Lifestyle magazine
for modern family

Lifestyle magazine
for modern family

DATE 2015.05.25

モルディブ:小さな漁村で出会った子どもたち

写真家・田尾沙織がモルディブ最南端の小さな島、ガン島で出会った子どもたち。

モルディブといえば、「1島1リゾート」のイメージくらいしか持っていなかった。そんな私が、ひょんなきっかけでモルディブの漁村にホームステイすることになった。首都マレから10人乗りくらいのプロペラ機で何色もの青が見える海の上を飛んで行く。時々上空から小島が見えて、これかこれかと思いつつ2時間近く。ようやく一番南の環礁にあるガン島に辿り着いた。地元の人たちが住むこの島は、リゾート島よりも雄大な自然に囲まれている場所だ。島のレンタサイクルでママチャリを借りれば、島を数十分ほどで1周することができる。

地元の人はみんな穏やかで、よそ者の私を警戒せず笑顔で挨拶をしてくれた。どこまで行っても青い海と青い空しか目に入らない、そんな場所だった。モルディブはインドの南に浮かぶ島国ということもあり、食事は3食カレー。カレーと言っても、ガン島はサンゴでできている土地で野菜がほとんど育たないので、毎日特産物のカツオのカレーだ。玉葱のみじん切りが少し入っていた日には、特別な日という感じがしてうれしかった。ホームステイ先のお父さんは島で数人のタクシーの運転手で、初めて家に泊める外国人の女の子の私を心配してか、徒歩5分ほどの港に行くにも車で送ってくれた。「歩きたい」と言っても「暑いし心配だから送る」と笑顔で言って聞かない。笑ってしまうくらい過保護だった。炎天下の中、カメラをぶら下げてわざわざ散歩に出かけることが理解できなかったんだろう。とにかく何もなく平和な島。

夕方涼しくなりかけた頃、小さな橋に行ってみると橋の下をウミガメとエイがゆったり泳いでいた。こんな間近でウミガメとエイが見られるなんて! と興奮気味で眺めていると、子ども達が寄って来た。「何をしてるの?」と不思議そうに聞いてくる。「ウミガメとエイだよ!」と指差すと、首を傾げながらそれがどうしたの? とでも言うような理解できない表情を浮かべている。彼らにとって、ウミガメもエイもイルカも日常で見かけるものであって、なにも目新しいものではないとそのとき気がついて驚かされた。「それよりも泳ごうよ!」と言って洋服を着たまま海に入って行ってしまった。自然と一緒に育っている彼らがなんだか羨ましく、キラキラ輝いて見えた。

空がピンク色になり始めた頃、ホームステイ先のお父さんが迎えに来てくれた。「仕事ついでに通りかかったんだよ」と言うけれど、私を捜しにドライブしていたに違いない。「過保護だね」と周りの子ども達が笑いながら言う。「夕食だよ」と言われながら夕暮れの中お父さんと家に帰る。懐かしい響きだった。もうひとつの家族がこの島にできたみたいだ。