Lifestyle magazine
for modern family

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DATE 2017.12.20

01 おいしいってなんだろう?
子どもの豊かな暮らしのための「食育」

最近「おいしかった!」と感じた食べものは何ですか?人はどんなものを「おいしい」と感じるのでしょう。子どもの豊かな食生活のために、味覚について学ぶコラムシリーズ。全2回にわたりお届けします。五感をフルに使って、親子で食べものを深く味わってみましょう。

味覚のしくみ

 ケーキを食べて「甘い」と感じたり、グレープフルーツを食べて「酸っぱい」と感じたり……。同じく「おいしい」「好きな味」と思っているものでも、人はさまざまな味覚を感じます。

 鏡の前で舌を出してみると、舌にぶつぶつとしたものが見えませんか? このぶつぶつがさまざまな味覚をキャッチする味蕾(みらい)と呼ばれる感覚器官です。口の中に入った食べものは唾液で溶かされ、味蕾の受容体でとらえられます。その情報が脳に送られ「甘い」「酸っぱい」などと感じるようになるのです。

味蕾でキャッチできる味覚の種類は、「甘み」「うま味」「塩味」「酸味」「苦み」の5種類です。この5種類は、人間の体を維持するために一役買っていることをご存知ですか? 例えば、エネルギー源となるブドウ糖などが含まれる甘みや、アミノ酸が含まれるうま味、ミネラルが含まれる塩味を本能的に摂取しようとする一方、腐敗や毒物を連想させる酸味、苦みは本能的に避けるようにできています。生きていくうえで必要な栄養素とそうでないものを味覚を使って取捨選択しているのです。

「うちの子、ごはんや肉は食べるのに、ピーマンは食べてくれない」などと、子どもの好き嫌いで悩むママは多いと思いますが、この好き嫌いは人間にとってあたり前のこと。なので、あまり気にしすぎないでくださいね。

 何を「おいしい」と感じるかは、この生物学的な嗜好のほかに、生まれ持った性格、経験などさまざまな要素が複雑に関係し合っています。特に子どもは初めて見る食べものに恐怖感を感じて、嫌いになってしまうということがあります。食わず嫌いと言われるものです。いくらママが「これは栄養があるから食べて」「おいしいよ」とすすめても、口にしたことがないものは好きになれないのです。子どもは好き嫌いがあるものと、どんとかまえて見守ってあげることも大切です。

味蕾(みらい)
舌の表面にある味蕾。生まれたばかりの赤ちゃんの下には1万個もあるとされている。成長とともに数が減り、大人になると約7000個に

五感を使い、食べものに向き合う

 味覚は舌の味蕾という器官でキャッチするというのは前述のとおりですが、ものを食べるという行為には、「味覚的刺激」のほかに、「視覚的刺激」「聴覚的刺激」「触覚的刺激」「嗅覚的刺激」、いわゆる五感的刺激をともないます。人はこの五感をフル活動させて味をジャッジしているのです。普段あたり前にしていることなので、いまいちピンとこない人も多いかもしれません。五感を使って食事に向き合う経験を、子どもと一緒にしてみませんか?

 ごはん、鮭、目玉焼き、りんご、オレンジ。これらはよくある朝食メニューですが、五感を意識的に使って味わうといつもとは違う発見が必ずあります。まずは視覚。ごはんはつやつやしているか、鮭の身の部分はきれいなサーモンピンクで、皮は焼き色がついているか、りんごの皮はつるっとしていて真っ赤か、しっかりと目でとらえましょう。また、切ったりんごを咀嚼するとどんな音がするのかよく耳をすませて聞いたり、炊きたてのごはんを口に含むとどのような感触がするか神経を集中させたり、おもむろに鼻の近くにオレンジを近づけてみて香りをかいでみたり……。どうですか? 昨日と全く同じメニューであってもこうやって五感を意識的に使うことで、味わうことを知る経験ができたのではないでしょうか?

野菜や果物の皮は爽やかで鮮烈な香り。捨ててしまう前に鼻に近づけてみよう
咀嚼の音のほかに、食べものを包丁で切る音や焼く音など、調理の音にも耳をすませて
食べものを直接手で触ってみよう。舌で感じたものとは異なる感触に驚くはず
すぐ飲み込まずに舌でゆっくりと味わってみよう。よく噛むと味が変化するもの
「おいしい」と感じた味がどんな見た目、色をしているか知っておくことも大切

 また、環境も味をジャッジする重要な要素です。快適な温度の部屋で食べるのと、極寒の中で食べるのではたとえ同じ料理でも味の感じ方はまったく異なってくるはずです。一人より、愛する家族との食事のほうが、幸せな気持ちになりませんか? 食べものそのものだけが「おいしさ」や「まずさ」をもたらすわけではないのです。食べものと向き合うということは、自分が五感でどのような情報を受け取っているかを知るチャンスでもあります。

 今日は晴れているか、風は強いか、道端にはどんな花が咲いているか、身の回りのことに少し意識を向けるだけでも子どもの五感は鍛えられ、深く味わう経験を重ねられます。

感じたことを表現してみよう

 せっかく五感をフルに使って、食べものを受け止めたのに、味の感想が「おいしい」の一言では、せっかくの経験もさっと通り過ぎてしまいます。夕飯後など落ち着いた時間がとれるときに、家族で味の感想を話し合ってみましょう。

 今日のハンバーグは「ふんわりとしていた」「ソースに酸味があったよね」「とろりとしていたけど酸味は感じなかったなぁ」などと同じものを食べていても、感想はさまざま。感想を述べ合うことで自分との感覚の違いを認識し、異なる意見を互いに認め合うことができるようになります。「わがままで食べないだけ」と悩んでいた子どもの好き嫌いの理由も知ることができるようになり、日々の食事づくりの悩みも減るはずです。子どもは親から多大な影響を受けるので、「パパは、私が嫌いなピーマンをおいしいと感じている」と子どもが知れば、いつもは避けていたピーマンに箸をのばしてくれるかもしれません。

 教えるのではなく子どもの考えに耳をかたむけることが大切です。

【味覚について理解を深める本& イベント】

『子どもの味覚を育てる親子で学ぶ「ピュイゼ理論」』
著:ジャック・ピュイゼ
日本語監修:石井克枝、田尻泉
訳:鳥取絹子 (CCCメディアハウス)
味覚の権威として世界的に知られる著者の「ピュイゼ理論」を、一般家庭でも取り入れやすいよう、わかりやすく紹介。子どもが食べものと仲良くなれることを目指した1冊。
『味わう・五感の本』
著:クロード・デラフォッズ、ソフィー・ニフケ
訳:手塚千史 (岳陽舎)
舌は食べものの味をどのように感じるのか? なぜ好きな味、嫌いな味があるのか? など、味覚についての子どもの疑問を、色彩豊かなイラストで教えてくれる。「かぐ」「聴く」など他のシリーズもあり。

次の回は、フランス味覚の一週間をご紹介していきます。国をあげての「食育」について考えましょう。ぜひご期待ください。