加物の入ったものは嫌い
これまでの人生で楽しかったこと: 旅行とかけっこう行かなかったから、お誕生日とか、クリスマスとかそういうことくらいかな。今月の27日に三年生の遠足で金沢動物園行くらしいから、それは楽しみ。けっこうでかいローラーすべり台とかあるらしいし。
これまでの人生で哀しかったこと: いまもためてる借金 たぶんいまのところ1万五千円くらい(借金はおとうさんにしています)。あとは、いろいろなことで怒られたことっていうのはかなしいかな。
得意なこと: スポーツとか(サッカーとかサッカー部に入ってるし、バスケットも、バレーもすこしだけならできる)
苦手なこと: お金のつかいかた だから借金をためてしまう
好きなこと: いま、石にはまってて、けっこう石を見てるときとかも好きだし、宝物としても好き(ダブルポイントアメジストや隕石など石のコレクションも13個持っています)。
将来の夢: サッカー選手とか学校の先生、医者でもいい

おこさまをよく知る人からのご紹介のことば:
母譲りの天真爛漫さと父譲りの細やかな気配りが魅力、愛らしくも精悍なルックスも相まって、ママ友やご近所の女性から絶大な人気を誇る小学3年生です。小さいころからの口ぐせは「危ないよ、気を付けて」リスクマネジメント能力の高さも抜群。シリアスな大人の悩みにも心配りのあるリアルな回答を出してくれることでしょう。つぎは私の悩み相談にものってね!
(お隣に住むふーみんさんより)

(ゲンさん、以下G)

さて、今回のおとなのお悩みは?

Q 父が認知症になって、さらに骨折。食事もしなくなってしまいました。老人ホームにいれたくても、受け入れてもらえません。本人が家に帰りたがるからです。でも、自宅では老いた母だけなので、面倒がみられません。どうしたらいいのか悩んでいます。離れた場所に私は住んでいて、すぐに駆け付けるのも大変です。私は一人っ子です。
(ネオさん 56歳 新宿区在住)

G 助けをよぶっていうのが一番いいとおもう。

──なるほど、ひとりでどうにかしようとせず、助けを呼ぶんですね。

G お手伝いさん。

──お手伝いさんを雇って来てもらえばいいということですね。

G 自分でひとりでも、できないし。

──確かに、そうですね。

G まず、おじいさんは、救急車とかで、治療するのもいいとおもう。それでできないなら、すぐに、お手伝いさんで、いろいろしてもらう。

──つまり、病院で治療をして、それでも治らなかったら、すぐにお手伝いさんに来てもらうということですね。

G そう。

──ところで、老人ホームにいれたくても、家に帰りたがってしまうそうですが、それはどうしたらよいでしょうか?

G まず、なんでお家にいるのが、いいのかな、っていう。

──つまり根本的に、なぜ老人ホームがいやで、なぜそんなに家がいいのか、という問いですね。

G 環境だったら、老人ホームの方にお願いして、その環境を作ってもらえばいい。

──たとえば、どうしたらいいのでしょうか?

G たとえば、寒すぎる部屋がいいっていわれたら、寒くしたり、こういうものがあるといいっていったら、家からそのまんま運んできたり。で、いきたくない場所があったら、いかなくていいっていう。自分の好きなようにさせてあげればいい。

──確かに、老人ホームが家のようになれば、もう家には帰りたいと言わないかもしれないですね。
G お金とかは、孫からかりたり、いろいろな手がある。

──ネオさんは、ひとりっこということです。もしかして、自分がお父さんやお母さんを助けなければ、という責任を感じているのかもしれないですね。

G ひとりっこだからっていって、なんかこう少ししょんぼりするんじゃなくて、自分が住みたい環境とかを作ったりして、お父さん助けながら楽しく暮らしていけばいい。

──つまり、自分がどんな風に暮らしていきたいかを考えて、お父さんを助けながら暮らせばいい、ということですね。

G そう。

──ひとりっこだからといって、ひとりでなんとかしなくては、とも考えなくてよいということでしょうか。

G やっぱり他のひとを呼んだりするのがいいとおもう。あとはもう、任せられるから。

──もしもどんな風に暮らしていきたいかにも、迷ったらどうしましょう。

G ともだちとかに、悩みを相談できるひとを探してもらって、いい人が見つかったら話し合うっていう。

──悩みを相談できるひとを探せばいいのですね。

G ずーっと悩んでちゃだめだから、こう、すぐに、なんかいろいろ、悩みを解決するって人を探し出すのがいい。


(ゲンさんによる処方箋画)
希望をもとう、人をたよろう、など悩んだ末のひとこと

ネオさん、いかがでしたか?
まずは、助けをよぶっていうのが一番いいそうです。
ひとりで悩まず、他の人を信じて、まわりの人たちにも頼ったり、任せたりして、ネオさんも、お父さんも、楽しく暮らして行けますように。
というわけで、今回の、おこさまからの箴言。


いろいろな 手がある

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お悩みを随時お待ちしています。おこさまに相談したい方はぜひ、ペンネームと年齢、お住まいの都道府県を記入のうえ、こちらまでお悩みをお送りください。

絵・取材・文
小林エリカ

作家・マンガ家。新刊はシャーロック・ホームズ翻訳家の父の生と死を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)。
著書には小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社、第7回鉄犬ヘテロトビア文学賞受賞)や『マダム・キュリーと朝食を』(集英社、第27回三島賞候補、第151回芥川賞候補)、コミック『光の子ども』1~3巻(リトルモア)などがある。